GPIFの国債投資に「大きなリスク」、早急に新基準を-内海氏

年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF)が国債中心の資産運用を続けると、将来の年金収入を歴史的 な低水準で固定し、国民に機会損失をもたらす恐れがある-。内海孚元 財務官は、世界最大の年金基金の運用方針を早急に見直す必要があると 説く。

日本格付研究所社長の内海氏(79)は3日のインタビューで、個人 的見解だと断った上で、今や国債投資にも「大きなリスクがある」と指 摘。円安・株高や景気回復、消費者物価の上昇にもかかわらず、長期金 利は日本銀行による巨額の国債購入で人為的に抑制されているため「本 来の水準ではない」と述べた。

その上で、満期保有を原則とするGPIFが「人類の歴史が始まっ て以来」の低利回りで国債を購入すると、低収益資産を大量に抱えてし まうので「非常に危険だ」と懸念を示した。内海氏はGPIF創設につ ながった厚生労働省の審議会で委員を務めた。

日本経済が安倍晋三内閣の経済政策でデフレを脱却し、緩やかにで もインフレ基調が続けば、固定利付債の実質価値は目減りするため「持 ち切りだから損失は生じないという議論は本来おかしい」と指摘。足元 の低金利で「将来における国民の潜在的な収入を固定してしまって良い のか」と疑問を呈した。日銀の「大量介入による異様な」金利形成を考 えると、国債も無リスク資産とせず、資産クラス間や円・外貨の配分な どポートフォリオを「思い切って見直す必要がある」と語った。

約200兆円に及ぶ公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政 府の有識者会議(座長:伊藤隆敏東大大学院教授)は昨年11月に公表し た報告書で、政府・日銀が経済の活性化と2%インフレを目指す中、 GPIFは国内債に偏っている資産構成を見直す必要があると提言。新 たなリスク資産や物価連動債への投資を検討課題に挙げた。

しっかりした理屈で

厚生年金と国民年金の積立金124兆円を抱えるGPIFの資産構成 比率を規定する「基本ポートフォリオ」では国内債が60%、国内株 は12%、外債11%、外株12%。昨年6月に2006年度の同法人設立から初 めて変更するまでは67%、11%、8%、9%だったが、国内債を引き下 げ、他の3資産を増やした。9月末の実績は国内債58.03%、国内 株16.29%、外債10.13%、外株13.49%だった。

内海氏は国際金融情報センター理事長だった01年から厚労省の社会 保障審議会年金資金運用分科会で委員を務めた。同分科会は05年まで続 き、年金資金運用基金の廃止と翌年4月のGPIF設立につながった。

資産構成を決める際に「過去の数値に基づくリスクとリターンで機 械的に組み合わせを作るのは、何となくピンと来ない」面があると、内 海氏は指摘。「もう少ししっかりした理屈で、しかも海外の動向も踏ま え、新しい基準作成に早急に取り組むと良い」と述べた。

コンサルタント会社タワーズ・ワトソンの推計によると、国内年金 基金の運用利回りは昨年4月から年末までに8.9%。円安・株高を背景 に好調だった。同社の別の調査では主要13カ国の年金基金は昨年、債券 の割合を34%から29%に減らし、株式を47%から52%に増やした。

物価連動債購入でリスク回避

黒田東彦総裁が率いる日本銀行は2%の物価目標を2年程度で達成 するため、月7兆円の長期国債を買い入れる「量的・質的金融緩和」を 昨年4月に導入。日銀が供給する通貨量を示すマネタリーベースや長期 国債の保有額を2年で倍増する。購入規模は今年度の国債発行総 額170.5兆円の約半分に及ぶ。

厚労省は昨年12月、GPIFが発行規模や市場動向を見ながら、4 月以降に物価連動債を購入する方針だと発表。公的な機関投資家との共 同によるインフラ投資を検討しているとGPIFから報告を受けたこと も明らかにした。

安倍首相は先月23日、スイスでの世界経済フォーラム年次総会(ダ ボス会議)で基調講演し、「日本の資産運用も大きく変わるだろう。 GPIFはポートフォリオの見直しを始め、フォワード・ルッキングな 改革を行う」と訴えた。

内海氏は、GPIFによる物価連動債の購入は「一つのリスク回避 になる」と指摘。インフラ投資やプライベートエクイティ(PE、未公 開株)投資についても「多様化していく必要がある。積極的に考えたほ うが良いのではないか」と述べた。

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