ビール・飲料各社が示すアベノミクス2014の懸念-市場縮小も

アベノミクスの追い風を受け、トヨ タ自動車や日立製作所、マツダなどが今期(2014年3月期)に過去最高 益を見込む。一方、生活により身近なセクターでは厳しさものぞき始 め、今年の業績に影を落としている。ビール・飲料各社がその典型だ。

少子高齢化、賃金の伸び悩みに加えて4月からは消費増税が重荷に なる。上場各社の今期(14年12月期)収益見通しは市場予想に届かなか った。アサヒグループホールディングスの奥田好秀取締役は消費増税の 影響で競争が激化、販促費が増加するとみており、サントリー食品イン ターナショナルは国内清涼飲料市場は消費税の影響で今年は縮小すると の見通しを明らかにした。

ビール・飲料各社の14年度業績予想は、安倍晋三首相がこれから直 面する問題を先取りした格好だ。安倍政権発足以降の円安進行を背景に 輸出企業は収益を拡大してきたが、国内企業各社は賃上げや投資には依 然慎重。政府の月例経済報告は先月、4カ月ぶりに上方修正されたが、 2月19日の会見で甘利明経済再生担当相は「デフレ脱却には至っていな い」と述べた。

ジャパンインベストの大和樹彦副調査部長は、かつてのビール・酒 類各社は経済の「成長とともに売り上げを取る主義だった」という。そ れが市場が「縮小均衡」している現代になっても以前と同じように競争 しているために「マージンが取れない」と述べた。

市場は2%縮小

12月期決算の大手飲料各社は先週から14年度の業績見通しを発表 し、決算資料や会見では消費増税への言及が相次いだ。アサヒの奥田取 締役の他にも、サントリーホールディングス(HD)やサッポロホール ディングスも決算資料で、消費増税による厳しい国内市場環境を予想し た。サントリー食品の肥塚眞一郎専務は14日の会見で、国内清涼飲料市 場は消費税の影響で今年2%ほど落ち込むとの見通しを明らかにし「こ こ3年ずっと3%程度で成長しており、今年も本来だったらそのくらい の成長」が見込めたと述べた。

トヨタは4日、14年3月期の連結純利益予想を前年同期比2倍の1 兆9000億円に上方修正し、リーマンショック前に記録した過去最高益を 6年ぶりに更新する見通しとなった。マツダも純利益ベースで、日立は 営業利益ベースで過去最高を更新するとの予想を発表した。いずれも海 外事業の収益が円安によって押し上げられた。3月期決算企業は、14年 度の業績見通しを4月末から発表し始める。

海外戦略

飲料各社もただ手をこまねいているわけではない。サントリーHD は総額160億ドル(約1兆6400億円)で「ジムビーム」「メーカーズマ ーク」などを持つ米ビーム社買収で合意。世界の蒸留酒市場で3位の座 に躍り出る。キリンホールディングスの三宅占二社長は約48%を出資す るフィリピンのビール会社サンミゲルビールの「マジョリティー保有に 関心がある」と述べた。アサヒはオセアニアや中国など、サッポロも北 米市場などに進出して、海外事業の収益拡大を狙っている。

「誰もが受ける円安という追い風が止まった後は、業界なり個別の 競争力が問われる年になる」と損保ジャパン日本興亜アセットマネジメ ントの中尾剛也シニアインベストメントマネジャーは言う。アベノミク スの成長戦略である「第3の矢がなくても自力で業績を上げているとこ ろとそうでないところは、今年以上に明暗が分かれてくる」と述べた。

ビール・飲料各社が直面するもう一つの課題は原材料費の高騰だ。 サントリー食品の今年の国内の営業増益率が昨年から大きく落ち込むこ とについて、鳥井信宏社長は14日の会見で原因の「一番大きなところは コストアップ」と述べ、円安による原材料費上昇が影響するとの見通し を明らかにした。サッポロも売り上げ増を見込みながら減益となる要因 の一つに「円安による原料、資材コストの高騰」を挙げている。

過去最大

足元では円安効果で貿易赤字が拡大している。原子力発電所停止に 伴う液化天然ガス(LNG)や原油の輸入が増えていることもあり、20 日に発表された1月の貿易収支は2兆7900億円の赤字を計上。比較可能 な1979年以降、過去最大の貿易赤字となった。輸入が前年比25%の8 兆429億円と最大だった一方、輸出をけん引する自動車は伸び率が事前 予想を下回り、数量ベースでも減少に転じた。

内需企業にとっては「仕入れ価格が上がった分を価格転嫁できるか どうかがポイントになる」とミョウジョウ・アセット・マネジメントの 菊池真最高経営責任者はいう。「競合他社がいるようなところは価格転 嫁をしてしまうと相手にシェアを奪われかねない。そういう企業がほと んどなので、内需企業にとっては円安は厳しい」と述べた。

安倍首相は先月「15年ぶりにデフレから脱却できるかもしれないチ ャンス」と記者会見で述べた。4月の消費増税に対し、5.5兆円の経済 対策と1兆円の税制対策を行い「経済成長、デフレ脱却、それと同時に 財政再建を一度に達成する」という。

大和証券投資戦略部・情報課副部長の高橋卓也氏は、消費増税直後 の4-6月の景気が「悪いというのはコンセンサスでどうしようもな い」という。一方で「脱デフレということで今進行している賃上げや資 産効果でそのインパクトを緩和できるという期待感はまだ持っている」 として、7-9月に「内需が堅調に戻ってきてくれることを期待した い」と述べた。

--取材協力:. Editors: 宮沢祐介, 中川寛之

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