円安の輸出押し上げ効果に陰り-海外生産が拡大、国際競争力低下も

円安がもたらす輸出の押し上げ効果 に陰りが出ている。円高局面で進んだ生産拠点の海外移転に伴い円安効 果が表れにくくなっているほか、日本が強みとしていた電子部品や通信 機の輸入が増加していることから日本企業の国際競争力の低下も指摘さ れている。

財務省が27日発表した2013年通年の貿易統計速報によると、輸出は 金額ベースで前年比9.5%増と3年ぶりに増加したものの、数量は 同1.5%減と3年連続で減少した。13年の為替レート(税関長公示レー ト)の平均値は1ドル=96.91円と対前年比22%の円安だった。

一方、輸入はこれまでの最高額に膨らみ、その結果、貿易赤字も過 去最大の11兆4745億円を記録、3年連続の赤字となった。輸入の増加 は、原油価格の高止まりや液化天然ガス(LNG)の需要増が主因だ が、半導体などの電子部品やスマートフォン(多機能携帯電話)を中心 とする通信機の輸入が全体を押し上げた。

バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「電気機器の貿 易黒字の急速な縮小」の影響を特に指摘する。13年の貿易赤字の前年か らの増加分約4.5兆円のうち、鉱物性燃料の赤字拡大分が2.8兆円を占め たが、電気機器の黒字幅の縮小分も1.2兆円に達した。

財務官も務めた、国際通貨基金(IMF)の篠原尚之副専務理事 は24日のインタビューで「円安になると輸出が増えるという、従来の為 替レートと貿易収支の関係が完全に崩れている」と指摘。「数年前まで は日本が輸出していたスマートフォンなどが輸入に転じている」と述 べ、日本企業の競争力の陰りを要因の1つに挙げた。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは27日付リポー トで、円安効果の低下について、輸入要因以外に「電機や通信機器の国 内生産が縮小し、同部門の輸出回復が極めて緩慢なペースにとどまって いる」ことを挙げ、国内生産の撤退で輸入が増えていると指摘した。

国内での投資抑制が影響

こうした背景には、過去の円高局面や景気低迷時に企業が国内投資 を控えてきた影響が指摘されている。景気の好転で増えつつある企業収 益を国際競争力を確保するための投資につなげなければ、安倍政権が描 く脱デフレの道筋にも影響が出かねない。

ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは「長 い円高局面で収益的に苦しい時に研究開発を十分にできず、品質面での 競争力も失った可能性がある」と指摘。日銀の金融緩和政策による円高 是正だけで解決できる問題ではないとし、「企業自身が競争力強化に向 けた意思決定をすべき時だ」とする。

官民の研究・開発態勢強化へ

伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は、日本経済の見通しに関す る27日付リポートで「円高修正にもかかわらず数量ベースの輸出回復が 遅れている背景には輸出産業の国内における投資抑制が影響している」 と指摘。企業の設備投資の拡大が景気を押し上げるだけでなく、輸出拡 大にもつながるとの見方を示している。

甘利明経済再生相は28日の閣議後会見で輸出が足踏みしている背景 について「自動車は回復しているが、家電の足腰がまだ弱い」と懸念を 表明。成長戦略にも示した「科学技術の司令塔機能」の下で、官民の研 究・技術開発を進める態勢づくり急ぐ考えを強調した。

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