電子レンジ大の衛星でおいしいコメ作り-ベンチャーが宇宙開発

日本のベンチャー企業が開発する電 子レンジほどの大きさの超小型人工衛星が、宇宙開発に新たなページを 開こうとしている。従来の衛星よりも安価に作れるため、宇宙からの画 像を利用して渋滞緩和や農業など幅広い分野での利用を狙う。

超小型衛星を開発・生産するのは、2008年に設立されたベンチャー 企業、アクセルスペース(本社・東京)。同社の中村友哉最高経営責任 者(CEO)は「20年5月期までに30基程度は打ち上げたい」と話 す。11月には同社初の衛星となる北極海域の海氷観測衛星 「WNISAT-1」を、ロシアのヤースヌイ宇宙基地(オレンブルク 州)から打ち上げた。北極海を通過する船舶の安全航行に役立てられ る。

超小型衛星は、これまで政府部門が独占していた宇宙空間の民間利 用を促進させる役割を担っている。米国では昨年12月、起業家で大富豪 のイーロン・マスク氏がCEOを務めるスペース・エクスプロレーショ ン・テクノロジーズ(スペースX)が同社初の商用衛星を打ち上げ、米 航空宇宙局(NASA)と16億ドル(約1670億円)に上る契約を結ぶな ど、民間による宇宙開発事業が本格化し始めている。

「宇宙利用はどんどん広がってくる。グローバルにビジネスをやり たい」とアクセルスペースの中村氏は言い、宇宙からの画像を当たり前 に使える「インフラにすることが我々の役目」と述べた。中村氏によれ ば、同社は今年、事業拡張資金としてベンチャーキャピタルから約15億 円を調達する予定で、19年5月期に20億円程度の売り上げを目指してい る。

ライバル

世界にはライバルもいる。米カリフォルニア州に本拠を置くベンチ ャー、スカイボックス・イメージングもその一つだ。スカイボックス社 は先月、最初の小型衛星を打ち上げたばかりだが、ゆくゆくは地球上の 全ての写真や動画が1日に数回、撮影できるようになるサービスを計画 している。

スカイボックスの商品部門責任者のダン・バーケンストック氏によ れば、同社の衛星を使った監視システムは1メートル四方の物体を特定 し、計測する性能を有しており、駐車場の車の数を数えたりすることが できる。同社はすでに9100万ドルの資金をベンチャーキャピタルから調 達した。

「打ち上げ費用の低下と電子機器の性能向上により、最近の宇宙産 業には大変革が起こっている」とバーケンストック氏は話す。これらの 2つの要素が組み合わさったことで、「従来は主に政府機関によって打 ち上げられてきた大きく高価な衛星が行ってきたことが、小さな衛星で も実現できるようになった」という。

プラネット・ラボズ社(カリフォルニア州)も打ち上げ予定の衛 星32基で撮影した画像を誰でも利用できるようにする計画だ。11月26日 の発表によれば、同社のプラットフォームは、商業利用だけでなく、森 林伐採や自然災害などに関する情報も探知できるように設計されてい る。

官から民へ

経済産業省宇宙産業室長の武藤寿彦氏は、これまで独立行政法人・ 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)中心でやってきた日本の宇宙開発 は民間利用という「新しい局面を迎えている」と話す。

政府の宇宙戦略開発本部は昨年1月、宇宙基本計画を策定。「今後 は民間需要や海外需要を取り込むことによって、できる限り政府需要へ の依存度を下げ、産業基盤の維持、強化を図ることが必要」と指摘し た。官邸ホームページによると、安倍晋三首相は昨年4月の宇宙政策委 員会で「本年を宇宙利用元年としたい」とし、宇宙政策を従来の研究開 発重視から「出口を見据えた利用拡大重視」へ転換すると宣言してい る。

アクセルスペースは、宇宙関連の専用部品ではなく、民生用の部品 を使うことで、費用を抑えた。同社の野尻悠太取締役によれば、20年ま でに30基の衛星を打ち上げた場合、1時間に1回程度、写真のデータを 更新し、スマートフォンに送信することも可能になるという。こういっ たリアルタイム性から「新しいサービスが生まれることを期待してい る」と野尻氏は話す。具体的には渋滞の分析や農業分野での使用を想 定。農業分野では、衛星から特殊な写真を撮ることで、コメのタンパク 質の含有量を推定し、品質向上に役立てることが期待できるという。

ワシントン大学のサーディヤ・ペッカネン氏は「打ち上げや電子機 器のコストが下がるにつれて、こんな地球撮影サービスがほしいという 将来ニーズは消費者が決めていくことになるだろう」と予想、「大事な ことは誰がその情報に触れ、それで何ができるかだ」と述べた。

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