GPIF:物価連動債の購入に反対意見も-1月20日の議事要旨

世界最大の年金基金である年金積立 金管理運用独立行政法人(GPIF)が先月20日に開いた第74回運用委 員会(委員長:植田和男東大大学院教授)で、物価連動国債の購入に反 対する意見が出た。金利上昇リスクに対するヘッジ(損失回避)機能が 十分でないことなどが理由だとしている。

GPIFが25日午前にウエブサイトで公表した議事要旨によれば、 購入に反対した委員は、物価連動債は「インフレリスクは多少ヘッジで きても、名目金利リスク、クレジットリスクには対応できていない」と 指摘。「あまり購入の意味はないのではないか」と述べた。財務省によ る発行再開から約4カ月と日が浅く、「市場も十分発達していないため 価格面でも不利になる懸念がある」と言う。

一方、複数の賛成意見も出た。ある委員は「債券は、これを持って いたら何かをヘッジできて安心というものではない」と指摘。物価連動 債もインフレ対応より投資先の分散という意味で有効だとした。GPI Fは物価連動債を「運用対象に加えていくべきだ」と明言する委員もい た。米国でも物価連動債の長期保有にはインフレヘッジ効果がある一方 、短期売買では「逆に効果が上がらない」との実証分析があるため、債 券を満期保有するGPIFには多様化の効果が見込めると説明した。

GPIFが昨年12月に物価連動債の購入方針を発表して以降、市場 の期待感が高まり割高化が進んでいるとの懸念も出た。ある委員は「G PIFの投資があてにされ、不利な価格とならないよう相当慎重に対応 すべきだ」と主張。「必ず一定規模を入札していくのではなく、条件に センシティブだという印象を市場に作り出していく必要がある」との意 見もあった。

インフレ前提の運用へ

これらの意見を受け、GPIFの事務局は「市場の動向を見て、工 夫を凝らしながらやっていく」と応じた。

全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は昨年12月に前年比1.3% と市場予想を上回り、リーマンショック直後に当たる2008年10月以来の 伸びとなった。消費者物価が上昇すると元本・利払いが増える物価連動 債は新発の17回債(23年10月9日償還)が今週24日に107円12銭と、財 務省が約5年ぶりに入札を再開した昨年10月以降で最高となった。発行 開始は04年3月だが、デフレ進行による市場低迷を受けて08年8月を最 後に休止していた。

約200兆円に及ぶ公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政 府の有識者会議は昨年11月に公表した報告書で、政府・日銀が経済の活 性化と2%インフレを目指す中、GPIFは国内債に偏っている資産構 成を見直す必要があると提言。REIT(不動産投資信託)や不動産、 インフラ、プライベートエクイティ(PE)、商品など新たなリスク資 産、物価連動債への投資を検討課題に挙げた。

リスク許容度

厚労省は同年翌月、GPIFが今年4月以降に物価連動債を購入す る方針だと発表。公的な機関投資家との共同によるインフラ投資を検討 しているとGPIFから報告を受けたことも明らかにした。米バンク・ オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの指数によると、日本の物価連 動債は最近1年間の収益率が4.79%。米国では7.01%の損失だ。

三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは「年金 は将来受け取る所得・生活資金だ。物価上昇分をヘッジしてもらわない と困る」と指摘。物価連動債によるインフレヘッジは可能なので、運用 資産の「一部として持っておく」意義があると語った。

今回の運用委員会では、政府の有識者会議と独立行政法人改革に関 する報告についても議論された。厚労省からの出席者は、政府の有識者 会議などでも「あらゆる資産運用はスポンサーサイドの要請に沿ったも のだ」と理解されていると説明。ただ、今後の金利上昇とインフレ増進 の見込みを踏まえた年金財政の運用が必要ではないかとの議論だと理解 していると述べた。

ある委員は、財政再計算の結果、「要求利回りが高ければ、ある程 度のリスクを取らざるを得ない」と指摘。現在と同程度だった場合の対 応も難しく、資産配分の組み合わせによるリスクと期待収益率の関係を 示す有効フロンティアを拡大するような新たな資産の追加という議論も 十分あり得るとの認識を示した。財政検証が出す要求リターンに対応し たリスク許容度しかあり得ないとの意見もあった。

年金基金という超長期運用が可能なマネーが「短期運用のリスク許 容度と同じはずがない。資金の性格をもう少し有効に使う」べきだとの 指摘も出た。ある委員は「流動性リスクを取れるので、流動性が低い資 産を時と場合において買う投資戦略を組み込めば、有効フロンティアが 拡大する」と語った。

厚労省からの出席者は、国民の資産運用に対する効用関数が分から なければ、「リスク許容度からの議論は難しく、リスク許容度という観 点から決めている国はない」との見方を示した。GPIFの事務局は、 有識者会議の指摘は運用委員会が「これまで議論してきた数々の論点」 と大差はないと発言。焦点は「安全かつ効率的な運用」とリスク尺度、 年金財政との関係の整理だと感じていると述べた。

GPIFの資産構成比率を規定する「基本ポートフォリオ」では国 内債が60%、国内株は12%、外債11%、外株12%。昨年6月に2006年度 の同法人設立から初めて変更するまでは67%、11%、8%、9%だった が、国内債を引き下げ、他の3資産を増やした。9月末の実績は国内債

58.03%、国内株16.29%、外債10.13%、外株13.49%だった。

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