シティCEOのコルバット氏、退屈さはむしろ「美徳」か

シティグループのマイケル・コルバ ット最高経営責任者(CEO)が現在使用しているニューヨーク本社重 役室の内装は、2012年10月にビクラム・パンディット前CEOが明け渡 した時のままだ。壁の肖像画はシティグループの前身、シティバンク・ オブ・ニューヨークの1910年当時のフランク・バンダーリップ社長のも ので、コルバットCEO(53)と同じような縁なし眼鏡を掛けている。

1メートル90センチの長身のコルバットCEOは肘掛け椅子で足を 組みながら、「一言でいえば、われわれはシティを銀行という原点に立 ち返らせたい」と述べ、「本来の銀行業務は単調で妙味がないと批判さ れたとしても構わない」と明言した。

ソロモン・ブラザーズで債券営業を行っていたコルバット氏は2回 の企業統合を経て出世の階段を着実に上り、1年4カ月前に米銀3位の シティのCEOに就任。一貫してシティの効率性向上を唱え、戦略の抜 本的見直しについては消極的姿勢を示してきたとブルームバーグ・マー ケッツ誌4月号が報じている。

同CEOは1万1000人の削減を発表したほか、リターンが振るわな い市場の事業を縮小した。

しかし一部投資家はコルバットCEOの現在の姿勢に物足りなさを 感じており、08年の金融危機で破綻の危機にひんしながらも復活を果た した同行の将来像を打ち出すため一段と努力することを期待してい る。450億ドル(約4兆6100億円)の公的支援を受けた後で、単調な業 務をこなすことは一時しのぎにはなるかもしれないが、いまこそリスク を抑制しつつ新たな収入源を開拓する大胆さが同CEOには必要だと投 資家は指摘する。

ビジョン

ドナルドソン・キャピタル・マネジメントで8億ドル相当の資産運 用に携わるグレッグ・ドナルドソン会長は「ビジョンを描くことが彼の 仕事だ」と述べ、「状況が変わってきていると私に感じさせることはま だ行われていない。小さな改革ではなく大変革が必要だ」と強調した。 同会長はシティの戦略が不透明だとしてシティ普通株を保有していな い。

CLSAのアナリスト、マイク・マヨ氏もこの見解に同意する。 「われわれはビクラム・パンディット氏のバージョン2.0やチャック・ プリンス氏のバージョン3.0、サンディ・ワイル氏のバージョン4.0を求 めているわけではない」と、コルバット氏の3代前までのCEOに言及 した上で、「コルバットCEOが同行に十分大きな足跡を残すことを望 んでいる」と述べた。マヨ氏はコルバット氏がCEOに指名されると、 それまで5年間「売り」としていたシティの投資判断を引き上げた。

アメフト

コルバット氏の経歴を見れば、同氏がどうして投資家やアナリスト に物足りないと思われるか不思議に思われる。名門ハーバード大出身 で、アメフトのプロ選手になれるチャンスを捨ててウォール街の債券ト レーダーに就職。その後、世界有数の大手銀行のトップに上り詰めた男 がビジョンを持たないとか、足跡を残せないことがあるだろうか。

ただコルバット氏が現在直面している難題を解決する上で、同氏の 控えめな態度がマイナスに働く可能性がある。規制強化や成長鈍化を背 景に銀行は既存事業からの撤退と新たなモデルの導入を迫られており、 このような時にはリスクテークを抑制し、新たな増収の道筋を探る必要 がある。

ソロモン時代のコルバット氏の同僚で現在はストーンキャッスル・ パートナーズのCEOを務めるジョシュア・シーゲル氏は「コスト削減 ではシティを偉大な企業に復活させることはできない」とし、「ある時 点で何をなすべきかを表明しなければならない」と指摘した。

コルバット氏は金融危機以降の6年間にシティが成し遂げたことに 満足していると述べた上で、言葉を慎重に選びながら、「当行のビジネ スモデルは適切だ。根本的な変更が必要との見方は正しいとは思わな い。現在の状態に達することを非常に意識したプロセスだった」と語っ た。

債券セールス

コルバット氏の昇進も意識的なプロセスかもしれない。1983年に大 学を卒業した後、ソロモンの債券セールスチームに所属。アトランタの オフィスで州年金基金や企業に債券を売り込んだ。その後、ソロモンが ワイル氏のトラベラーズ・グループに買収され、トラベラーズがシティ コープと統合すると、コルバット氏は当時の世界最大の銀行の行員とな った。

コルバット氏の今後の功績は損失を回避できるかどうかに左右され そうだ。ソロモンの伝統を引き継ぎ、シティは現在も債券取引が大きな 柱となっている。債券収入は高い水準を維持しており、09年の215億ド ルと07年の115億ドルを上下限とするレンジ内を推移。昨年は7%減 の131億ドルで、総収入の約17%を占めた。

報酬1400万ドル

シティの昨年の総収入は前年比10%増の764億ドル。費用は4%減 の480億ドルだった。コルバット氏は昨年、財務目標の達成に向け前進 し、1400万ドル強の報酬を受け取った。13年の調整後の有形普通株主資 本利益率は8.4%と、前年の7.9%から上昇。コルバット氏は同率を15年 までに10%以上に引き上げることを目指している。

一方、少なくとも一部の投資家やアナリストは新たな多額のトレー ディング損失を避けられるならば利益の面で譲歩することに前向きだ。 より大胆な措置を望んでいるCLSAのマヨ氏でさえ、安全なアプロー チには賢明な点があると認め、「シティがさらなる安定性の確保のため に、追加的な1-2%の成長を犠牲にした場合、過去20年間のいかなる 行動よりも持続可能な利益を株主にもたらすだろう」と述べた。

米SAMアドバイザーズの上級運用担当者兼社長、ウィリアム・ス ミス氏はコルバット氏は最適任者だと指摘。「彼は恐らくシティグルー プのこれまでの歩みで、初めて本物のバンカーと言える人物だ。退屈か もしれないが、予測可能な筋書きとなろう」と信頼を寄せた。

原題:Corbat Sees No Drawback in Boring Citi Up 34% as Vision Queried(抜粋)

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