薬物まん延が社会むしばむ、HIV感染増-五輪控えたロシア

昨年9月のある肌寒い日の夕方、ロ シアのプーチン大統領が執務するクレムリンの東方約16キロメートルに あるモスクワ郊外のコンクリート製アパートで、オレンジ色のフード付 きシャツを着た若い女性がサーシャ・マゼイさん(33)に近づいてき た。女性はマゼイさんの命を救うことになるかもしれない物品を持って いる。

マゼイさんは、ロシアで240万人に上ると推計される、注射で摂取 する薬物の常習者の一人だ。ロシアは世界で最も速いペースでエイズウ イルス(HIV)感染が広がっている国の一つ。慈善ボランティアの女 性は、感染拡大を防ぐ小さな取り組みの一環として、清潔な注射針やコ ンドームなどを配布している。ブルームバーグ・マーケッツ誌2月号が 報じている。

自家製薬物の一種を常用するマゼイさんはボランティアの女性が配 布する注射器を受け取った。HIVにはまだ感染していないという。た だ、元妻は6週間前にエイズ関連の合併症で死亡した。

「もちろん注射針を共用しているが、友人とだ。彼らを信頼してい る。やめる方法などない。そのことは考えないようにしている」。マゼ イさんはそう語る。

最貧国でさえ抑制が始まっているHIV感染がロシア社会をむしば んでいる。感染拡大は国外に対しては隠蔽(いんぺい)され、政府の対 策は感染を抑制するどころか助長しているとの批判が高まっている。

プーチン大統領は総費用約480億ドル(約5兆円)を投じ、2月7 日に開幕するソチ冬季五輪の準備の最終段階に入り、国際社会でのロシ アの影響力強化を目指している。その陰で、ロシア連邦エイズセンター によれば、HIV感染者は約130万人に達している。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)と米疾病対策予防センター (CDC)によると、世界の主要経済国20カ国のうち、ロシアより HIV感染者数が多いのはインドのみ。インドの人口はロシアの約1 億4300万人のほぼ9倍に上る。

原題:Russian HIV Surge Shows Scourge Sochi Games’ Swagger Can’t Mask(抜粋)

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