正念場のアベノミクス脅かす二重構造-賃上げ不発なら崩壊も

安倍晋三首相の経済政策「アベノミ クス」の下、日本株は急伸、企業利益も大きく膨らんだ。さらに消費者 の財布のひもを固くしてきたデフレからの脱却に向け、物価も上昇しつ つある。

しかし、トヨタ自動車の工場で車体の塗装検査を担当する期間社員 の男性(28歳)にとっては、こうした変化は何の意味も持たない。年収 約400万円のこの男性は、この先インフレや消費税率引き上げに直面し ても昇給が見込めないという。企業や投資家が恩恵にあずかる一方で、 この男性に限らず多くの勤労者が取り残される可能性がある。

安倍首相は、アベノミクスが機能するためにはトヨタのような企業 の収益増が賃上げにつながらなければならないと主張する。それでも昨 年1-11月の賃金上昇率は平均で0.2%にとどまった。この15年間では 賃金水準は15%低下している。

富士通総研のエコノミスト、マーティン・シュルツ氏は2014年春闘 について、「アベノミクスが軌道に乗るか、それとも崩壊するかを決め るリトマス試験紙だ」と述べ、「所得を増やさずに成長を加速すること など不可能だ」と指摘した。

連合の古賀伸明会長は賃上げが行われずに物価だけが上昇すれば社 会に莫大な損失をもたらすだろうと発言。アベノミクスの副作用のリス クを安倍首相と閣僚らは承知していると指摘した。

トヨタが組合に加入している約6万人の日本人従業員に支払ってい る給与水準は国の平均を約60%上回っている。だが、このトヨタでもこ の15年間のベースアップは小幅にとどまっている。

全体の37%

トヨタの賃上げが進まない理由の1つは他の企業と同じく、正社員 のほかに非正規社員を雇えるという雇用の二重構造があるからだ。日本 の非正規職員・従業員は過去最多の約2000万人に達し、役員を除く雇用 者全体の37%を占める。

日本全体の労働者がインフレに釣り合うだけの賃上げを確保できる かどうかについては懐疑的な見方がある。ブルームバーグのエコノミス ト調査によれば、賃金の目安である現金給与総額は14年度に0.6%増加 すると予想されるが、消費者物価はその5倍の上昇率となる見込み。

トヨタの28歳の期間社員は将来を楽観していない。トヨタ車体で2 年前に働き始めた時はやがて正社員になれると思っていたが、働いてい る工場は昨年正規雇用を取りやめたという。「期間社員の場合は2年11 カ月で終わるので会社からは『さよなら』だ。しょうがないが不安はあ る」。

原題:Abenomics at Risk as Workers Struggle to Keep Up With Inflation(抜粋)

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