GPIF目標は賃金上昇プラス1.7%-財政検証へ厚労省報告書

世界最大の年金基金、年金積立金管 理運用独立行政法人(GPIF)を所管する厚生労働省は政府が今春に も実施する5年に1度の公的年金制度の財政検証で、GPIFに課す運 用目標利回りは賃金上昇率を1.7%上回る水準とする報告書をまとめ た。報告書は年金部会(部会長:神野直彦東大名誉教授)に提出され、 財政検証の最終的な計算に向けた枠組み作りに焦点が移る。

年金財政の経済前提と積立金運用を議論する社会保障審議会の専門 委員会(委員長:吉野直行慶応大学教授)は10日午前の第17回会合で、 GPIFなどの公的年金は8通り示した経済前提の「全てのケースに対 応できる実質的な運用利回りとして1.7%」を目指すべきだと決めた。 今回は運用目標として名目利回りを明示しないが、経済前提が「ケース E」の場合には事実上4.2%。09年2月に決めた現在の「基本ケース」 を0.1ポイント上回る。

運用目標を算出する土台となる経済前提は、内閣府が1月公表した 「中長期の経済財政に関する試算」に準拠し、女性や高齢者の労働参加 や長期的な経済成長の原動力となる全要素生産性(TFP)の伸びに応 じて8通りの試算を出したが、特定の中心シナリオは示さなかった。賃 金上昇率を基準にする理由として、公的年金の被保険者に対する年金支 払額は賃金上昇率に左右されると説明した。

労働参加率が高まり、TFPが足元の0.5%から2023年度にバブル 期前後並みの1.8%まで上昇した後で1.0%と1983年からリーマンショッ ク直後の09年までの平均に落ち着くケースEでは物価上昇率を1.2%、 実質賃金上昇率を1.2-1.4%と設定。賃金上昇率に対する運用利回りの 上乗せ幅は1.2-2.2ポイントと各経済前提の中で最も高くなる。報告書 はGPIFなどが1.7ポイントを確保できるよう運用すれば、どの経済 前提が実現しても年金財政に貢献できると説明した。

「国内債中心」求めず

厚生年金と国民年金の積立金を運用するGPIFが先月28日公表し た今年度第3四半期(10-12月)の収益率は4.73%と3四半期ぶりの高 水準。運用資産額は128兆5790億円と、前身の年金資金運用基金として 積立金の自主運用を始めた01年度以降の最高となった。厚労省大臣官房 の森浩太郎参事官(資金運用担当)によると、スプレッド部分の運用実 績は01年度以降の平均で2%強に達している。

報告書は、デフレから脱却して適度なインフレ環境に移行しつつあ る中では「あらかじめ『国内債中心』を示す必要はなく、GPIFがフ ォワードルッキングの視点も踏まえ、運用目的・目標に則したポートフ ォリオを検討すべきだ」と明記。新たな運用対象に関しては「物価連動 国債や安定的な事業収入が見込まれるREIT(不動産投資信託)等を 始め、幅広に検討を行う」とした。

収益追求に伴うリスクの管理については「運用目標等からの下振れ リスクが一定程度超えないこと」を新たな指針に採用。具体的には、全 資産を国内債で運用した場合に名目賃金上昇率を下回るリスクを超えな いことをリスク許容度とした。資産配分の組み合わせによるリスクと期 待収益率の関係を示す「有効フロンティア」から算出した分散投資効果 は、経済前提8通りの全てで「おおむね0.4%前後」と推計した。

報告書は年金積立金の運用はあくまで「年金財政の安定化」が目的 だとしているが、今回示した事実上の名目利回り目標4.2%は主要国の 公的年金で最低。カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は 名目7.5%・実質4.75%、カナダ所得比例年金とノルウェー政府年金基 金は実質4%程度だ。運用実績でも、GPIFは昨年度までの9年間の 収益率が平均2.8%。カルパースの7.3%や6.8%のカナダ、ノルウェー の5.2%に見劣りする。

公的・準公的資金の運用・リスク管理の高度化を議論する政府の有 識者会議(座長:伊藤隆敏東大大学院教授)は昨年11月の報告書で、国 内債に偏った資産構成の見直しやデフレ脱却を前提とした金利リスク管 理、REITや不動産、インフラ、プライベートエクイティなど新たな リスク資産の検討などを提言。GPIFの資産構成比率を規定する基本 ポートフォリオの目標値は国内債が60%、国内株は12%、外債11%、外 株12%。昨年末の実績は国内債が55.22%と設立以降で最低となる一 方、国内株式は17.22%と07年12月末以来の高水準を記録した。

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