【コラム】高齢者バンド、ローリング・ストーンズへの願い

ビートルズが初めて米国に進出し、 「エド・サリバン・ショー」に出演してから50年。ケネディ大統領暗殺 直後の重々しい空気の中、米国がリバプール出身の4人の若者を熱烈に 歓迎、大人になりかけのベビーブーム世代がその音楽に熱狂し、1970年 の解散で虚脱感に苦しんだ当時の様子がこの1カ月、あちこちでつづら れ、われわれの記憶を新たにした。

これまで何度も指摘されていることだが、ビートルズは解散したか らこそ、純化された天才的魅力を永久保存することができた。解散しな ければもう一枚くらい傑作のアルバムを出せていたかもしれないが、 「レット・イット・ビー」の後に彼らが「ラバー・ソウル」や「リボル バー」、あるいは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラ ブ・バンド」と並ぶほどの作品を送り出せたとは想像し難い。

しかしこのコラムの主題はビートルズではない。日本を含むアジア ツアーに繰り出すローリング・ストーンズについてだ。

今回のツアーがストーンズにとって最後のものであってほしいと願 う。ロック史上2番目に重要なバンドであるストーンズは、ビートルズ 解散から数年後に解散してしかるべきだった。

ストーンズの歴史はビートルズが描いた軌跡に非常によく似てい る。ビートルズより数年遅れて62年に結成され、明るくエネルギッシュ なビートルズとは対照的に、暗くて荒々しい世界、快楽への陶酔をイメ ージさせた。ビートルズが「抱きしめたい」「愛こそすべて」と歌う一 方で、ストーンズは「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」 「黒く塗れ」「悪魔を憐れむ歌」で未成年たちを魅了した。

ライバル意識

ビートルズ、そしてジョン・レノンとポール・マッカートニーの作 詞・作曲コンビを、ストーンズが競争相手として意識していたのは間違 いない。当時ブリティッシュ・インベイジョン(英国の侵略)のうねり に飲み込まれたバンドはどれも、ビートルズのスタイルと音楽性をある 意味まねたものだ。

しかしビートルズと同様に、ストーンズの創造性もやがて枯渇に向 かう。72年に出た「メインストリートのならず者」は、ビートルズの 「ホワイト・アルバム」に相当する大作で、従来と異なるジャンルの組 み合わせに挑戦し、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの二人をレ ノン・マッカートニーに匹敵する作詞・作曲チームとして前面に押し出 した。

その後に出た「山羊の頭のスープ」「イッツ・オンリー・ロックン ロール」「ブラック・アンド・ブルー」と続く3枚は音楽的にぱっとせ ず、記憶に残るようなヒット曲はたった1曲しか生まれなかった。この 事実から、ストーンズの力が弱まりつつあったことが分かる。

「高校に戻りたいか」

78年に出した「女たち」は秀作だったが、残るエネルギーを出し切 ったのか、その後のアルバムは見劣りがする。

ジョン・レノンは生前最後となるプレイボーイ誌(81年1月号)と のインタビューで、ビートルズが解散した理由と再結成の可能性につい て問われ、十代のころからポール・マッカートニーやジョージ・ハリソ ンと付き合いがあったから、今更若いころに戻りたくはないと回答。逆 に聞き手に対し、「高校に戻りたいと思うか」と質問を返した。

このインタビューでジョン・レノンが話した内容は、ビートルズよ りもストーンズにぴったり当てはまる。長いレノンの発言を抜粋する と、「80年代になってまだ、なぜこいつらは一緒に活動しているんだと 不思議に思われるだろう。ビートルズもストーンズも過去の遺物として 片づけられる。そして派手な衣装や奇抜な化粧の写真は、未来では単な るジョークにしか映らない。16歳や18歳なら男だけで集まって騒がられ てもいいかもしれないが、40歳になってまだそんなことやっていたら、 頭の中は16歳だってことになる」。

80年代当時ですらこういう見方だったのだから、2010年代ならなお さらだ。ミック・ジャガーはかつて、「45歳になっても『サティスファ クション』を歌うくらいなら死んだ方がましだ」と語っていた。彼は昨 年70歳になった。キース・リチャーズも同年齢。ドラムのチャーリー・ ワッツは72歳だ。若者ぶって生意気な態度を取り、セクシーさを強調 し、反社会的なムードを醸し出すのはある年齢までは許される。しかし 彼らはおじいちゃんたちだ(ミック・ジャガーにはひ孫がいる)。ジョ ン・レノンの言い分は全く正しい。ジョークにしか映らない-。 (ジェームズ・グライフ)

(グライフ氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Rolling Stones Should Follow Beatles a Final Time: James Greiff(抜粋)

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