【FRBウオッチ】自動車に陰り、景気加速への両輪喪失か

米国製造業の大幅減産、小売売上高 の落ち込みなど景気の転換点を告げる統計が増える中で、市場関係者の 多くは寒冷な天候を理由になお成長の加速を見込んでいる。

しかし、統計を詳しく見れば天候要因だけでは説明できない景気の 悪化が浮かび上がる。例えば、前月比0.8%低下と景気後退期並みの落 ち込みを記録した製造業生産指数。この最大の押し下げ要因は自動車・ 同部品項目の5%低下だった。

製造業生産指数は、米連邦準備制度理事会(FRB)が作成する鉱 工業生産指数の75%を占める。FRBは同統計のテキストの中で、「数 多くの自動車組み立て工場が悪天候で1日あるいはそれ以上の生産を失 った」と説明している。この説明には、1日の生産が1カ月の生産統計 にどの程度の影響を与えるのか数量的な記述がなく極めて漠然としてい る。こうしたFRBのあいまいな表現も手伝って、市場関係者は5%の 減産をすべて天候要因で片付けてしまった。

このFRBの説明をじっくり読むと重要な事実が浮かび上がってく る。この説明の主語は「自動車組み立て工場」とされており、自動車部 品工場は含まれていない。FRBは製造業に鉱業と公益事業を加えて鉱 工業生産指数統計として発表しているが、統計全体に占める自動車組み 立て工場の比率が2.25%、これに対して自動車部品工場は2.09%で遜色 ない。

自動車部品は2カ月連続減産

統計表をさらに詳しく見ると、自動車組み立て工場の生産が前月比 8%も低下しているのに対し、自動車部品工場は2.4%の低下にとどま っていることがわかる。部品工場は組み立て工場が集中する地域に集結 しているので、両項目の減産規模の格差は悪天候では説明し切れない。

自動車組み立てに先行する自動車部品工場の生産は12月も0.4%低 下とマイナスに沈んでいた。自動車組み立て工場が1月に記録した8% の減産は寒冷天候である程度押し下げられているものの、かなりの部分 は天候とは関係のない理由で減産されたと見るのが自然だ。

それを裏付けるのは商務省が13日に発表した1月の小売売上高統計 だ。同統計の自動車・同部品項目は前月比で2.1%減少していた。昨 年12月の1.8%減に続いて2カ月連続マイナスである。2カ月連続減は 東日本大震災でサプライチェーンが寸断され、在庫不足で販売が落ち込 んだ2011年4-5月以来初めて。しかも減少率は今回の方が大きい。

1月の自動車販売の減少も寒冷な天候が影響したとされているが、 クライスラー・グループや日産自動車は販売を大きく伸ばしており、天 候要因だけでは片付けられない。こうした自動車販売の減少とそれに伴 う在庫の膨張で、工場での生産が抑制され始めたのである。

新車価格は4カ月連続低下

労働省が20日に発表した消費者物価指数(CPI)でも自動車販売 の退潮は明らかだ。同指数の新車項目は昨年の10月から4カ月連続で低 下。1月は0.25%低下と、過去4カ月の中でも最大の下げを記録してい る。自動車販売店は在庫の急増に直面して値引き販売を迫られているの である。今月のプレジデンツデーのセールでは高級ミニバンで1台7000 ドルから1万ドルの値引き販売が実施されている。

寒冷な天候で自動車販売が落ち込んでいたのなら、潜在的な需要が 高まり、値引き幅は圧縮されるはずである。しかし、現実はその逆で値 引き幅は一層拡大している。消費者は2009年6月にかけてのグレートリ セッションで生じた潜在需要を上回る買い物を既に終えているのであ る。

米金融当局は大幅な金融緩和による金利押し下げで、住宅市場と自 動車販売を盛り上げることにより、経済成長の促進を目指してきた。し かし、長期金利の跳ね上がりにより、まず住宅市場が息切れし、頼みの 綱の自動車販売にも陰りが広がってきた。

貯蓄率押し下げも限界

自動車販売が住宅市場より息の長い拡大を続けてきたのは、自動車 ローン金利が短期金利を指標としているため、なおゼロ%近傍に抑え込 まれていることが関係している。

消費者は雇用市場の改善が進まない中で、賃金が抑制され、貯蓄率 を押し下げることで対応してきた。しかし、それも限界に近づき、自動 車の買い替えも一巡するに及び、販売に勢いがなくなってきた。

寒冷な天候の影響でなおアップダウンは続くが、基調的には自動車 販売もピークを過ぎたようだ。FRBは経済成長加速に向け頼りにして きた住宅と自動車という両輪を失いつつある。

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