安倍政権:戦後の安保政策を転換-集団的自衛権の行使容認を模索

安倍晋三首相は歴代政権が憲法9条 との関係で許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認するための 憲法解釈変更を模索している。第2次世界大戦後の日本の安全保障政策 を転換し、日米同盟の強化を図るもので、中国との緊張関係が高まって いることも議論を後押ししている。

首相は5日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使と憲法との関 係について聞かれ、「政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすること によって可能であり、憲法改正が必要だという指摘はこれは必ずしも当 たらない」との認識を示した。

2012年12月に誕生した第2次安倍政権は、安全保障政策の強化に取 り組んできた。昨年の臨時国会で国家安全保障会議(NSC)の設置 法、特定秘密保護法をそれぞれ成立させたほか、今国会に提出した14年 度予算案では防衛費を2年連続で増加させた。集団的自衛権行使を容認 する憲法解釈の変更は安全保障政策の次の課題となっている。

東京財団の渡部恒雄上席研究員は、安倍首相は集団的自衛権の行使 を容認するための憲法解釈変更にいよいよ踏み込もうとしているとの見 方を示す。日本周辺地域の緊張が低い時には、世論の理解を得ることが 難しくなるからだという。自民党の平沢勝栄衆院議員も、東シナ海に防 空識別圏を設定するなど中国の行動が安倍政権の防衛力強化に向けた取 り組みを結果として後押ししている、と分析している。

集団的自衛権の行使容認には安倍首相の靖国神社参拝を批判してい る中国、韓国が反発を強める可能性もある。共同通信が1月26日に報道 した国内の世論調査結果では、集団的自衛権行使容認には53.8%が反対 し、賛成は37.1%にとどまった。

政府見解

集団的自衛権は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃 を、自国が直接攻撃されていない場合でも、実力をもって阻止する権 利。01年の米同時多発テロを受け、米軍によるアフガニスタンのタリバ ン政権への攻撃で北大西洋条約機構(NATO)が集団的自衛権を行使 し、米国との共同作戦を展開した例がある。

防衛省のウェブサイトによると、日本は権利を有しているものの、 「憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防 衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加え られた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権 の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されない」との政府見 解を掲載している。

有識者懇談会

集団的自衛権の憲法解釈変更については安倍首相が設置した有識者 会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座 長・柳井俊二元駐米大使)で議論しており、4月にも報告書をまとめる 予定。第1次安倍政権で設置され、ほぼ同じメンバーで議論して08年に まとめた報告書では公海における米艦船の防護や米国に向かう弾道ミサ イル迎撃など4つの類型で行使を容認するよう政府に求めている。

国家安全保障を担当する礒崎陽輔首相補佐官は1月17日のインタビ ューで、解釈変更の意義については「日米の同盟関係をもっと深いもの にしていく、深化させていかなければならない。そのために日本も一定 の役割を担えるようにすることは必要だ」と説明。懇談会の新たな報告 書がまとまった後、自民、公明両党との協議を行う考えを明らかにして いる。

集団的自衛権をめぐる問題には自民党と連立を組む公明党が憲法解 釈の変更に慎重姿勢を示しており、今後の調整では仮に解釈変更を行う 場合でも、集団的自衛権を行使できる範囲をどこまで認めるかが焦点と なる。

公明党

公明党の上田勇政調会長代理は1月21日のインタビューで、「基本 的に日本の保有する武力は必要最小限であるべきだ。それから、日本以 外の国際紛争に日本は介入するべきではない。その範囲の中であるべき だというのは憲法の趣旨だ」と指摘している。

礒崎首相補佐官は公明党との関係について「今まで公明党と意見が 違ってやったということは1回もない。公明党の合意を得るというのは マストだ」と話す。同氏は安保法制懇の結論が出れば「政府として何ら かのアクションを起こさなければならない。できれば国会中に決めた い」と6月22日までの今国会会期中に政府方針を決定することも視野に 入れている。

安倍首相は5日の参院予算委員会で、「わが国の場合は憲法9条に おける必要最小限の範囲で実力の行使をする、というものがかかってい る。個別的自衛権においてもこうした制限がかかっている」と強調。集 団的自衛権については「行使できないのが果たしてどこまで行使できな いのかどうか、こういうことだ。それについてまさに安保法制懇で議論 を進めている」と語っている。

みんなの党の渡辺喜美代表は現在の政府の憲法解釈について「国連 憲章だって認めている話をなぜ日本だけが自衛権は行使できるけど集団 的自衛権は行使できない、そんなおかしな解釈になるのか」と指摘。日 本維新の会の桜内文城衆院議員(国会議員団政調会長代理)も1月のイ ンタビューで、集団的自衛権の行使は「要件は必要だが、一つの独立国 家として当然の権利だ」と主張している。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE