円全面高、ウクライナ緊迫化でリスク回避-対ドルは101円前半

東京外国為替市場では、円が主要16 通貨に対して全面高の展開。ロシアの軍事介入の可能性でウクライナ情 勢が緊迫化する中、リスク回避的な円買いが優勢となった。

午後3時53分現在のドル・円相場は1ドル=101円38銭付近。円は 早朝に付けた101円66銭を下値に、一時は101円26銭と2月6日以来の高 値を付けた。午後の取引では、円買いの動きがやや鈍化したものの、米 国で主要経済指標の発表を控え、円の下値は101円半ばにとどまった。

みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、欧州連合(E U)が平和的解決を目指す中で、ロシアが軍を動かし始めてしまい、米 当局のキエフ入りでウクライナの暫定政権と米国が何らかの条約を結ん だ場合は、緊張が高まる可能性があると指摘。中国人民元相場の不安定 な動きや北朝鮮のミサイル発射などのニュースも加わり、「リスクオフ で円買い」という状況になっていると言う。

ロシアのプーチン大統領はロシア系住民を保護する必要があるとし て、議会にウクライナへの軍事介入を要請し、上院が1日にこれを承認 した。ウクライナは予備役の招集を開始するとともに、EUなどにクリ ミア自治共和国への監視団派遣を求めた。EUは3日に緊急の外相会合 を開く。また、米国のケリー国務長官は同日にウクライナに向けて出発 する。

ウエストパック銀行の市場ストラテジスト、イマー・スパイザー氏 は、「ウクライナの話が長引いて、リスク回避の動きが続いた場合、ド ル・円相場は100円台後半の水準が鍵になる」とみる。その上で、同水 準を抜けると、ドルは「かなり大幅な下げ」が見込まれ、100円割れも 視野に入るとしている。

米株式相場は前週末にプラス圏を維持して取引を終えたものの、こ の日のアジア時間には主要3株価指数の先物がそろって下落。また、米 10年債の利回りは2.6%台を割り込んで2月4日以来の低水準を付ける 場面も見られた。

外部環境の不透明感強まる

6月には、ロシアのソチで主要8カ国(G8)首脳会議(サミット )が開催される予定だったが、米国と英国、カナダは同会議に向けた準 備を中止している。ケリー国務長官は2日、NBC放送の番組「ミート ・ザ・プレス」で米国は制裁を検討していると言明。ロシアが「後戻り 」しなければ、「最終的には資産凍結や査証(ビザ)発給停止、そして 貿易の中断もあり得る」と語り、同国がG8から排除される可能性もあ るとした。主要7カ国(G7)の首脳はロシアを非難する共同声明を発 表している。

一方、中国の人民元相場は2月の下げが月間ベースで過去最大とな った。中国人民銀行(中央銀行)は3日、元の中心レートを2月14日以 来の大きさとなる0.04%引き上げている。みずほ証の鈴木氏は、中国当 局の通貨政策に関して「見えない不気味さ」があるとし、リスク回避の 動きにつながっていると説明している。

そうした中、5日には全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が 開幕し、中国の成長率目標が発表される。ブルームバーグ・ニュースの エコノミスト調査によると、昨年と同じ7.5%の目標が掲げられると予 想したのは回答者の63%。目標を7%もしくは、7-7.5%といったレ ンジに変更されると予想したのは33%だった。

ウエストパック銀のスパイザー氏は、「中国発の悪材料が増えれば 世界的なリスク回避の動きが一段と強まる」と指摘する。

また、韓国国防省によると、北朝鮮が3日の現地時間午前6時すぎ に射程距離が最低500キロの短距離ミサイル2発を発射するなど、アジ アの地政学的リスクも警戒されている。

米欧経済指標

2月28日に発表された米国の経済指標は昨年10-12月の実質国内総 生産(GDP)改定値が速報値から下方修正され、1月の中古住宅販売 成約指数は市場の予想を下回る伸びにとどまった。一方、2月の消費者 マインド指数は前月から改善。2月のシカゴ地区製造業景況指数(季節 調整済み)も前月から上昇し、市場の予想を上回った。

上田ハーロー外貨保証金事業部の山内俊哉氏は、米経済について、 「住宅指標の悪化などは懸念材料だが、ミシガン大消費者センチメント 、シカゴ製造業景況指数などを見ても景況感は悪くないようで、悪天候 が市場心理を悪化させるまでには至ってはいないようだ」と分析。この 日の米国時間には米供給管理協会(ISM)が2月の製造業景気指数を 発表するが、「先月分は前回値から大きく下振れして市場を驚かせた」 とし、50を割り込む水準まで下落した場合にはドル売りが先行すると予 想する。

一方、ユーロ圏では欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が 発表した2月の消費者物価指数(速報値)が前年同月比0.8%上昇と、 前2カ月の水準と並び、ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミ ス予想の中央値0.7%を上回った。同時に発表された1月の失業率は12 %と前月から横ばい。昨年9月に最後に記録された過去最悪の12.1%か らは、わずかな改善にとどまった。

欧州中央銀行(ECB)は6日にフランクフルトで定例政策委員会 を開く。ブルームバーグ・ニュースがエコノミストを対象に実施した調 査によると、政策金利の据え置きが見込まれており、利下げ予想は少数 派にとどまっている。

前週末の海外市場では、ユーロが急騰。対ドルでは一時1ユーロ=

1.3825ドルと、昨年12月27日以来の高値を付けた。また、対円では一時 1ユーロ=141円12銭と、21日以来の水準まで上昇した。

山内氏は、ユーロ圏のインフレ指数を受けて追加緩和期待が後退し たことがユーロ上昇の背景にあったと説明。ただ、ウクライナ情勢が地 政学的リスクになるとして、ユーロ売りにつながりやすいとみる。

東京市場のユーロは対ドルで1.37ドル台後半、対円では139円台後 半に水準を切り下げて推移している。

--取材協力:Kevin Buckland. Editors: 青木 勝, 崎浜秀磨

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