GPIF:国内債比率が昨年末に最低、インフラ投資開始へ

世界最大の年金基金である年金積立 金管理運用独立行政法人(GPIF)は、運用資産に占める国内債券の 割合が昨年末に55.22%と2006年4月の設立以降で最低となった。国内 株式は17.22%と07年12月末以来の水準に上昇した。電力発送電、ガス パイプライン、鉄道など、内外のインフラへの投資を開始することも明 らかにした。

厚生年金と国民年金の積立金を運用するGPIFが28日午後公表し た今年度第3四半期(10-12月)の運用状況によると、内外株高や円安 を背景に収益率は4.73%、収益額は5兆7704億円と、ともに3四半期ぶ りの高水準。運用資産額は128兆5790億円と、前身の年金資金運用基金 として積立金の自主運用を始めた01年度以降の最高を前期に続いて更新 した。

国内債の比率は過去最高だった08年12月末の75.90%から20ポイン ト以上も低下した。昨年末の資産構成は国内債が71兆33億円 で55.22%、国内株は22兆1471億円で17.22%、外国債券は13兆6355億円 で10.60%、外国株式は19兆5219億円で15.18%。9月末は国内 債58.03%、国内株16.29%、外債10.13%、外株13.49%だった。

安倍晋三内閣と日本銀行の黒田東彦総裁が2%の物価目標達成を目 指す中、GPIFは国内債比率の引き下げを求める圧力に直面してい る。昨年6月には資産構成比率を規定する「基本ポートフォリオ」を06 年度の同法人設立以来、初めて変更。国内債を引き下げ、他の3資産を 増やした。目標からの%乖離(かいり)許容幅は据え置いた。現在の目 標値は国内債が60%、国内株は12%、外債11%、外株12%。

5年程度で27億ドル

GPIFは日本政策投資銀行とカナダのオンタリオ州公務員年金基 金(OMERS)などと提携し、投資信託を通じて5年程度で最大約27 億ドル(約2750億円)のインフラ投資を行う。政投銀は同期間に1億ド ルを拠出するという。投信の運用者であるニッセイアセットマネジメン トが、インフラ事業の評価を世界的に展開しているマーサー・インベス トメンツの助言を得て、OMERSが発掘するインフラ投資案件への参 加可否を判断する。

インフラ投資は長期にわたり安定した利用料収入が得られるととも に、利回りが一般の債券より高く、株式市場などの価格変動の影響を受 けにくいとGPIFは指摘。債券や株式との分散投資により、年金財政 の安定に寄与する効果が期待できるとしている。清水時彦調査室長によ ると、基本ポートフォリオでは外債に区分され、外債の平均的な期待収 益率と流動性リスクプレミアムを合わせて一桁台後半のリターンを期待 しているという。

資金拠出の必要性が生じたときには、保有資産の一部を売却する可 能性もあると清水室長は説明。また、海外案件の場合は為替リスクをヘ ッジしない方針だ。元本割れは基本的には想定していない。1号案件は 未定としながらも、それほど遅くはならないとの見通しを示した。

国債は買い増さず

大和証券投資戦略部の塩村賢史シニアストラテジストは、年金財政 の安定化のためには「ある程度リスクをとってリターンを上げる必要が あるのは事実」と指摘。インフラ投資については「より多くの資産に投 資するというところはリスク軽減にもなる。GPIFが動けばそれ以外 のところも参考にしてくると思う」と語った。

約200兆円に及ぶ公的・準公的資金の運用・リスク管理の高度化を 議論する政府の有識者会議(座長:伊藤隆敏東大大学院教授)は昨年11 月にまとめた報告書で、国内債に偏った資産構成の見直しやデフレ脱却 を前提とした金利リスク管理、REIT(不動産投資信託)や不動産、 インフラ、プライベートエクイティ(PE)、商品など新たなリスク資 産の検討などを提言。物価連動債への投資も課題に挙げた。

安倍首相は先月23日、スイスの世界経済フォーラム年次総会(ダボ ス会議)で基調講演し、「GPIFはポートフォリオの見直しを始め、 フォワード・ルッキングな改革を行う」と訴えた。三谷隆博理事長はダ ボスでのインタビューで、インフレ率の高まりを背景に日本国債の値上 がり余地が非常に限られる中、GPIFは国債を買い増さず、保有分が 満期を迎えたら内外株式や外債への投資を検討すると語った。

内外株高

昨年10-12月期の収益率と収益額は、財投債を除いた市場運用分の 国内債が0.18%で1135億円、国内株は9.19%で1兆8649億円、外債 は8.16%で1兆284億円、外株は16.23%で2兆7260億円だった。昨年4 -6月期は1.85%・2兆2100億円と低迷したが、前期には同2.71%・3 兆2418億円と回復。10-12月期も持ち直しが続いた。

長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは昨年末に0.735%。 9月末から0.055ポイント上昇した。TOPIXは9.1%高い1302.29。 米国債の10年物利回りは3.03%と0.42ポイント上昇した。米S&P500 種株価指数は9.9%上げて1848.36だった。円の対ドル相場は1ドル =105円31銭と7.2%下げた。

GPIFは国内長期金利がリーマンショック後で最大の上げ幅を記 録した昨年4-6月期には、国内債で1兆円近い損失とマイナス1.48% の収益率を計上。国内株で9.7%のプラスを確保したものの、全体の収 益率は1.85%と3四半期ぶりの低水準となった経緯がある。今回は内外 株高の押し上げ効果が上回った。

GPIFは国債の保有額や運用資産に占める割合を公表していな い。日銀の統計によると、昨年9月末の国債・財融債・国庫短期証券の 発行残高980兆円のうち、GPIFが大半を占める「公的年金」は69兆 円で全体の7.1%だった。日銀の国債保有額は先週20日時点で196.3兆 円、ゆうちょ銀行は昨年末に131.6兆円。GPIFは民間の生命保険会 社を大幅に上回り、3番目に大きい国債保有機関となる。

政府の有識者会議で座長を務めた伊藤隆敏東大大学院教授は14日の インタビューで、GPIFは日銀が2%の物価目標を達成するため、巨 額の国債買い入れを進めているうちに国債を「2年程度」で早く減ら し、運用資産の半分を内外の株式に投じるべきだと主張。政府が5年に 1度行う公的年金制度の財政検証の結果を踏まえ、基本ポートフォリオ を「4-5月、遅くとも6月には」変更すべきだとも述べた。

GPIFの三谷隆博理事長は昨年12月のインタビューで、財政検証 が3月には出る上、来年10月に予定される厚生年金と各共済年金の統合 を視野に、厚生労働省の有識者会議が今年3-4月に積立金の運用指針 をまとめると説明。これを受けてGPIFなどが資産配分のモデルを作 り、各年金基金が独自の運用方針を定める段取りだと語った。

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