【日本株週間展望】続伸へ、内外政策期待-ウクライナ要警戒

3月2週(10-14日)の日本株は続 伸しそうだ。日本銀行の金融政策決定会合が開かれる週で、政策期待が 高まりやすい。今回の会合は無風とみられるが、2月の貸出支援強化策 や総裁会見を経て、日銀の市場対話力への信頼は回復した。一方、緊張 緩和へ関係国の努力が続くウクライナ情勢は予断を許さない。

BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト、丸山俊氏は米国 や中国の経済統計が1月の最悪期から脱する局面にあり、国内も日本銀 行、公的年金改革など「3月期末、4月にかけ政策期待が高まりやすい 状況になってきた」と指摘。日経平均株価で1万4000円台の堅さを確認 し、直近で動きを止めている海外投資家も、「押し目を待っていたが、 なかなか押さない状況が続いている」と言う。

第1週(3-7日)の日経平均株価は、前週比2.9%高の1万5274 円7銭と反発。ロシア議会がプーチン大統領の要請に応じ、ウクライナ への軍派遣を承認、米国や欧州各国がロシアを非難し、地政学リスクの 高まりから週初に一時400円近く急落した。その後プーチン大統領がウ クライナへの即派兵を否定。米露外相の直接会談、欧州連合(EU)に よるウクライナへの緊急金融支援などで緊張緩和が期待された。

また、通貨人民元の急落や環境汚染問題が深刻化する中国では、日 本の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開幕し、2014年の経済 成長率目標を7.5%程度で維持した。クレディ・スイス香港のチーフエ コノミスト、陶冬氏は7.5%成長の達成には「大規模な財政出動が必要 で、質的な目標に置き換える方が賢明。政府は信頼感を高める必要があ る」と見ている。人民元は2月28日に一時1ドル=6.18元に急落した 後、直近は6.10元まで反発した。

追加策時期の市場予想も前倒し

日銀は10、11日と金融政策決定会合を開き、11日には黒田東彦総裁 が会見する。黒田総裁は4日の参院予算委員会での答弁で、米国経済に ついて極めて順調に回復していると分析。国際経済の不透明感は強まっ ているが、今月の会合で次の一手に動く可能性は低そうだ。ブルームバ ーグ・ニュースがエコノミスト34人を対象に行った調査では、全員が今 月の会合での政策現状維持を予想する。

ただ、4月の消費税増税をにらみ追加緩和策への期待感は強く、今 回の調査でも追加緩和の時期として4-6月、7-9月がそれぞれ12人 ずつと最多層となった。2月会合前には7-9月が最も多かったため、 市場の読みが前倒しされている。貸出支援策を従来比2倍に拡充した2 月18日、黒田総裁は会見で「日銀としてのメッセージ」を強調。同日の 日経平均が450円高と急騰したのは記憶に新しい。

BNP証の丸山氏も、今回は政策変更なしとみるが、「次回以降は 単純に追加策だけでなく、政策のフレームワーク自体が見直される可能 性がある。現在は14年末までしか想定していない」と話す。日銀が昨年 4月に現在の量的・質的緩和策を打ち出した際、日本経済に供給する通 貨総量のマネタリーベースを14年末に約270兆円と、12年末を基準に2 年で2倍にする目標を掲げた。

日銀会合に続き、米国では18、19日に連邦公開市場委員会 (FOMC)を控える。連邦準備制度理事会(FRB)は昨年12月、こ とし1月と毎月の資産購入額を100億ドルずつ縮小中。イエレン議長は 議会証言で縮小継続の可能性を示唆しており、日米金融政策スタンスの 違いが確認される点は為替の円安要因になりそうだ。地政学リスクの高 まりで、3日には1ドル=101円20銭台まで円高が進んだドル・円相場 は、6日の取引では1月下旬以来の103円台と円安方向に振れた。

グルジアの記憶

「ウクライナ情勢は08年グルジア情勢とそっくり」--。こう指摘 するのは、大和証券投資戦略部の木野内栄治チーフテクニカルストラテ ジストだ。北京五輪開催中の08年8月、黒海沿岸のグルジア共和国の南 オセチアで、同国軍と独立を求める自治州軍が衝突、その後ロシア軍が 介入した。夏季、冬季の違いがあるとはいえ、五輪開催年、黒海沿岸の 地政学リスク、親欧と親ロの攻防という点で共通項は多い。

08年当時はリーマン・ショックの最中で、旧ソ連内紛争が市場に与 える影響度を探るのは難しいと木野内氏。ただ、ロシア株の米ダウ工業 株30種平均に対する相対パフォーマンスを見ると、軍事演習が活発化し た6月を境に強烈に下落、軍事衝突後の8月まで2カ月強下げたため、 同氏は「今回に当てはめると、5月ごろまではロシアからの資金逃避の 動きが懸念されよう」としている。

一方、丸紅経済研究所のシニアエコノミスト、榎本裕洋氏は「今回 の事態を08年のロシア・グルジア戦争になぞらえる分析も多いが、ロシ ア人のウクライナ人に対する親近感は、グルジア人に対するよりもはる かに強い」と指摘。ウクライナの対外債務返済の直近ピーク、大統領選 挙を見据え、「5月から6月にかけて再びウクライナ政府のデフォルト (債務不履行)懸念が高まる可能性」に言及する。同経研によれば、ロ シアとウクライナ向け融資の比率が大きいのはオーストリア、ハンガリ ーの金融機関で、注視する必要があるとした。

米国のオバマ大統領は6日、ロシアとウクライナの一部当局者を念 頭に査証(ビザ)発給制限、資産凍結など制裁を発動。米ロ対立の火種 は消えず、日本株も明確な投資対象を絞りにくい状況だ。こうした中、 期末に向け好配当銘柄は堅調な動きが見込まれる。ゴールドマン・サッ クス証券によると、東証1部上場企業の配当総額と自社株取得総額を合 わせた株主還元額は13年に9.4兆円と、前年比17%増えた。

ストラテジストのキャシー・松井氏は、「年初以降に株主還元を発 表した企業でも、株価は好調なパフォーマンスを記録している」と分 析。ことしに入り増配を発表、業種リターンを上回る企業にはオービッ ク、セイコーエプソン、ダイセルなどがある。同証が東証1部で今・来 期純利益が増益予想、株主還元余地の大きい銘柄をスクリーニングした 結果、上位にキーエンス、大和工業、鹿児島銀行、日産車体、富士フイ ルムホールディングスなどが並んだ。

--取材協力:日高正裕  Editors: 浅井真樹子, 院去信太郎

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