【クレジット市場】野村に続け、賃上げの波-物価連動債の出番

日本の金融業界は消費者物価の上昇 に備え始めた。若手社員の給与を引き上げるとともに、物価連動債の買 いを勧めている。

野村ホールディングスと大和証券グループ、オリックスは消費税率 の3ポイント引き上げに備え、若手社員の給与を2-3%引き上げる方 針を明らかにした。債券市場のインフレ予想を示すブレーク・イーブ ン・レートは向こう5年の年間インフレ率1.69%を示唆している。

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)と SMBC日興証券は労働市場の需給引き締まりに伴い、安倍晋三首相の 呼び掛けに応じて賃金を引き上げる企業が増えるとみている。賃金上昇 は物価上昇につながるため、インフレヘッジである物価連動債の需要が 高まるとみられる。日本銀行のデータによれば、企業の間では人材が不 足しているとの意識が高まっている。

SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「マクロで見 ると物価上昇は定着しつつあり、物価が上昇すれば間違いなく物価連動 債へのニーズは高まるだろう」と指摘。政府の賃上げ努力や労働需給の ひっ迫を受けて「賃金は上がりそうで、今年は2-3%まではいかない が、1%弱は上がるだろう」と予想する。

9日の10年物の物価連動債(表面利率0.1%)入札では最低落札価 格が予想を上回った。

若手社員の昇給

オリックスは若手社員の基本給を平均約3%引き上げると発表。井 上亮社長は「オリックスのビジネスモデルから判断すると財産は人であ るため、最低でもマーケットレベルの給料水準を維持する」と説明し た。

野村は昨年11月に、若年層を中心に国内従業員約4000人を対象に給 与水準を2%程度引き上げる計画を発表した。大和も今月、約5000人の 若手社員を対象に給与水準の引き上げを検討していることを明らかにし た。

日銀によれば、人材が過剰だとする企業の割合から不足していると する企業の割合を引いた数字は昨年12月にマイナス10と、2007年12月以 来の大幅なマイナスだった。

RBS証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは7日のリポート で、企業の求人が求職者を上回り始めていると指摘し、今年のトップ推 奨取引に物価連動債の買いを挙げた。

通常3年のギャップ

ただ、全てのアナリストが今年の賃金上昇と物価上昇を予想してい るわけではない。野村証券の尾畑秀一シニアエコノミストによれば、企 業の業績改善から基本給与引き上げまでには通常約3年かかる。同氏は 「2014年は賃金のベースアップはほぼ横ばいで、労働需要の伸びに対し て企業は引き続き非正規労働者の雇用で対応するだろう」と予想。「輸 出関連など業績のいい一部の大企業はベースを引き上げるかもしれない が、中小企業はこれまでも売り上げが増えない中で固定費を下げてきて おり、賃上げに踏み切るのは難しいだろう」と話した。

金融緩和と財政出動、成長戦略を組み合わせた安倍首相の経済政策 アベノミクスは昨年、TOPIXを52%上昇させ円の対ドル相場を18% 下落させた。自国通貨安は輸入物価を通じてインフレ率上昇に寄与す る。

三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、 消費者物価上昇率が「2%に達するかは不透明だが、それは大きな問題 ではない。大事なのはある程度の期間、安定的に物価がプラスで推移 し、実質金利がマイナスになることだ」と指摘。「デフレマインドは払 しょくされつつあり、そういう意味でアベノミクスはうまくいってい る」と述べた。

原題:Nomura Leads Finance Wage Gains as Linkers Bought: Japan Credit(抜粋)

--取材協力:Masaki Kondo、アンディ・シャープ、谷口崇子. Editors: Ken McCallum, Pavel Alpeyev

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