円高・ウォン安に過熱感、反転示唆のシグナルも-経常収支は韓国優位

新興国不安を背景に進んだ円高・ウ ォン安が反転する可能性が出てきている。テクニカル指標は相場過熱の 兆しを示唆しており、経常収支など日韓のファンダメンタルズ(経済の 基礎的諸条件)格差から、いずれ円安・ウォン高基調に戻るとみるアナ リストが多い。

円は年初来、対ウォンで6.7%上昇。これは31通貨中最大の上昇率 で、4日には一時1円=10.771ウォンと昨年11月14日以来の高値を付け た。米国の量的緩和縮小や中国経済への不安などが新興国市場からの資 金流出に拍車を掛け、円に資金を逃避させる動きが加速したことが背景 にある。相場の勢いを判断するRSI(相対力指数、14日間ベース)は 週初に、円がウォンに対して一時2012年5月以降で最も「買われ過ぎ」 の状態になったことを示した。

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のストラテジス ト、クーン・ゴー氏(シンガポール在勤)は、「日本は2%の物価目標 達成に向け強力な金融緩和を続けているため、円に下押し圧力がかかり 続ける」一方、「韓国のファンダメンタルズはかなりしっかりしてい る」と指摘。「円はここ1週間リスクオフ環境の恩恵を受けたが、円・ ウォン相場という観点で考えると円安に戻ると予想している」と言う。

韓国では昨年、海外とのモノやサービスの取引を示す経常収支が過 去最大の707億ドルの黒字となった。これに対し、日本の経常収支は昨 年11月に2カ月連続の赤字となり、赤字額は過去最大の5928億円を記 録。12月分は10日に発表されるが、1-11月の経常黒字額の累計は約3 兆9500億円(約390億ドル)にとどまっており、通年で韓国を下回る公 算が大きい。12年の経常黒字額は4兆8237億円と前年に比べ半減し、過 去最小だった。

円安・ウォン高予想

ブルームバーグの為替予測調査によると、円は今年12月末に9.545 ウォンまで下落する見通し。これはリーマンショックが起きる前の08年 8月以来の円安・ウォン高水準となる。

JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジスト は、円は「最適な資金調達通貨」であり、インフレ率およびインフレ期 待の上昇を受けた実質金利の低下、貿易収支に反映される国際収支の悪 化といった「従来の円のファンダメンタルズの弱さは依然ある」と指 摘。「グローバル経済が回復基調をたどり、投資家のリスクテーク志向 が強いという円安ビューの前提は特に変わっていないので、中長期的な 円安との見方は対ウォンでも変わっていない」としている。

甘利明経済再生相は先月14日の閣議後会見で、昨年11月の経常収支 が赤字となったことについて「貿易立国の原点が若干揺らいでおり、こ れからも注意が必要だ」と述べた。

日本の13年の貿易収支(通関ベース)は赤字額が前年から65%増加 し、過去最大の11兆4745億円に達した。赤字は暦年ベースでは比較可能 な1979年以降で初めてとなる3年連続。

買われ過ぎ

ブルームバーグ・データによると、円・ウォン相場のRSIは3日 に73.3まで上昇し、一般的に買われ過ぎの目安となる70を超えた。6日 時点では64前後。同じく相場の過熱感を表すストキャスティクスでは今 週、「買われ過ぎ」の領域で基本となる「%K」ラインがその移動平均 線である「%D」ラインを下抜け、「売りシグナル」が点灯した。

IG証券の石川順一マーケットアナリストは、円・ウォン相場は昨 年6月の高値から引いた抵抗線や一目均衡表の「雲」などを上抜け、円 買い圧力の強さを示しているが、「直近の上昇のスピードも速く、そろ そろ過熱感が出てきてもおかしくない」と指摘。節目の11ウォン近くに 位置し、長期トレンドを示す200日移動平均線を突破できなければ「反 落する可能性はある」とし、その場合は年初からサポートとして機能し てきた21日移動平均線を試し、そこを下抜ければ年末年始に付けた08年 9月以来の安値水準の10ウォンを目指す展開になると分析する。

日本時間6日午後の円・ウォン相場は10.63ウォン前後。ブルーム バーグ・データによると、200日線は足元10.91ウォン前後、21日線 は10.39ウォン前後に位置している。

昨年は19%の円安

ブルームバーグのエコノミスト調査によると、韓国銀行(中央銀 行)は今年10-12月期に政策金利を過去最低の2.5%から引き上げると 予想されている。韓国中銀は今年の成長率が3.8%と、10年以来の高水 準に達すると予測。一方、4月の消費増税による景気下押しリスクも警 戒される日本では、日銀による追加緩和観測がくすぶっている。

日銀の大規模金融緩和などを背景に円は昨年、対ドルで18%下落 と34年ぶりの大幅安を記録。対ウォンでも19%円安が進んだ。

韓国の玄旿錫企画財政相は今週、米国の量的緩和縮小や新興国の変 動がもたらす可能性のある影響に備えて、金融市場の監視を強化すると 表明。必要な場合には市場を安定させるため、「素早く行動する」と し、市場の監視を強化すると述べた。

ブルームバーグ・JPモルガンアジア通貨指数は年初から0.7%下 落。MSCI新興市場指数は8%安となっている。また、昨年56%高 と41年ぶりの上昇率を記録した日経平均株価は年初から13%下落し、主 要株価指数で最大の値下がりとなっている。

日本株との相関

JPモルガンの棚瀬氏は、「日本の貿易赤字が拡大する中で、対韓 国の貿易収支は依然黒字であるため、ウォンに対する円安が日本の対韓 輸出にとってサポーティブという構造は変わっていない」と指摘。円の 対ウォン相場と日本株は「相変わらず相関が強いので、円が対ウォンで 反落するのであれば、日経平均の反発につながる」とみている。

国際通貨基金(IMF)のスタッフは昨年10月公表の報告書で、外 貨準備高や資金調達の海外依存度などの基準に照らし、米金融刺激策の 解除で起こり得る世界的な市場の動揺を乗り越えるのに最も良い位置に ある国としてカナダやオーストラリアなどとともに韓国を挙げた。

野村証券の日本除くアジア担当の外国為替戦略責任者、クレイグ・ チャン氏(シンガポール在勤)は、4日のブルームバーグ・テレビジョ ンのインタビューで、「新興国市場の暴落はかなり大規模なポジション 調整を引き起こしている」と指摘。「過去2週間にわたり円・ウォンを ショート(円売り・ウォン買い)にする取引の巻き戻しが見られている が、中期的には特に対円でウォンが比較的強さを見せると予想してい る」と語った。

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