【コラム】ゾンビが徘徊する「ベアー・スターンズ期」の中国

ゾンビが登場する米国のホラードラ マ「ウォーキング・デッド」は中国で大ヒットしたが、中国には自前の ゾンビがちゃんといる。ゾンビ企業だ。

7日にはゾンビ1号、上海超日太陽能科技が闇の中から這い出して きた。太陽光発電関連メーカーの同社は7日に予定していた社債の利払 いを全額は履行できなかった。これは中国本土で発行された債券で最初 のデフォルト(債務不履行)になる。ホラードラマのファンでなくて も、ゾンビが1匹いればその陰にゾンビの大集団が潜んでいることを知 っている。日本が良い例だ。

習近平国家主席がゾンビ軍団に立ち向かう戦いぶりを見れば、中国 の金融システムを国際化させるという共産党の約束の本気度が分かるだ ろう。習主席に大物のゾンビを破綻させる政治的意思があるかどうか、 私はやや疑問視している。

ゾンビの定義は確立されていないが、多くのチャイナウォッチャー は自己資本の2倍以上の債務を目安としている。これに当てはまるゾン ビは世界金融危機以降に急増した。ブルームバーグのデータによれば、 金融業以外の公開企業で債務が自己資本の200%を超えている会社の数 は、07年に比べ57%増え256社となっている。

中国政府が上海超日のデフォルトを阻止しなかったことは良いニュ ースだ。債券保有者と金利環境を一時的に不安定化させはするが、デフ ォルトは市場が成熟し効率的になるための必修科目だ。特に中国では借 り入れを監視し、投資家が信用リスクを適切に判断できるようにするた めに、こういう出来事が必要だった。

ゾンビ退治

現時点では中国債券市場の実態は誰にも分からない。透明性の欠如 と大き過ぎるシャドーバンク業界、共産党と国有企業の間のあいまいな 境界が理由だ。米欧では公的機関が企業を支えることはモラルハザード (倫理の欠如)を生むとして眉をひそめられる。しかし中国の金融シス テムは長い間、危険な貸し借りのつけを後で払う必要のない世界だっ た。

上海超日が7日に支払うはずだった利息8980万元(約15億円)の支 払い不能は重大な象徴なのかもしれない。それとも、ただの例外なのだ ろうか。前者であることを望みたい。建材や石炭、金属、鉱業、鉄鋼、 そしてもちろん太陽光発電など、水膨れの業界で政府が大企業を破綻さ せれば、上海超日が前例であったことが分かるのだが。中国の金融業界 も今後数年の間に大掃除が必要だろう。

かつて中国人民銀行(中央銀行)のアドバイザーを務め、今は国務 院に助言している夏斌氏は2月10日、金融政策の正常化に伴い一部の 「ゾンビ」企業は破綻するだろうと述べた。しかしそれには、習主席と 李克強首相がこれまでに示してきた以上に、痛みを受け入れる覚悟が必 要だ。

中国版「ベアー・スターンズ・モーメント」

バンク・オブ・アメリカ(BOA)の戦略チームは上海超日のデフ ォルトを中国版「ベアー・スターンズ・モーメント」と表現した。米投 資銀行のベアー・スターンズが2008年に事実上破綻した後のように、投 資家がリスク評価の洗い直しを始める瞬間という意味だ。最初にウォー ル街を、次いで世界の金融システムを駆けめぐった連鎖反応が再現され るかもしれない。米国の場合はリーマン・ブラザーズ・ホールディング スが破綻し信用市場が凍りつく段階に至るまでに、数カ月の時間があっ た。中国は今、その時期に入りつつあるとも考えられる。

ただ、中国政府がそんなリスクを冒すとはどうも私には考えられな い。習主席と李首相が2014年の7.5%成長を約束している事実が、既に それを怪しくする。今後数週か数カ月の間にもう少し大規模なデフォル トがあるかもしれないが、米国のデトロイト市並みの大型破産を中国政 府が容認するまでは、中国経済でゾンビたちがのさばる時代が続く気が する。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Zombies Swarm Amid China’s ’Bear Stearns Moment’: William Pesek(抜粋)

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