【米経済ウオッチ】景気は縮小寸前、北極気団前から冷え込み

米供給管理協会(ISM)景況指数 の新規受注項目は製造業、非製造業とも景気拡大と縮小の分岐点であ る50に接近してきた。ISMの両受注指数は景気先行指標であり、景気 の先行きに警戒信号が灯った形だ。

3日に発表された1月の製造業の受注指数は51.2で、低下幅13.2ポ イントは1980年12月以降で最大。80年末といえばスタグフレーションを 背景とするダブルディップ不況で景気波動が乱高下していた時期に当た る。

80年12月の新規受注指数の前月比低下幅は14.1ポイントで、くしく も今年1月と同水準の51.2に落下していた。また今年1月の新規受注指 数の下落率は20.50%でリーマン・ショック直後の08年10月の20.57%と ほぼ一致する。いずれも歴史的な大激動期である。

今回もその激動期と類似した衝撃が走ったと見ておくべきだろう。 これに対して、市場関係者の間では寒冷な天候が影響したとの見方が大 勢を占めた。

5日に公表されたISM非製造業景況指数の新規受注指数は50.9 で、前月の50.4と同様に50台で推移した。2カ月連続で50台となったの は2009年7月から始まった今回の景気拡大局面では初めてのことで、予 断を許さない。

隠された真実

ISM非製造業の総合景況指数は1月に54と前月から1ポイント上 昇。総合景況指数は景況のほか受注・在庫など4項目の平均値で、受注 以外の3項目が上昇したことから、押し上げられたもの。市場はこの上 昇を手がかりとし、受注指数は後景に追いやられた格好だ。しかし真実 というものは概して、こうして一般の関心の外に置かれた数値に隠され ていることが多い。

一方、3日に公表されたISM製造業景況指数では、受注指数のほ か雇用・在庫・生産とほぼ軒並み水準を下げ、その平均値である景況指 数も51.3と低下した。市場は全体の項目をひっくるめて寒冷な天候が影 響したと判断した。

製造業が低迷すれば天候要因で片付けられてしまったが、製造業は 本来、寒冷な天候に強いはずだ。逆に寒さに弱いはずのサービス業 を中心とする非製造業の景況感が高まると、悪天候を克服したと評価さ れる。そして、重要項目の受注指数が低迷したことは脇に置かれてしま った。

心理学によれば、人間には自らの希望や予測に反する情報を無意識 のうちに退ける傾向がある。米政府・金融当局から市場関係者の間で は、2014年の景気拡大加速シナリオが主流を占めている。その予測に反 する統計が発表されると、こうした主流派から無視されることになりが ちだ。

自動車販売は2カ月連続減

4日に発表された1月の自動車販売台数も例外ではない。年率換算 で1516万台と2カ月連続マイナスとなった。これも寒冷な天候で片付け られたが、乗用車が販売を減らす一方で、ミニバンなど小型トラックは 増えている。メーカー別に見てもゼネラル・モーターズ(GM)、フォ ード・モーターやトヨタ自動車は減少したが、日産自動車とクライスラ ー・グループは水準を上げていた。日産に至っては2ケタ増を達成して いる。

このようにもっぱら天候要因で片づけて細目の精査を怠ると、重要 な変化を見逃すことになりかねない。極め付きは住宅市場である。米国 の住宅販売の90%を占める中古住宅販売。その先行指標となる同販売成 約指数(2001年=100)は、昨年12月まで7カ月連続で低下し、92.4と ついに100を大きく下回ってしまった。12月は前年比でも6.1%低下し、 住宅バブル崩壊を裏付けている。

ところが12月は天候要因で片付けられてしまった。これはもはや天 候要因だけではない。なぜなら最大市場でかつ寒冷な天候の影響を受け ていなかった南部でも10.1ポイントの低下と、連邦政府の住宅減税失効 に伴い急落していた2010年5月以降で最大のマイナスを記録しているの だから。

小売売上高も失速リスク

また、昨年末にかけて大幅割引セールを背景に膨らんだ小売り販売 も、年が変わって買い疲れから勢いを失ってきた。米国際ショッピング センター評議会(ICSC)とゴールドマン・サックスがまとめている 米週間小売売上高指数でみると、クリスマス商戦にかけては前年比3% 増まで加速したが、年が明けると一気に1.7%増加まで鈍化、2月1日 までの週には前年比変わらずと失速気味だ。

こうして商務省発表の月間小売売上高などの陰に隠れて相対的に注 目度の低い週間統計を調べると、別の世界が見えてくる。ISM非製造 業の大項目の上昇が一見示すほどには、サービス業は拡大していない可 能性が暗示されている。

商務省が13日に発表する1月の小売売上高が市場予想(中央値)の 前月比0.1%増を下回ることになると、北極気団の張り出しによる天候 要因が取りざたされることになろう。しかし、ISM非製造業の総合景 況指数が予想を上回っているため、天候要因で片付けることはもはやで きなくなる。

複眼的な観察

このように各種統計について細目を含め総合的に見ていくと、天候 要因で曇らされている数値に光をあてることができる。7日には注目の 1月の雇用統計が発表される。市場予想の中央値は18万3000人の増加と まずまずの水準が見込まれているが、低めにでれば、天候要因で片付け られる可能性が高い。

その逆に高めの数値になれば、2014年景気加速シナリオを勢い付か せることになるだろう。しかし、1カ月の統計ですべてが判明するわけ ではない。隠された真実を探るためには、いずれの場合でも細目から大 項目への積み上げと同時に他の統計を含め複眼的に見ていくことが欠か せない。

(米経済ウオッチの内容は記者個人の見解です)

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