JPモルガン辞めバイオ企業CEOに-難病の息子救いたい父

米銀JPモルガン・チェースのヘッ ジファンド担当バンカーだったイラン・ガノット氏が金融業界を離れた のは、医薬品の開発を迅速化する新しいビジネスモデルを生み出すため だった。このビジネスの成功に、息子の命が懸っている。

2歳の息子は1年前に、デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)と診断された。死に至る遺伝性疾患だ。ガノット氏(40)は ロンドンでの仕事をやめてボストン近郊に引っ越し、1700万ドル(約17 億3200万円)の資金を集めバイオテクノロジー企業を設立した。

医薬品の開発が自分たちの子供の命を救うのに間に合わないとみ て、自ら行動を起こす親はガノット氏だけではない。擁護団体を作る、 あるいはそうした団体を支援するのが一般的だが、ガノット氏は金融業 界での経験を生かし治療薬を市場に送り出すための事業を始めた。

筋ジストロフィーの子供を持つ親などが作る非営利団体、ペアレン ト・プロジェクト・マスキュラー・ジストロフィーの副会長、シャロ ン・ヘスタリー氏はガノット氏について、病気の子供の親が「自分の持 っているスキルをこの問題のために生かそうと考える本当に特別な例 だ」と話す。

ガノット氏は病気の進行を遅らせるだけでもいいと考えている。筋 繊維を支える働きをするジストロフィンというたんぱく質が体内で生成 されなくなることで起こるデュシェンヌ型筋ジストロフィーに、根本的 な治療法は確立されていない。この病気になった子供は10代になる前に 歩けなくなって車いす生活となり、20代で死亡することが多い。

有望プロジェクトを支援

自分の会社を通じてこの病気と闘うことがガノット氏の計画だ。初 期段階にある有望なプロジェクトの進展を資金不足が妨げる。同氏は金 融業界での経験を資金集めに生かして、あまりにも時間がかかりリスク が高いことで知られる医薬品開発という事業をスピードアップさせるつ もりだ。

「真剣に集中して取り組んでいる。私の人生には一つの問題がある からだ」と同氏は言う。その問題であるDMDについての「優れた研究 の中心になる」のが目標だ。

1年に約2万人の赤ん坊がDMDを持って生まれる。ガノット氏は 向こう10年の間にこの病気の治療薬を数多く市場に送り出したいと考え ている。

息子のエイタニ君がデュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された 時、ガノット氏と妻のアニーさんはインターネットで情報を探した。そ の中で、幹細胞治療が効果があるかもしないという論文を見つけ、初め てかすかな希望の光を見いだした。

JPモルガンが出資

医薬品開発の内情を知る人に話を聞こうと当たっているうちに、 JPモルガンで医療関連の投資銀行業務の共同責任者を務めるアンドレ ア・ポンティ氏にたどり着いた。ポンティ氏はロンドンからの電話イン タビューで、ガノット氏と「初めて話したのは彼の息子がDMDと診断 されたちょうど1週間後だった」と振り返った。ガノット氏は「私にで きるのは資金集めだけだ。この病気を治すための資金を集められると思 いますか」と言ったという。

JPモルガンはガノット氏の会社への出資者になった。ポンティ氏 が銀行を代表する取締役になる。生命科学専門のベンチャー投資家、ア ンドレイ・ザルア氏、欧州の投資ファンドで最高経営責任者(CEO) をしていたギラッド・ハイーム氏という医療と投資の専門家をガノット 氏はパートナーに得た。

会社の名前は「ソリッド・ベンチャーズ」。ヘブライ語のエイタニ 君の名前を英語に訳するとソリッド(確かな)になる。JPモルガンに 加えて個人投資家や、DMD治療薬の開発を手掛けるサレプタ・セラピ ューティックスに投資しているヘッジファンドのパーセプティブ・アド バイザーズから出資を得て、ガノット氏の会社は船出した。父の闘いは 始まったばかりだ。

原題:JPMorgan Dad Turns Biotech CEO in Quest to Save His Son: Health(抜粋)

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