円は心地よい水準、下落続けば問題-富国生命投資顧問・桜井氏

円相場はおおむね「心地よい水 準」――。富国生命投資顧問の桜井祐記社長は、年末のドル・円相場は1 ドル=110円未満に落ち着くとみており、より大幅な円安となれば、国 内外で弊害が起きかねないと指摘している。

桜井氏は、「多くの輸出企業と話しても、110円や120円を望んでお らず、今の水準に満足していると言う」と説明。年末の円相場は「108 -109円程度」と予想する。

「アベノミクスが『買い』なら、円は弱くなるのでなく、むしろ強 くなるはずだ」とも指摘。円の下落が続ければ「日本の経常収支にとっ てもよろしくない」とし、米国の輸出を阻害するなど他国に問題をもた らす可能性もあるとみている。

昨年の円は、日本銀行による大規模緩和などを背景に、ドルに対し て約18%下落。年間ベースで34年ぶりの大幅安となり、年明け2日に は2008年10月以来の安値となる105円44銭を付けた。

桜井氏は「例えば日本の緩和がやり過ぎだとか、緩和をいくらして も実体経済に効果がないということに気が付いて、なおかつ日銀が国債 を買い過ぎるということになってきた場合に、悪い円安だって起きる可 能性はある」と語った。

富国生命投資顧問の受託資産残高は昨年3月末時点で1兆8094億 円。桜井氏とのインタビューは23日に行われた。

アベノミクス

昨年の日経平均株価は57%上昇し、1972年以来の大幅高を記録。た だ、買いの主体は年間で過去最大の15兆円超を買い越した海外投資家だ った。

桜井氏は、国内の一部顧客に日本株や日本国債に対して外国債券や 外国株の比率を引き上げる動きが出ているとし、「投資家は日本の債券 市場にはいくらかリスクがあるかもしれないと感じ始めている」と説 明。「もう一つ興味深いのは、人々がアベノミクスをそれほど強く信じ ているわけではないということだ。それが日本株のシェアを引き上げな い理由の一つだ」と言う。

桜井氏は、日本株が今の水準からさらに上昇するには「安倍首相が しっかりした第3の矢を放たなければならないが、我々はまだそれを見 ていない」とし、成長戦略の矢を実際に見るまで「多くの人が日本株に 向かうとは思わない」と話した。

日銀が目指している2%の物価安定目標は、瞬間的に付けることは 可能だが、「最も大事なのは2%のCPI(消費者物価)が続くという こと」で、物価や賃金の持続的な上昇を実現するのは「かなり難しいだ ろう」と、桜井氏はみている。

「マジシャン黒田」

市場では4月の消費増税と合わせて日銀が追加緩和に動くとの観測 もくすぶる。桜井氏は「安倍首相が増税による悪影響はないと言ってい るのに、増税直後に追加緩和すれば、首相が言ったことを否定すること になる」とし、「追加緩和するのであれば、もう少し後の秋や夏の終わ り頃にしなければならないかもしれない」と話した。

その上で、「『マジシャン黒田』は帽子からうさぎでなく、象を出 したため、市場は驚いたが、2回目に帽子からキリンを出しても人々は 驚かないだろう」と指摘。昨年4月の「量的・質的緩和」以降に見られ たような急激な円安は起こらないとの認識を示した。

日本国債については、年末の10年債利回りを0.8%程度と予想。 「特に年後半に金利が上昇するリスクがある」と感じており、日銀によ る国債買い入れがさらに膨らめば、マネタイゼーションとなり、日本国 債の格下げにつながる可能性もあると指摘。そうなれば、GDP(国内 総生産)の2倍を超える日本の公的債務に対する懸念も強まるとし、 「金利が低水準にとどまり続けることには明らかに限界がある」と語っ た。

投資フローは「引き潮」

日銀の黒田東彦総裁は、大量国債購入を柱とする金融緩和の狙いの 一つとして、投資家らの運用資産を株式や外債といったリスク資産にシ フトさせる「ポートフォリオ・リバランス(資産の再構成)効果」を挙 げている。しかし、財務省の対外証券売買契約等の状況によると、13年 の国内投資家による海外証券投資(短期債を除く)は、統計がさかのぼ れる05年以降で初めて売り越しとなった。

桜井氏は、国内投資家の投資フローというのは「外に出たり、国内 に利益を戻したり」と、寄せては返す「引き潮のようなもの」であり、 「気が付いた時には、実際に少しシフトしている」と説明。「機関投資 家のポートフォリオを見たときに、1年では2-3%の変化かもしれな いが、それが5-6年続けば10%の違いになる。日本で起きる変化とい うはこういうものだ」と語った。

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