【コラム】ドラギ総裁に秘策あり、デフレ寄せ付けない方法とは

欧州中央銀行(ECB)は近々、デ フレの脅威と闘うために重砲を持ち出さなくてはならないかもしれな い。この武器は、英米や日本の資産購入プログラムに似た形態となるだ ろう。だが、18カ国が参加する通貨同盟のユーロ圏では、何を購入する のかという難しい問題がある。

最善策は銀行からローン債権を買い取ることだ。銀行ローンのユー ロ版量的緩和と名付けよう。

過去1年に大きな進展はあったが、ユーロ圏経済の足取りは引き続 き弱い。余剰生産能力に低調な成長、競争力回復を図る値下げがインフ レに深刻な下押し圧力を与える。銀行同盟への移行に当たり各行は、資 本積み増しを求められることへの恐怖から融資を抑制し、これがディス インフレの勢いをますます強めている。デフレまで行かなくとも、超低 インフレがユーロ圏全域で長引けば、インフレ調整ベースでの債務が増 え、経済不振の国々は競争力を回復し債務を圧縮するのがますます難し くなる。

経済見通しと融資動向が改善しなければ、ECBは3月上旬の次回 の定例政策委員会で追加刺激策を検討せざるを得ない。選択肢として は、現在0.25%の主要政策金利の0.1%への引き下げや、将来的な中銀 預金金利のマイナス化などが考えられる。マイナスの預金金利は銀行が 中銀に資金を滞留させるより融資に回すことを促す。

しかし、デフレリスクと闘う上で最も強力な手段は、資産を購入す る量的緩和だ。ここでの難題は、ユーロ圏ではどのような量的緩和が最 も効果的であるかを判断することだ。

ドラギ総裁は示唆済み

ソブリン債購入の可能性は決して排除できないが、これが理想的で はない本質的な理由がある。米国債と異なり、ユーロ圏には共通する実 質リスクフリーの国債というものがない。18カ国の国債が存在し、その 一部は相対的にリスクが高い。ECBは「アウトライト・マネタリー・ トランザクション(OMT)」と呼ぶ国債購入計画を打ち出し、計画を 実行に移すことなくスペインやイタリアの借り入れコストを押し下げる ことに成功したが、この計画の合法性について、ドイツの連邦憲法裁判 所が疑義を呈している。

ドラギECB総裁は少なくとも2回、別の方法を示唆している。資 産担保証券(ABS)に組成された銀行ローンの購入だ。これは金融刺 激になるほか、資本やレバレッジ基準による制約が和らぐため銀行が新 たに融資しやすくなる。その意味でこの方法は、米金融当局による住宅 ローン担保証券(MBS)の購入と似ている。米連邦準備制度理事会 (FRB)のバーナンキ前議長はこれを「信用緩和」と呼んだ。これ は、金利リスクを民間の手から移し、同時に他のリスクプレミアムを縮 小させ与信を支える形の量的緩和だ。

もちろん、ECBにはローンのデフォルトに対する幾らかの防護策 が必要になる。これはリスクとリターンのレベルに応じて証券をトラン シェに分けるプロセスを通じて達成できるかもしれない。デフォルトで まず発生する損失を吸収するトランシェは証券を発行する銀行が持ち、 さらなる損失吸収のトランシェは投資家に売却、各国政府にも部分的に 保証を付けることを求めるいった具合だ。それでも極端なシナリオの下 ではECBに損失が生じるかもしれない。望ましくはないが、危機時に は常に中銀が幾らかのリスクを負うというのが現実だ。

ユーロ圏の銀行を一元的に監督するという新たな権限をECBが利 用し、銀行にローンの証券化を促すことも可能だろう。その上で、デフ レリスクが大きくなればABSのシニアトランシェを中銀が購入する姿 勢を示すことで、投資家の安心感を高めることができる。もちろん、 ECBが大規模に購入できるだけのABSを銀行が発行するには何カ月 もかかる。その間にECBは、銀行のローンポートフォリオの一部を直 接買い取るというバックアップ計画を持つべきだろう。

望ましいのは、ECBがこのローン購入をユーロ圏諸国の経済規模 に応じて実施するか、ユーロ圏全体で実行することで域内どこからでも 民間部門が参加できるようにすることだ。しかし、困難が大きい特定国 を対象としたいのであれば、域内各国の中銀にローンを購入する権限を 与えることで法律上の問題を避けて通ることもできる。

詳細はどうであれ、ECBは銀行ローンを通じた量的緩和が同中銀 の非常事態計画であり、行動する準備ができているとはっきり説明すべ きだ。あまり大きくない金額の購入を将来のある期日に実施する約束を して行動の意思を強調すれば理想的だ。明確なコミットメントはインフ レ見通しに強い影響を及ぼし、デフレを退けるのに役立つだろう。

(クリシュナ・グハ氏は元ニューヨーク連銀報道官。現在はインターナ ショナル・ストラテジー・アンド・インベストメント・グループ (ISI)副会長として同社で中銀戦略責任者を務める)

原題:How Mario Draghi Can Ward Off Euro-Area Deflation: Krishna Guha(抜粋)

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