廃墟化した日本の公共施設に新たな解決策-地方債を解体財源に

東京から500キロメートル北にある 山形県庄内町。1956年から児童の教育に使われていた清川小学校の校舎 は、現在では廃墟となって放置され、壁や屋根が崩れかけている。学校 を存続するには生徒数が足りないが、町には校舎を撤去する財政的余裕 もないためだ。

清川小学校は1960年代や70年代の高度成長期の遺産として残る、廃 墟となった何千もの日本の老朽化した施設の一つだ。町で住民の高齢化 や都市移住が進んでも、財政難の地方自治体はこのような施設を放置す るしかないため、安倍政権は新たな解決策を思いついた。解体撤去費用 を地方債で賄うというものだ。

三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、 このような現状について「逆回転の象徴」と指摘。「人口が増えている 過程から減っていく過程に入っている。大きな流れとして、一つの時代 が終わって新しく次に地方が生まれ変わることが必要だ。付加価値をつ けられるかはアイディア次第」と述べた。

市町村合併や人口減、歳入減を背景に、日本の市町村数は1999年3 月から1513減少した。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、インフラ 維持には費用がかかるため、「どこかで撤去して損切りする」必要があ ると指摘した。

新たな法案

政府は老朽化した公共施設の解体撤去費用を地方債で賄えるように 現在の法律を改正する法案を、今月召集される通常国会中に提出する計 画だ。現在は新しい施設や建物などへの建て替えという目的がなけれ ば、地方債は発行できない。

庄内町役場の管財係の相馬道哲氏は「措置がないのは苦しい台所か ら金を出さないといけない」ということで、「建物の解体が進んでいな い」と説明した。

総務省自治財政局財務調査課の村田崇課長補佐は、「地方債の特例 は、老朽化対策をどう進めるか、単に借金して壊すだけでなくインフラ の計画的管理を進めることを促すのが目的」と指摘。「人口減や公共施 設の耐用更新の時代。施設の利用・需要も変化が見込まれる」と語っ た。

政府は地方公共団体が使用していない施設の解体撤去費用として来 年度に300億円が必要となると推計している。先月公表された総務省の 調査によると、地方公共団体は昨年9月1日現在で1万2251施設の解体 が必要だと報告。このうち3分の1近くが2年以内に解体撤去が必要だ という。

野村資本市場研究所研究部の江夏あかね主任研究員は、「国も厳し い財政状況の中で、補助金が出せない」と述べ、特例債の「検討の余地 はある」と述べた。

跡地の利用

みずほ証券の石澤卓志チーフ不動産アナリストは、解体撤去後の跡 地の利用について「うまく土地利用できるかは採算次第。撤去して再開 発につなげられるのは関東とか人口集中地区に限られる」と指摘する。

清川小学校の向かい側に住む齋藤満さん(69)は、学校跡地とその 周辺を含めた「清川歴史公園」構想を推進する。「地域に学校がなくな ることは、過疎化に一層の拍車がかかると思いながらも時代の流れと気 持ちを切り替える必要があった。現在は寂れているが、このように歴史 のあるところであるので、『歴史の里清川』としてアドバルーンをあげ て現在に至っている」と述べた。

一方、清川御所皇子神社の神主、正木尚文さんは、学校跡地の将来 について悲観的な見方を示す。「歴史公園構想は構想どおりにはならな いと思う。たとえ作っても地元に住む人間がどんどん減っている。都市 への流れは止まらない」と話した。

原題:Demolition Bonds Spell End for Japan’s Abandoned Buildings (1)(抜粋)

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