【コラム】2020年東京五輪、勝者はもう決まっている-ペセック

日本は2020年東京五輪から大きな経 済効果を得られると期待しているが、ロシアのソチの現状を見て多少は 心配になっているかもしれない。ムーディーズはソチ冬季五輪がロシア 経済にもたらす恩恵を疑問視している。

しかし日本には東京五輪で大もうけを約束されたグループがいる。 東京はロシアのプーチン大統領のように五輪に500億ドル(約5兆1000 億円)も費やすことはしないだろう。それでも20年までの6年間に40億 -50億ドルを競技場などの建設に使うはずだ。そして建築現場にはいつ も、やくざがいる。

日本のやくざに詳しいジャーナリストのジェイク・アデルスタイン 氏が心配するのは、暴力団が見えないところで「みかじめ料」を取って もうけることではない。彼らが暴力団対策法の下、指定暴力団として合 法的に存在が認められている日本ではそんなことは普通だ。心配なの は、五輪を前にやくざの悪行が比較的堂々と、しかも大々的に行われる ことだ。同氏は東京五輪を「やくざオリンピック」と呼んでいる。

米国のニュース・ウェブサイト、デーリー・ビーストへの寄稿で同 氏は、日本オリンピック委員会(JOC)の田中英壽副会長が暴力団と 結び付きがあるとの指摘について詳細に説明。10年に回顧録「トーキョ ー・バイス」を上梓した同氏はまた、東京五輪・パラリンピック組織委 員会会長を務める森喜朗元首相が過去に暴力団幹部の家族の結婚式に出 席したり、関係者らと飲食を共にしたことにも触れている。

こうした話題から受けるイメージは、安倍晋三首相が五輪招致の際 に約束したクリーンで犯罪ゼロの東京とずいぶん異なるとアデルスタイ ン氏は論じる。

バルバドスよりも腐敗

日本の腐敗が悪化したのは、11年の東日本大震災によって大規模な 復興が必要となった後だった。トランスペアランシー・インターナショ ナルがまとめる腐敗についてのランキングで、日本は11年にはドイツに 次ぐ14番目にクリーンな国だった。しかし13年には18位に順位を下げ、 バルバドスと香港よりも下になった。これは土建国家への突然の逆戻り が理由だ。日本はそれまで、大規模な汚職の温床となる土建国家状態を 脱しようと長年取り組んでいたところだった。

2020年東京五輪は新たな公共事業ラッシュを引き起こす。やくざの 活動が顕在化すれば、日本が五輪から期待する経済的恩恵を相殺してし まうだろう。公的資金の無駄な遣い方は、本来ならば広く波及し最終的 に家計を潤すはずの刺激策の効果を弱める。政治家と建設会社とやくざ の癒着は経済改革の息の根も止めるだろう。最上層部での汚職が急増す れば、五輪関連の財政支出によって日本経済が潤うことも、「アベノミ クス」が勢いづくことも難しくなる。

フロント企業

政府が組織犯罪と日本企業の薄暗い関係を断ち切ろうとする時、ま ず標的になるのはいつも建設会社だ。警視庁内部の人間がアデルスタイ ン氏に述べたところによると、建設プロジェクトからやくざに渡る金は 通常そのプロジェクト規模の5%程度だ。しかし上層部にコネがあれ ば、内部情報によってこの取り分を飛躍的に増やすことができる。暴力 団の「フロント企業」がおいしい契約を取ったり、下請け契約をごまか して2重に金をかすめ取ることもできるだろう。

五輪と汚職は、スポーツ選手とナイキの契約のように、切っても切 れないものだ。どちらも避けようがない。しかし、汚職を防ぐための障 壁を高くすることはできる。テンプル大学ジャパンキャンパスのアジア 研究責任者ジェフ・キングストン教授は著書「コンテンポラリー・ジャ パン」で、「巨大建設プロジェクトと官僚、政治家、産業界、やくざの 結び付きは、イタリア、ロシアと同様に日本の特徴だ」と書いている。 日本の「1990年代の公共事業費が米国防総省の予算と同規模だったこ と、大幅な削減にもかかわらず依然として巨額であることを考える と」、建設プロジェクトほどやくざの懐を潤すものはない。

試されるのは日本の評判

というわけで、日本のやくざ諸氏にはわが世の春が戻ってきた。こ のところオバマ米大統領を含めあらゆる方面から資産凍結だの制裁だの 締め付けが厳しかったが、東京五輪のおかげでやくざは建設プロジェク トからできる限りの金を搾り取ろうとするだろう。日本の債務は既に国 内総生産(GDP)の2倍を超えているが、五輪のためにさらに増える 見通しだ。まさかソチ五輪の費用に近づくことはないにしても、安倍政 権の支払いは今考えているよりもはるかに高くつくと考えて間違いな い。

政治家は近年、国民の生活よりもやくざを潤す建設・産業複合体の 解体を約束してきたが、東京五輪はこれを試す機会となるだろう。つい でに日本の評判も試される。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Sure Winners in 2020 Tokyo Olympics? Gangsters: William Pesek(抜粋)

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