【クレジット市場】ANA債が最低利率も需要4倍超-羽田国際線増

ANAホールディングスの新発10年 債は同年限として、前回債の半分以下かつ同社最低の金利にもかかわら ず、投資家需要は当初発行計画の4倍以上に上った。ライバル日本航空 を大幅に上回る枠を獲得した羽田空港の新規国際線発着枠や、債券市場 の需要の強さが背景だ。

ANAが2月28日に条件決定した300億円の10年債(表面利 率1.22%)は、上乗せ金利(スプレッド)が円スワップレートに対し て38ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)。同社広報担当の内山 悦也氏によると当初発行予定額は「100億円程度」だったが、投資家の 「需要が強く金利条件なども良い」ため増額した。全日本空輸としての 発行分も含めて同社10年債として過去最低の表面利率だったが、実際の 需要は400億円以上だったという。前回の10年債はリーマンショック前 の08年5月に起債しており、表面利率は2.45%でスプレッドは45bp。

日本の航空業界には、東京の2020年夏季五輪の開催都市決定や、訪 日外国人数を30年までに昨年実績の約3倍にあたる3000万人まで増やす 政府目標などの追い風が吹いている。ANAはこれらの旅客需要を日航 の2倍以上の配分を受けた羽田空港の新規国際線枠などで受け止める。 ANAは2月14日、16年度までに営業利益で13年度比2倍超の1300億円 などを目標とした中期経営計画を発表した。

フコクしんらい生命の林宏明取締役・財務部長は「航空セクターは 長期的には不安定な要素を包含している業界のひとつ」という。ただ 「2020年の東京五輪が決定していることで、開催時期を挟んでかなりの 需要増が見込めることから、安心して長期債を買える」と述べた。

CDSは下落

同社のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は年明け以降 新興国経済の不安などを背景に上昇し、2月4日には7カ月ぶりの高値 となる180.6bpを付けた。中計発表後は市場全体のリスク選好に伴っ て下落、社債の条件決定日の28日には155bpとなった。発行登録追補 書類によると、調達資金の使途は今月10日に償還する100億円と10月27 日の100億円、15年4月23日の200億円の一部に充当する。

ANAにとっては政府自民党も支援材料だ。安倍晋三首相は4日の 予算委員会で日本航空について、公的支援で競争環境がゆがめられない よう適切に監督すると述べた。日航は10年に会社更生法の適用を申請、 民主党政権当時の国の公的支援を経て2年後に再上場。ANAホールデ ィングスの伊東信一郎社長は「高い利益率の日航の財務体質はわれわれ の自助努力で追い付けるレベルではない」と昨年9月のインタビューで 述べている。

メリルリンチ日本証券の上田祐介リサーチアナリストは、ANAの キャッシュフローが際立って良好で、さらに自民党との距離が近いこと から、ANA債の需要は高いという。また羽田空港での国際線増便に注 力していることが利益の底上げにつながっていると述べた。

日航は「不平等」

国土交通省は昨年、再生過程での日航への支援を踏まえ3月末から の新規羽田国際線発着枠をANAに11枠、日航に5枠と配分した。日航 は「不平等」と強く反発している。内訳は、両社1枠ずつとなったの が、英国、フランス、中国、シンガポール、タイへの発着便。一方、ド イツへの2枠、ベトナム、インドネシア、フィリピン、カナダへの1枠 はANAのみへの配分となった。

ANAの既発債で最も残存期間が長いのは、今回の起債分を除く と08年5月起債で18年6月償還の100億円(表面利率2.45%)。日本証 券業協会の売買参考統計値によると、09年4月にスプレッドは315bp (対円スワップレート)まで上昇したが、2月28日には24bpだった。

ANAは2月14日、16年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画 を発表した。羽田と成田両空港の国際線発着枠拡大に伴い国際旅客事業 を強化し、首都圏空港からの国際線を経営の中心に据えた。16年度に は、同社が創業以来初となる国際線による生産量(座キロベース)で国 内線を上回ることを目指す。

コスト削減

業績については連結営業利益1300億円、営業利益率7.0%を目標と した。また、コスト削減については、15-16年度の2年間で新たに500 億円を実施し、11年度から6年間で累計1360億円を目指すとした。

今回のANA債は市場環境の恩恵も受けた。大和証券の大橋俊安チ ーフクレジットアナリストは、国債の利回りが下落するなかで投資適格 の社債への需要は高いという。ANAの格付けは、格付投資情報センタ ーがBBB+、日本格付研究所がA-で、見通しはともに安定的。

ANAの内山氏は「全体のリスク管理をしっかりしながらも、国際 線を拡大・拡張し、特にアジアの成長を取り込んむことで世界の航空業 界のリーディングカンパニーに成長してゆきたい」と述べた。

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