日銀:長期国債残高の来年見通し公表せず-月額「7兆円強」も柔軟に

日本銀行は量的・質的金融緩和の下 で目標としているマネタリーベースや保有長期国債の残高見通しについ て、来年以降の分は公表しない見通しだ。現在のペースで金融緩和を続 けた場合の残高を公表すれば、今後の金融政策に予断を招きかねないこ とが理由。長期国債の買い入れ額も従来の毎月「7兆円強」を「6兆~ 8兆円」のレンジの運営に修正する方針だ。

事情に詳しい関係者への取材で分かった。いずれも金融政策運営に より柔軟性をもたらす狙いがある。関係者によると、来年末の残高見通 しを公表すると、日銀がそれまで量的・質的緩和を続けることを約束し たと受け止められる可能性が高い上、2年をめどに物価目標の2%に達 するという自らの見通しに対して、事実上の白旗を揚げることになりか ねない。このため量的・質的緩和を来年以降継続する場合でも、年末の 見通しは公表しない可能性が高いという。

日銀は昨年4月、「消費者物価の前年比上昇率2%の物価安定の目 標を2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現する」と宣 言。その手段として「マネタリーベースが年間約60兆-70兆円に相当す るペースで増加するよう金融市場調節を行う」ほか、「長期国債の保有 残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う」 ことなどを明らかにした。

その際、マネタリーベースは2013年末に200兆円、14年末に270兆 円、長期国債の保有残高は13年末に140兆円、14年末に190兆円という見 通しを公表している。

マネックス証券の村上尚己チーフエコノミストは、日銀は長期国債 保有残高について「さらに見通しを出すことによって自分たちの手を縛 るようなことはしたくない」とみており、日銀にとっては緩和の継続が カレンダーベースと思われるよりも、「オープンエンドなものだとより 明確にさせたほうが望ましい」と述べている。

来年は出口議論も

日銀は昨年10月に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート) などで、「消費者物価の前年比は15年度までの見通し期間の後半にかけ て2%程度に達する可能性が高い」としている。黒田東彦総裁は「2% の物価安定の目標の実現に向けた道筋を順調にたどっている」と繰り返 し表明。日銀の見通し通りに経済・物価情勢が推移すれば、量的・質的 緩和の出口が具体的な議論の対象になる可能性が出てくる。

日銀は1月22日の金融政策決定会合後の声明で、コアCPIの前年 比は「消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、しばら くの間、1%台前半で推移する」と指摘。黒田総裁は「しばらくの間」 について「半年程度」と説明した。

SMBCフレンド証券の岩下真理シニアマーケットエコノミストは 「半年後の夏までの間に、2%の実現が難しいことを理由に追加緩和を 検討する可能性が極めて低い」とみる。三菱UFJモルガン・スタンレ ー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は「今年10-12月期に2%の物価 安定目標を達成する」と予想。追加緩和も「ない」とみている。

買い入れ額は月「6兆~8兆円」程度

一方、関係者によると、毎月の長期国債の買い入れ額について、買 い入れの平均残存期間を「7年程度(6年~8年程度)」としているよ うに、「6兆~8兆円程度」とすることを黒田総裁が記者会見で表明す る案が有力になっているという。

日銀は昨年4月に量的・質的金融緩和を導入し、長期国債の保有残 高が「年間約50兆円」に相当するペースで増加するよう買い入れを行う と表明するとともに、毎月の長期国債のグロス(総額)の買い入れ額は 「7兆円強となる見込み」と発表。昨年5月に金融市場局が発表した 「当面の長期国債買い入れの運営について」でも、「毎月7兆円強程度 を基本とする」としていた。

しかし、昨年12月と今年1月の買い入れ額は2カ月連続で7兆円を 割り込み、市場では日銀も米国に続いてテーパリング(資産買い入れ額 の縮小)を開始したとの観測も出ていた。岩田規久男副総裁は6日の会 見で、買い入れ額の振れが金融緩和姿勢の変化ととらえる見方につい て、量的・質的緩和を打ち出した時点で「誤解を生まないようにという 配慮が足りなかったのかもしれない」と述べた。

残高が重要

日銀が「年間約50兆円」に相当するペースで増加するよう買い入れ ていることについて、岩田副総裁は「日銀が長期国債を残高としてどれ だけ持っているか、その残高がどれだけのスピードで伸びていくかが金 融政策の効果を決めるという考え方に基づいている」と説明。その上で 「長期国債をネットベースで年間50兆円増やすためには、償還した日銀 保有国債の再投資を行うと、グロスベースの買い入れ額はどうしても振 れる」と述べた。

もっとも、日銀が毎月の買い入れ方針の修正を迫られた背景には、 単純な計算違いがある。昨年は主に4月からの9カ月で約50兆円純増さ せたのに対し、今年も同じペースで買い続ければ、年間では3カ月多い 分、ネットの増加幅は50兆円を大きく上回る。そのため、月々の買い入 れ額を平均して昨年より減額させざるを得ない。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケット エコノミストは、年末の保有長期国債を50兆円純増させるには、今後の グロスの買い入れ額は「6.5兆円程度になる」とみている。

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