自動車けん引、国内企業決算はリーマン以降最長の連続増益へ

今週から本格化する国内企業の10 -12月期決算発表では、トヨタ自動車など自動車メーカーの収益拡大が 他の業種にも波及する格好で、リーマン危機以降で最長の成長を達成す る見込みだ。

ブルームバーグの集計によると、TOPIX銘柄の金融を除く企業 の同期純利益は、前年同期比52%の増加となり、合算ベースで5四半期 連続で増益となる見通し。直近4四半期の純利益のそれぞれの前年同期 比での伸びを平均するとおよそ倍増の勢いだ。

世界の自動車メーカーで最大の収益力を持つトヨタは、米国需要の 好調や中国での反日不買運動の沈静化による急回復を背景に、10-12月 期の純利益が前年同期比4倍超になると市場では見込まれている。その 恩恵はパナソニックや日立製作所にも自動車部品の供給を通じて及ぶ。 円高是正やデフレ脱却を訴えて安倍晋三内閣が発足してから1年余り。 昨年の日経平均株価の上昇率は1972年以来最高だった。

野村証券の松浦寿雄シニア・ストラテジストは「こんな長い期間、 持続的に良くなる期間はなかった」と電話インタビューで述べた。「リ スクがないわけではないが、過去数年間に比べると、良い方向に進んで る。リスクが深刻化しない方向に向かってる」という。

野村証は6日付のリポートで、10-12月期の金融を除くRusse ll/Nomura Large Capの経常利益は前年同期比4割 増と予想した。またゴールドマン・サックス証券は25日付のリポート で、東証1部上場企業の同期の経常利益を同22.9%増、金融を除く と35%増と予想した。製造業に限ると68%増になると見込んでいる。

ポジティブ・サプライズ

ゴールドマンの建部和礼ストラテジストは同リポートで、国内外の 良好な経済環境、為替市場での円安などを理由に挙げ、10-12月期決算 では「ポジティブサプライズが優位となり、通期会社計画は個別ではま ちまちながら、全体としては業績上方修正の可能性が高い」とした。

ブルームバーグの集計によると、トヨタやホンダなど自動車メーカ ーの14年3月期の収益は会社側予想よりも拡大するとみるアナリストが 多い。背景としては、アベノミクスの下、昨秋から対ドルで一段と円安 が進行し、輸出採算の改善が続いている。また、世界の主要市場のう ち、米国で販売拡大が続いているほか、エコカー補助金終了による反動 減の影響が昨秋に一巡した日本や、反日デモの影響が昨秋にみられなく なった中国で販売が急回復している。

「円安により、自動車など輸出企業中心に好調な業績が見られるだ ろう」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主任研究 員は電話インタビューで述べた。「先進国の回復の傾向は今年さらに強 まってくると思うので、そういう意味では輸出の環境はさらに改善して いく」という。

上方修正

業界最大手のトヨタは昨年11月に今期純利益見通しを1兆6700億円 に上方修正した。これに対し、アナリスト22人の予想平均は約1兆8600 億円。円相場は昨年10月に対ドルで98円前後の水準だったが、その後は 円安が進行し、今年1月半ばは104円前後で推移した。トヨタが昨年11 月に発表した決算資料によると、今期の為替前提は対ドルで97円、対ユ ーロで130円となっている。29日朝の対ドル相場は103円台前半となって いる。

伊藤忠経済研究所の丸山義正主任研究員は電話インタビューに対し 「円安がスタートポイントとしてあったので、自動車メーカーは輸出の 採算が改善したところで収益を改善することができた」と述べた。「機 械メーカーも当てはまる」という。

2期連続の赤字からの回復を目指すパナソニックにとって自動車関 連は事業変革の柱の一つだ。昨年10月31日の会社発表によると、「現 在、ガソリン車で1台当たり数万円規模のビジネスが、ハイブリッド車 や電気自動車(EV)では、一気に10倍以上に膨らむ可能性」が出てき ているとしている。12年度実績では1兆円だった車載事業の売り上げ で、18年度には2兆円を目指すという。

追加投資

またリチウム電池では10月に米電気自動車メーカー、テスラ・モー ターズと14年からの4年間で約20億個の円筒形電池の供給で合意。パナ ソニックはこうした需要の拡大に応じるため、13年3月末時点で130億 円としていた投資計画に180億円を上乗せした。ブルームバーグ集計に よるアナリスト19人の通期の純利益予想の平均は1139億円。昨年10月に 上方修正された会社予想は1000億円。

冷蔵庫から原子力発電まで手掛ける日立製作所も自動車関連事業に 期待を寄せる。「2015中期経営計画」の実現に向けた事業戦略の資料に よると、12年度実績の売上高8068億円を15年度には1兆円に、営業利益 率も同期間に4.5%から7%に伸ばす計画だ。昨年10月に決算会見の場 で中村豊明副社長は米国や中国からの自動車部品の発注が伸びているこ とを明らかにしている。

ソニーは苦戦か

民生用電機で厳しいとみられているのがソニーだ。ブルームバー グ・ニュースの集計によると、少なくとも8人のアナリストが過去2カ 月内にソニーの年間収益予想を下方修正している。

東洋証券の大塚竜太ストラテジストは電話インタビューに対し「電 機はこのところ価格競争力を失っていて、リストラを一生懸命やってい るところだ」と述べた。「収益の回復具合が見どころだ。足元どうなの か」という。

ゴールドマンの渡辺崇アナリストは17日付リポートで、10-12月期 の営業利益が875億円、通期計画は「1098億円に近い水準まで」の下方 修正を予想。理由はパソコン、スマートフォン、デジカメなどの数量前 提の引き下げだ。ドイツ証券の中根康夫アナリストは、年末商戦が会社 計画に及ばない可能性やVAIO事業などで追加構造改革費用が拠出さ れるとの見方から、通期での営業利益予想を1114億円と予想した。

中根アナリストは「極端に言うと全てのコンシューマー機器がスマ ートフォンとタブレットに収れんしようとしている事業環境に、フルラ インで製品を持つ同社の組織体系、事業戦略の修正が追いついていな い」と先月24日付のリポートで述べた。

「景気回復の実感」

安倍晋三首相は、24日の施政方針演説で「企業の収益を雇用の拡大 や所得の上昇につなげる。それが消費の増加を通じてさらなる景気回復 につながる。経済の好循環なくしてデフレ脱却はありません」と述べ た。規制改革などの成長戦略のほか、復興特別法人税の廃止などの施策 を通じ「景気回復の実感を全国津々浦々にまで、皆さん、届けようでは ありませんか」と訴えた。

4月からは消費税が8%に上がる。東洋証券の大塚ストラテジスト は「消費税増税で4-6月は落ち込むだろうが、景気は落ち込ませるわ けにはいかないので、回復するよう落ち込みを小さくする対策を取って くるだろう」という。伊藤忠経済研究所の丸山主任研究員は消費増税後 の反動減は大きいとみている。「物価が高くなってきてるし、賃金が追 いつかないだろうから、デフレ脱却という楽観はできない」という。

3月本決算企業の10-12月期決算発表のピークは1月31日。1月20 日時点での三菱UFJモルガン・スタンレー証券のまとめによると、東 証1部上場の280社が予定、2月7日には214社が発表する。

--取材協力:. Editors: 宮沢祐介, 谷合謙三

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE