【コラム】3・1後の中国、9・11後の米と類似-Aミンター

鉄道駅の切符売り場で長蛇の列に並 んだことのない中国人はまれだ。待合室に行けばあまりの混雑で空いた 椅子もなく、座れる場所といえば自分の荷物の上だけだ。今年の春節 (旧正月)も数億人が鉄道で移動した。学生であろうと出稼ぎ労働者で あろうとビジネスマンであろうと誰もが同じような経験をしており、至 る所で見られる風景だ。

中国では鉄道への妨害は生活様式を乱されることであり、モバイル 環境が一段と広がる中で成長した経済の破壊でもある。3月1日の夜に 雲南省の昆明駅で起きた無差別殺傷事件のような攻撃は、米国人がマク ドナルドや映画館、空港を襲撃された後に感じるような不安を多くの中 国人に与える。

中国国営の新華社通信は2日、テロリスト集団が刃物を振りかざ し29人を殺害し、負傷者が140人を超えた昆明の事件を「中国の9・11 だ」とする英文の論説記事を掲載。国営メディアが実行犯は少数民族で あるイスラム系のウイグル族が多く住む新疆ウイグル自治区出身者だと 報じる一方で、新華社は同自治区における分離主義者の心情の根源を論 じることにあまり興味はない。

一般の中国国民にとって「3・1」は、政治よりも心理的な面 で2001年9月11日の米同時多発テロと類似点がある。もちろん 「9・11」ほどの人的被害はないが、多くの意味で今の中国の状況は 「9・11」後の米国に広がった状況と似ていなくもない。多くの米国人 は「9・11」実行犯の動機を探る試みに気分を害したが、中国人もウイ グル族の憤りを取材しようとする海外メディアを快く思っていない。実 行犯の動機に正当性を見いだしたくないという心情と、いかなるテロも 理由が何であれ悪として裁かれなければならないという国民のコンセン サスが背景だ。

下品な言葉

当局に批判的なことで知られる中国で有名な社会批評家、李承鵬氏 はミニブログ「新浪微博」で、テロにそれほど厳しい姿勢を示さなかっ た別のユーザーのコメントに対し、「どんな理由や民族であれ鉄道駅の ような人混みを選び、何の罪もない人々を標的にすることは悪であり、 地獄に落ちなければならない」との言葉を返した。

こうした視点に伴うのは政府に容赦ない対応を望む気持ちだ。習近 平国家主席はテロリストを徹底して罰することを誓う声明を発表。事件 にショックを受けていた中国国民はこの声明を歓迎はしたが、それでも 十分ではなかったようだ。中国のネット社会に広がったのは、ロシアの プーチン大統領が分離・独立を目指すチェチェンのテロリストをめぐり 言い放った「どこまでも追い詰める。空港にいれば空港で追い詰める。 トイレで捕まえたら便槽にぶち込んでやる」という下品な言葉だ。

新浪微博の中で「プーチン」と「トイレ」という言葉を検索する と、34万4000件を超えるヒットがあり、その大半はテロリズムに絡んで いる。そこに感じられるのは、今回のテロに対する怒りがウイグル族へ の暴力に転じる可能性があるという不気味な感触だ。多数派の漢民族と ウイグル族との間の緊張は長く続いており、一段と流血の事態を伴うも のになりつつある。

こうしたことはテロリストの動機について語るのと同様、中国の指 導者にとって歓迎できることではない。共産党機関紙、人民日報は4日 朝、新浪微博で注意深く言葉を選びツイートした。「テロリストへの怒 りが、ある少数民族への敵意にゆがんでいくのを許してはならない。暴 力に人種差別で報いてはならない」。少なくとも民族対立を和らげるの には寄与するかもしれない良いアドバイスだ。(アダム・ミンター)

(上海を拠点とするミンター氏はブルームバーグ・ビューに定期的 に寄稿しており、コラムの内容は同氏自身の見解です。同氏のツイッタ ーは@AdamMinter

ニュースと情報:

原題:Chinese React to Their ’9/11’ Much as Americans Did: Adam Minter(抜粋)

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