円全面高、ウクライナ情勢や中国景気不透明でリスク回避圧力

東京外国為替市場では、円が主要16 通貨に対して全面高。ウクライナ情勢の先行き不透明感や中国の景気懸 念を背景にリスク回避に伴う円買い圧力がかかっている。

午後3時50分現在のドル・円相場は1ドル=103円09銭付近。前週 末の海外市場では一時103円76銭と、1月23日以来の水準までドル高・ 円安が進んだ。その後はドルが伸び悩みとなり、103円台前半まで軟 化。週明け早朝には102円63銭まで下げた後、103円30銭まで値を戻した が、午後の取引にかけて円が強含む展開となった。

外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、米国の雇用が緩 やかに拡大していることが確認され、金融緩和の縮小が継続される見通 しで、「方向的には緩やかなドル高」とした上で、日本の経常収支の赤 字拡大が海外市場で円売り材料視される可能性があると指摘。ただ、ウ クライナ情勢の悪化リスクがくすぶっているほか、中国経済がかなり息 苦しくなる中で、依然として「株安・円高」の連想も働きやすいと言 い、「まだ円高の可能性がなくなったわけではない」としている。

この日のアジアの株式相場は、上海総合指数が大幅安となるなど、 ほぼ全面安で、MSCI新興市場指数は下落幅を拡大。日本株も日経平 均株価が前週末終値比で100円を超える下げとなった。

リスク回避圧力

中国で前週末に発表された経済指標では、2月の輸出が前年同月 比18.1%減と、市場予想の中央値7.5%増に反して大幅な減少となっ た。また、同月のインフレ率は13カ月ぶりの低水準となり、市場予想を 上回る鈍化となった。

中国人民銀行(中央銀行)は2012年7月以来最も大幅となる人民元 の中心レート引き下げを実施し、10日の元相場は下落している。外為オ ンラインの佐藤氏は、中国当局が今までのように一方的に緩やかな元高 を容認できなくなっている可能性があるとし、元の中心レート引き下げ は「景気をにらんだ動き」と捉えられるとしている。

また、ウクライナ情勢をめぐる不透明感も根強い。クリミア自治共 和国がロシアへの帰属を問う住民投票の準備を進める中、米国の推計で は同半島にロシア軍約2万人が展開しているという。米国のオバマ大統 領は6日、同盟国と共にロシアに対しウクライナから手を引くよう圧力 を加え続けると表明し、ロシア政府がこれに応じない場合はさらなる制 裁の可能性があると述べた。

そうした中、ロシア国営会社ガスプロムは、ウクライナがこれまで に供給を受けた天然ガスの支払いをしない場合、ロシアが2週間余りに わたってガス供給を停止した「2009年初めの状況再発」という危険を冒 すことになると警告している。

ドル先高観・円先安観

米労働省が7日に発表した2月の雇用統計によると、非農業部門の 雇用者数は前月比17万5000人増と、ブルームバーグ・ニュースがまとめ たエコノミスト予想の中央値14万9000人増を上回った。また、1月分 は12万9000人増と、速報値の11万3000人増から上方修正された。一方、 家計調査に基づく失業率は6.7%と、前月の6.6%から上昇した。

今回の雇用統計で厳冬でも成長の妨げにはならないとの兆候が示さ れたと受け止められ、7日の米国債相場は続落。10年債の利回りは一 時2.82%と、1月23日以来の高水準を付けた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラ テジストは、寒波の影響を受けた割に米国の非農業部門の雇用者が市場 を上回る伸びとなり、来週に連邦公開市場委員会(FOMC)を控え て、「粛々と100億ドルペースの資産購入圧縮が続く」との見方が強ま ったと説明。その上で、「トレンドとしては、米景気がしっかりしてい れば、日米の金融政策のベクトルの違いを背景としたドルの先高観、円 の先安観は比較的強い」と指摘する。

一方、日本の財務省がこの日に発表した1月の国際収支によると、 海外とのモノやサービスの取引を示す経常収支は1兆5890億円の赤字 と、比較可能な1985年以降で過去最大の赤字額を更新した。ブルームバ ーグ・ニュースがまとめた市場予想では、1兆4118億円の赤字(中央 値)が見込まれていた。

経常収支の赤字拡大を受けて、植野氏は、「基本的な円安見通しは 揺らいでいない」としている。

また、内閣府が発表した昨年10-12月期の国内総生産(GDP)は 物価変動の影響を除いた実質で、前期比年率0.7%増と、速報値の1.0% 増から下方修正され、市場予想の中央値0.9%増も下回った。

そうした中、日本銀行はこの日から2日間の日程で金融政策決定会 合を開催。ブルームバーグ・ニュースがエコノミスト34人を対象に行っ た調査によると、今回の会合では政策の現状維持が決定されるとの見方 が大勢となっている。ただ、前回の会合で貸し出し支援が2倍に拡充さ れたことを受けて、追加緩和に対する期待が再び高まっており、そのタ イミングも前倒しされつつある。

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