ソニーや日産自動車、ANAホール ディングスなど大企業が出資するベンチャーファンドが28日、出資元企 業との初の月次会合を開催。グローバル市場で競争が激化する中、日本 を代表する企業が技術革新のために動き始めた。

米国のシリコンバレーで長年ベンチャーキャピタル事業を手掛けて きた伊佐山元氏(40)が最高経営責任者(CEO)を務める投資会社 「WiL(ウィル)」が、昨年12月に3億ドル(約310億円)規模の同 ファンドを組成した。今回の会合で投資案件を議論するが、支援先企業 には資金ばかりでなく技術も提供する。伊佐山氏がブルームバーグ・ニ ュースとのインタビューで語った。

起業支援を行うベンチャーエンタープライズセンターによると、日 本でのベンチャー企業への投資と貸し付けは2012年度が1026億円で、07 年度の1933億円からほぼ半減した。今回のファンド資金は12年度実績の 3割にあたる規模。同センターによると、昨年の米国でのベンチャー投 資は267億ドル(約2兆7400億円)だった。

ファンド設立を支援したソニーの元最高経営責任者(CEO)の出 井伸之氏は、大企業はベンチャー企業の育成で重要な役割を果たすこと ができると指摘。日本にはベンチャーを支援する「エンゼル」と呼ばれ る個人投資家はいないが、こうしたファンドを通して大企業が長期的な リスクマネーを提供できると語った。

ウィルは日米にまたがって案件を選定できるのが強みだと、伊佐山 氏は話す。出資元企業は自社に眠る技術を持ち寄り、ウィルの支援する ベンチャーと連携させることもできる。

変化の「触媒」に

伊佐山氏は、同ファンドによって日本の大企業が変わる「触媒」の 役割を果たしたいと語った。同氏は東京大学法学部を卒業後、日本興業 銀行(当時)に入行。スタンフォード大学で経営学修士(MBA)取得 後に米ベンチャーキャピタルのドール・キャピタル・マネジメントに移 籍しベンチャー支援に関わってきた。米国の西海岸を活動の拠点として いるが、日本企業は信用を重視しているとし、ファンドの運用ではとり わけ透明性を保ちながら企業の資源を活用していく考えだと話す。

米国での大企業によるベンチャー育成事例としてグーグル・ベンチ ャーズやインテルキャピタルなどがある。09年に事業を開始したグーグ ル・ベンチャーズは13年に225社に投資し、運用資金は12億ドルに達し た。伊佐山氏のファンドには、新たな成長を求める出資元企業から期待 が寄せられている。

ソニー広報担当の今田真実氏は、同ファンドが進める創業間もない 企業の育成や企業内外の経営資源を組み合わせて価値を創造するオープ ンイノベーションに「ソニーとして共感している」と語った。

ANA広報担当の野村良成氏は「うまくいけば新しい技術や知識が 出てくる。次世代の日本人起業家を育てるプラットフォーム」になると と期待を寄せた。

--取材協力:Chris Cooper、Ma Jie. Editors: 中川寛之, 宮沢祐介

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