【FRBウオッチ】連銀創設100周年襲う「世紀のバブル」崩壊

【記者:山広 恒夫】

1月27日(ブルームバーグ)米国の中央銀行である連邦準備制度理 事会(FRB)は1914年8月10日に創設され、今年100周年を迎える。連 邦準備制度はニューヨーク株式市場暴落に伴う07年金融パニックを教訓 に、危機対応のため準備資金を金融システムに注入する目的で生まれ た。

それまで民間銀行が準備を融通し合っていたが、米経済規模の拡大 とともに民間だけでは対応できなくなり、その名の通り連邦政府が関与 する連邦準備制度が創設された。創設から連邦準備法が改正された35年 までは12の連邦準備銀行(地区連銀)が強い独立性を有しており、その 中でも公開市場操作の要であるニューヨーク連銀が事実上、金融政策を 主導していた。

ニューヨーク連銀のベンジャミン・ストロング初代総裁は米国債の 購入により金融緩和が可能になることに初めて気付いた人物だ。そして 同総裁は20年代に第一次世界大戦後の欧州復興に貢献し、米農産物輸出 を拡大するという旗印の下に金融緩和を続行したため、当時としては史 上最大の株式バブルを生成し、29年の株価大暴落へとつながっていく。

バーナンキFRB議長が雇用拡大の名目で異例の金融大緩和を継続 してきたのと似ている。このように中央銀行が本来の目的である通貨・ 金融市場の安定以外の名目で金融緩和を発動すると、大きな反作用に見 舞われることは歴史が証明しているところだ。特に今回はドルが基軸通 貨の地位を確実なものとしてから生じた史上初の巨大バブルだけに、そ の影響は世界規模で拡散していく。新興国市場の動揺はその巨大バブル 崩壊の予兆にすぎない。バブルはまず弱い輪から崩壊が始まるからであ る。

40年周期

1896年からニューヨーク株式市場の動きを記録してきたダウ工業 株30種平均で振り返ると、およそ40年の周期で3つの巨大バブル生成と その崩壊を繰り返しながら、1段ずつ3度にわたり水準を上げてきたこ とが分かる。そしてそのバブル膨張にはいずれもFRBが深く関わって きた。

今もなお膨張を続ける3段目の巨大バブルにはバーナンキFRB議 長とグリーンスパン前議長の行き過ぎた金融緩和策が深く関与してい る。

第3段のバブルは1982年を起点として、これまで32年間にダウ工業 株30種平均株価指数でなんと約2000%、21倍にも押し上げてきた。この 上昇率は29年の歴史的な株価大暴落へとつながっていく第1段の 約1200%上昇をはるかに上回っている。

米国が最も輝いていた50年代から60年代を中心に形成された20世紀 の第2段バブルは約1000%の上昇と初回のバブルとほぼ一致する。なお 第2段のバブルの頂上は平たんに見えるが、これはインフレに強い株価 が折からの狂乱インフレを反映して値を保ったからだ。インフレを除い た実質ダウ平均で見ると、深く切り込まれている。この狂乱インフレを 伴うバブルも当時のニクソン大統領再選支援を狙ったアーサー・バーン ズ第10代FRB議長による金融緩和の行き過ぎが背景にあった。

第3段は金融バブル

このように時系列でみると、ほぼ40年の周期で3段階にわたってそ れぞれ複数のバブルが生成され、連山を成している。FRBが19年から 集計を開始した製造業生産指数とダウ平均の相関図を見ると、第1段と 第2段は株価と製造業生産指数の伸びがほぼ一致していた。

しかし、80年以降は製造業の成長ペースが減速する一方で、株価が 大きく上方にかい離してきた。これは、現在の大型バブルが金融によっ て大きく膨らんでいることを裏付けている。

さらに、20世紀末から21世紀にかけて生成を繰り返している現在の 大型バブルを詳細にみると、2000年から02年にかけて崩壊したIT(情 報技術)株式バブル、07年から09年かけて崩壊した住宅・金融バブルと いまなお膨張を続ける三つ目の山からなっている。

そして、現在形成中の三つ目の山はバーナンキ議長が主導してきた 大規模資産購入が深く関与してきた。バブルはいずれはじける。1929年 に始まった株価大暴落は32年に底を打ったが、下落率はおよそ90%にも 達していた。今回の第3段バブルの上昇率は29年にかけて膨張した第1 段の2倍近くに達しているだけに、予断は許さない。

危険信号

特に今回のバブルはドルが世界の基軸通貨の座に就いてから生じた 最大のバブルであり、全世界に波及している。金融当局は基軸通貨の座 を最大限に利用して大規模資産購入による金融膨張を繰り返してきてお り、バブルはグローバル規模に膨れ上がってきた。

しかも71年に金本位制が廃止されてからドルは単なるペーパーマネ ーと化してきただけに、FRBによる基軸通貨増刷が引き起こすバブル の破壊力も一段と高まっているはずだ。

FRBは今月末でバーナンキ議長が退任し、イエレン新議長がその 後を引き継ぐ。FRB100年の歴史の中で、初の女性議長となる。イエ レン次期議長は昨年11月に開かれた指名承認のための議会公聴会で、現 下の株価高騰について、「あらゆる指標から判断してバブルではない」 と断言した。しかし、FRB歴代14人の議長のうち誰一人としてバブル 膨張から崩壊を認識できた者はいない。

巧みな比喩

マエストロ(名指揮者)とあがめられたグリーンスパン前議長でさ え、第3段階バブルの初めの山と二つ目の山をバブルと認めることがで きなかった。二つ目の山が形成されている最中の2005年に、「住宅市場 はバブルではなく、小さな泡粒であるフロスにすぎない」と表現してい る。

FRB議長がこうした巧みな比喩を使ってバブルを否定するときこ そ、バブルはそろそろ膨張の限界に差し掛かっているのだ。バーナンキ 議長は昨年3月の記者会見で、株価はバブル化しているのではないかと の質問に対して、「インフレとGDP(国内総生産)の影響を取り除い た実質株価はなお史上最高値まで距離がある」と答え、株式バブル論を 明快に否定していた。

それから9カ月。バーナンキ議長の退任に合わせるかのように、ダ ウ平均は昨年12月末にインフレを除いた実質値でも14年ぶりに史上最高 値を更新した。

(FRBウオッチの内容は記者個人の見解です)

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