【コラム】ソロス氏、次なる標的は中国のエンロンか-ペセック

資産家のジョージ・ソロス氏は、北 京から熱烈歓迎の招待状が届くと一切期待すべきではないだろう。空売 りの名手として中国巨大危機説を唱えたところなのだから無理もない。

ソロス氏が最初に大国の政府を敵に回したのは、1992年に英ポンド の空売りを仕掛けた時だ。英政府は面目を失い、当時のメージャー政権 は欧州為替相場メカニズム(ERM)からの離脱を余儀なくされた。こ の取引でソロス氏は20億ドル(約2100億円)を手にしたとされる。米国 のサブプライムローン危機でも同氏は相当額をもうけた。アジアで は1997年、マレーシアのマハティール首相(当時)がアジア危機を引き 起こそうとするユダヤの陰謀の首謀者だとして同氏を批判した。

そのソロス氏が今、目をつけているのが中国だ。プロジェクト・シ ンジケート向けの2日の寄稿で、同氏は中国資産を空売りしているかは 明らかにしなかった。しかし同氏が展開した論旨は、習近平国家主席を 喜ばせる内容ではなかった。ソロス氏に言わせれば、世界が直面してい るリスクの最たるものはユーロでも米議会でも日本の資産バブルでもな く、今眼前で実態が明らかになりつつある中国の債務危機なのだ。

「中国の現在の政策には、解決されていない自己矛盾がある。経済 の加熱炉を再稼働させれば、急激な債務拡大にも再点火することにな る。これが持ちこたえられるのはせいぜい2、3年だろう」とソロス氏 は記している。

習主席がソロス氏の警告を無視するとすればそれは怠慢だろう。北 京大学のマイケル・ペティス教授もキニコス・アソシエーツのジム・チ ャノス氏も数年前から同様の警告をしている。シルバークレスト・アセ ット・マネジメントのパトリック・ホバネツ氏は中国の「影の」バラン スシートを不安視する。

中国は外からの警告に従って政策を決めたなどと絶対に認めない が、それでもシャドーバンキングをめぐる政策当局のここ1週間ほどの 動きは注目に値する。例えば、中国国務院が簿外の融資を対象に規定の 強化を命じ、シャドーバンキングに新たな規制を設けたと事情に詳しい 関係者が述べている。

この業界については、真実を表す名前で呼ぶことが必要だと私は考 える。それは中国のエンロンだ。2001年に経営破綻した米ヒューストン のエネルギー会社エンロンの真のビジネスはエネルギーでも商品でもな く、帳簿の操作だった。中国のシャドーバンキングも同じだ。中国政府 はこれを、格付け会社や米財務省の注意を引かずに「加熱炉を再稼働」 させる燃料として使っている。

中国の金融システムは究極のブラックボックスだ。同国のシャドー バンキングの規模は2012年の同国国内総生産(GDP)の69%に相当し たとJPモルガン・チェースは見積もったが、これが極めて控えめな試 算だとの結論には天才でなくとも達する。中国が貿易などのデータをお 化粧させていることを考えると、信用バブルの度合いを隠すために手を 尽くすであろうことは想像に難くない。

ソロス氏は中国について、「2008年の危機を前にした数年間の米国 における金融環境と不気味な類似性がある」と書いている。その上で 「しかし、大きな違いは米国では金融市場が政治を動かすが、中国では 国が銀行と経済の大きな部分を掌握していることだ」と指摘した。

スティーブン・ローチ氏が指摘するように、中国にはスローガンを 掲げればそれで良しと考える傾向がある。経済改革と持続的成長、公的 な説明責任についての崇高な決意表明と、年率7%以上の成長を続ける と習主席が繰り返すことの間には本質的な矛盾がある。両立は不可能 だ。中国が高い成長率を維持する限り、改革は進まず見えないところで 債務が膨らみ続ける。

これまでのところ、中国について空売りを仕掛けて大もうけをした 人はいないが、ソロス氏の警告は絶対的に正しい。高成長を犠牲にせず に過剰投資・債務の経済をサービス業主導の経済に転換できるという中 国の主張には懸念すべき矛盾がある。習主席が今行動しなければ、ソロ ス氏はまた20億ドル、いやそれ以上をもうけるかもしれない(ウィリア ム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Soros May Make Next $2 Billion Off China’s Enron: William Pesek(抜粋)

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