トヨタ:「最も厳しい時期」越えて最高益へ、創業家社長の奮闘

自動車メーカー世界最大手のトヨタ 自動車は今期(2014年3月期)の連結純利益予想を上方修正し、リーマ ン・ショック前に記録した過去最高益を6年ぶりに更新する。円安の恩 恵に加え、豊田章男社長の指揮の下で取り組んできた原価低減や商品力 向上など地道な努力の成果が出ている。株価は反発した。

株価は5日、前日比6%高の5830円で取引を終えた。昨年6月10日 以来の上昇率。5営業日ぶりの反発となった。

トヨタは4日に発表した決算資料で、今期の純利益予想が前年同期 比98%増の1兆9000億円になるとした。08年3月期に記録した1兆7179 億円を上回り、同社として過去最高となる数字だ。13年4-12月の純利 益は前年同期から8779億円増えたが、増益要因の約26%にあたる3500億 円は原価改善と営業面の努力で実現したものだ。

都内で会見したトヨタの佐々木卓夫常務は、08年3月期と今期との 比較について、現在の為替レートが当時より円高であることを考慮する と、利益面で約1兆円分のマイナス要因になると明らかにした。そのマ イナス要因を「原価改善、固定費削減で跳ね返して今の水準」に持って きたと述べ、収益改善の努力の成果が表れているとした。

トヨタは最高益を記録した翌年の09年3月期に世界的な金融危機の 影響で59年ぶりの最終赤字に転落。それ以降も大規模リコールや、東日 本大震災、1ドル=70円台の円高などの課題に直面してきたトヨタが、 最高益を更新するまで復活できた背景には、顧客重視の姿勢や車の魅力 を説いて会社を率いてきた豊田社長の存在があると識者は話す。

「最も厳しい時期」

インテリジェンス・オートモーティブ・アジアのアシュビン・チョ ータイ氏は、過去数年間はトヨタ創業以来で「最も厳しい時期」だった という。就任当時は経営能力に疑問を持つ声もあった豊田社長だが、最 悪の状況から最高益更新まで引き上げたことは誇るべきであり、社長と しての「信頼感も大きく高まった」と述べた。

豊田社長は11年3月に発表したグローバルビジョンで、事業を通じ て「顧客の笑顔」を獲得することを重視するとし、各地域ごとに異なる ユーザーの期待に応える商品作りの方向性を表明。「もっといいクルマ を作ろう」というスローガンのもと、商品力向上と原価低減を実現する ための組織再編や新しい開発手法の導入に取り組むなどした。

ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは、トヨタはこ こ数年、商品力の向上に多大な労力を注ぎ、特にデザイン面での改善が 著しいと指摘。そうした面で豊田社長の意向が大きく影響していると話 した。その一例が高級ブランド・レクサスで採用した「スピンドル・グ リル」。12年発売のモデル以降、車の顔にあたるフロントグリルをこの デザインに統一している。

商品への集中

ゴールドマン・サックス証券の湯澤康太アナリストは、豊田社長が 就任以来の「非常に厳しい状況」の中で商品力向上へ集中し、それが昨 年来の「とてもよい製品の発表」につながっているという。そうした商 品への集中こそが「評価されるべきだ」と述べた。

豊田氏は、トヨタの事実上の創業者である2代目社長・豊田喜一郎 氏の孫。慶応義塾大学卒業後に米国で経営学修士(MBA)を取得して トヨタに入社、44歳で最年少取締役となり、09年6月に53歳で社長を引 き継いだ。

--取材協力:. Editors: 宮沢祐介, 中川寛之

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