【日本株週間展望】安倍相場初の5週続落、新興国懸念飛び火

2月1週(3-7日)の日本株は、 一昨年11月にアベノミクス相場が始まって以来、日経平均株価が初めて 5週連続で下げる可能性がある。アルゼンチンやトルコの通貨急落をき っかけに新興国市場からの資金逃避が加速しており、投資家は積極的に リスクを取る昨年までの姿勢を修正、肩をすぼめている。

ベイビュー・アセット・マネジメント執行役員の佐久間康郎氏は、 「新興国で一番弱いアルゼンチン・ペソの急落は想定していたが、米国 の長期金利が3%を超え、米緩和策縮小が数回行われてからとみてい た」と言う。その前の表面化は「問題が大きく、脆弱(ぜいじゃく)だ ということ。ウクライナ、ソチ五輪を控えるロシアなども政治、地政学 リスクを抱え、仮需の多い日本株も2月いっぱいは厳しい」とみる。

1月最終週の日経平均は前週末に比べ3.1%安の1万4914円53銭と 4週続落。週初に急落後、トルコ中央銀行が通貨防衛へ利上げに動くな ど政策対応を好感し、29日には403円高とことし最大の上昇となった が、翌日はそれをほぼ帳消しにした。新興国情勢への警戒が強い中、米 連邦準備制度理事会(FRB)が前月に続き債券購入額の縮小を決定、 量的緩和の縮小が投資マネーの収縮につながるとみられた。5週連続安 となれば、2012年4-6月に記録した9週続落以来の長期下落になる。

厳しい経済、財政情勢と外貨準備高の減少を背景にした23日のアル ゼンチン・ペソの急落を震源に、世界の為替や株式市場でリスク資産を 圧縮する動きが活発化した。年初からの新興国通貨スポット価格の対ド ル推移を見ると、アルゼンチン・ペソが19%安で下落率トップ。南アフ リカ・ランドが6.4%、ロシア・ルーブル5.7%、トルコ・リラ5.3%、 ハンガリー・フォリントが5.2%下げている。

引き気味の海外勢、買い旺盛な個人

ドイツ銀行ニューヨークのマネージング・ディレクター、アラン・ ラスキン氏は新興国通貨の目先の回復に懐疑的だ。「通貨安が信用サイ クルを毀損(きそん)し、景気後退に陥った場合は深刻な新興国危機が 生じる」と警戒している。中でも、過去10年で民間の信用が大幅拡大し てきたブラジル・レアル、トルコ・リラのリスクが最も高いとした。

国際通貨基金(IMF)が1月に示した最新の世界経済見通しで は、世界の成長率予想は14年がプラス3.7%、15年が3.9%となり、こと しは前回から0.1ポイント上方修正された。新興市場・途上国地域もプ ラス5.1%、5.4%と13年の4.7%からの伸びを想定。しかし、ブラジル やロシアは下方修正され、新興国全体でも内需の弱さ、金融市場と資本 フローのボラティリティの上昇に懸念を示している。

アルゼンチンなどへの与信という点で縁遠い日本株だが、売買代金 シェアの約6割を海外投資家が占め、昨年は世界でも際立つ5割上昇を した後だけに、ことしに入り海外勢を中心とした持ち高調整の売りにさ らされている。日経平均が300円以上下げた1月20-24日の週の海外勢 の売越額は2330億円と、1年10カ月ぶりの大きさに膨らんだ。

米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが毎月行う世界のファン ドマネジャー調査では、1月の日本株の配分状況はプラス26%と13カ月 連続でオーバーウエート。ただ、前の月からは8ポイント減り、今後1 年間にオーバーウエートしたい市場でも日本はプラス12%と1位のユー ロ(プラス34%)に次ぐものの、前月から10ポイント減少、「バイ・ア ベノミクス」に陰りが見えなくもない。

対照的に昨年の株高で懐が潤い、少額投資非課税制度(NISA) が始動した影響もあり、国内個人投資家の買い意欲は旺盛だ。20-24日 の週の個人は3941億円の買い越しと、日経平均が1日で1143円の暴落局 面があった昨年5月4週以来の大きさを記録。信用取引の買い残は07 年11月以来の高水準に達した。ベイビューの佐久間氏は「個人らの投げ 売りがまだ出てきておらず、『セリング・クライマックス』になってい ない」と、潜在的な売り圧力を指摘した。信用買い方の評価損益率は24 日時点でマイナス3.8%と、前の週のマイナス2.7%から悪化した。

国内決算続く、米統計集中

国内では、主要企業の昨年4-12月期決算の発表が相次いでいる。 2月1週も3日にLIXILグループ、デンソー、三菱UFJフィナン シャル・グループ、4日にトヨタ自動車や日立製作所、パナソニック、 5日に旭化成、武田薬品工業、三菱地所、6日に東レ、大成建設、ソニ ー、7日にクボタ、王子ホールディングスなどが予定する。

為替相場の想定と実勢の乖離(かいり)から、輸出セクターを中心 に今3月期業績計画の上方修正期待は根強いが、ドル・円は一時1ドル =101円台と年初の105円台に比べ円安の勢いが鈍化。好業績評価のムー ドは高まりにくい状況にある。日本銀行の企業短期経済観測調査(短 観)によると、13年度の企業の想定為替レートは1ドル=96円78銭。

質的・量的緩和策の現状維持を決めた22日の政策決定会合後の会見 で、日銀の黒田東彦総裁は「海外経済を中心に、下振れリスクはこれま でより低下してきている」と発言。直後の新興国ショックの発生は皮肉 だった半面、世界市場の混乱が長引けば、一度後退した追加緩和策への 期待が再燃してくる可能性もありそうだ。

仏運用会社コムジェストの日本株ポートフォリオ・マネジャー、リ チャード・ケイ氏は「外国人が左右する相場になると、新興国ショック などリスク資産全体から資金が逃げる要因が強くなる」と指摘。ただ、 日本は政策の刺激があり、「利益の成長と比べ割安の企業も多く、引き 続き日本株をオーバーウエートにしている」と言う。

このほか、相場に影響を与えそうな材料は海外で3日に米供給管理 協会(ISM)製造業景況指数、7日に雇用統計など米国で重要経済統 計の公表が多く、寒波の影響などが一時的だったかどうかを探る上で注 視される。国内では9日に東京都知事選の投開票を控え、原子力発電所 問題などで国政に影響を及ぼす可能性がある点はリスク要因だ。

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