【クレジット市場】フェルドマン氏が警告、歳出削減怠れば財政危機も

モルガン・スタンレーMUFG証券 のロバート・フェルドマンチーフエコノミスト兼債券調査部長は、医 療・年金など社会保障分野の歳出削減を怠ったまま物価や金利の上昇が 進めば、いずれ利払い費の膨張で財政危機につながりかねないと警告す る。国債投資家はすでに来たるべきインフレに備えつつある。

財務省が9日実施した10年物価連動国債の入札では最低落札価格が 市場予想を上回った。ブルームバーグ・ニュースの調査とデータによる と、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは年内に0.84%まで上 昇し、投資家は0.5%の損失を被る計算となる。米バンク・オブ・アメ リカ(BOA)メリルリンチの指数によると、日本国債の投資収益は昨 年まで過去最長の10年連続プラスとなり、少なくとも1986年以降で3回 しか損失は発生していない。

安倍晋三首相は現在5%の消費税率を4月から8%に引き上げる。 来年10月に予定される10%への引き上げは、年内に景気や物価を見極め て判断する方針だ。一方、先月24日に閣議決定した2014年度一般会計予 算案では最大の歳出項目である社会保障関係費を今年度当初予算よ り4.8%、債務償還と利払いに充てる国債費も4.6%増やした。歳出総額 は3.5%増の95.9兆円と過去最大。いずれも3.3%の名目経済成長率見通 しを上回るペースで膨らんだ。

フェルドマン氏は「2-3年以内に歳出抑制を伴う相当しっかりし た財政再建を実行しないと、危機が起きても不思議ではない」と8日の インタビューで述べた。日本銀行の量的・質的金融緩和や経済成長を上 回る速さで増える税収を背景に「当面は長期金利が上がる心配はない」 としながらも、景気回復で物価と金利が徐々に上昇圧力が高まっていっ た時点で財政赤字の削減が進んでいない場合、巨大な累積債務の「利払 い費が膨張し、財政破綻に至る恐れもある」と話した。

「負のスパイラル」も

日銀の統計によると、昨年9月末時点で国債等の92%はホームバイ アス(自国資産選好)が強いとされる国内投資家が保有。しかし、フェ ルドマン氏は国内勢が財政懸念を黙認するとは限らないと指摘。「より 高い利回りを要求するか、国債投資に回っている銀行預金が不動産や海 外資産に流出しても不思議ではない」と語る。金利上昇で国債費が膨張 すれば「予算編成が困難になり、財政懸念がさらに強まる。『負のスパ イラル』に陥ると、誰にも止められなくなる」と警告する。

来年度一般会計予算案の歳入で、税収は景気回復と消費増税を背景 に50兆円と16%増加。新規国債発行額は41.3兆円と08年度以来の水準に 減り、公債依存度も43%に低下した。一方、歳出面では三番目に大きい 地方交付税交付金等は16.1兆円に減るが、社会保障関係費が初めて30兆 円を突破。国債費は総額の24.3%に当たる23.3兆円に膨らんだ。

逃げずに歳出削減を

この結果、予算総額から国債費を除いた基礎的財政収支(プライマ リーバランス、PB)の赤字は政府目標の4兆円減を上回り、過去二番 目となる5.2兆円縮小する。ただ、PB対象経費は72.6兆円と3.2%増え た。国際公約でもある15年度のPB赤字半減は軌道に乗っているが、20 年度の黒字化については内閣府も道筋を示せていない。フェルドマン氏 は社会保障関係費が12年度に国・地方の連結ベースで125兆円に達した と推計。「逃げずに歳出削減を推進すべきだ」と主張する。

政府が来年度に入札を通じて機関投資家に販売する国債の市中発行 額は155.1兆円と6年ぶりに前年度を下回るが、借換債が膨らむため、 国債発行総額は過去最大の181.5兆円となる。国・地方を合わせた長期 債務残高は14年度末に1010兆円に膨らむ。国際通貨基金(IMF)は政 府債務残高の対国内総生産(GDP)比が昨年末に243.5%に達し、今 年末は242.3%と高止まりすると予測。09年から少なくとも18年までは 世界最悪の座を抜け出せないとみている。

世界最大の資産運用会社である米ブラックロックの米州債券担当共 同責任者、リック・リーダー氏は8日、ブルームバーグテレビジョンと のインタビューで「投資家は今や、日本に賭けている」と指摘。「良い 投資だが、注視する必要もある」と続けた。

増税3割、歳出削減7割が理想

フェルドマン氏は、①財政赤字の削減を何割の増税と何割の歳出削 減で実施するか②社会保障関係費とその他の歳出構造をどうするか-の 2点を国民的な議論を通じて決める必要があると主張。「歳出を抑制で きず、増税だけに頼るのは最悪の組み合わせだ」と言う。「本来は増税 を3割に抑えて歳出削減を7割とすべきだが、日本の現状では増税と歳 出削減を半分ずつにするのが妥当だろう」と見る。

PB黒字に転換して公的債務の対GDP比の悪化に歯止めをかける という最低限の財政健全化を図るために、増税3に対して歳出削減7だ と、65歳以上の高齢者1人当たりの社会保障支出額が12年から20年まで に物価変動を除いて4割も減ると推計。5対5にすれば、消費税率を20 年までに16.7%に引き上げる必要があるものの、1人当たり社会保障支 出額は実質26.9%減で済むと言う。

この場合はモルガン・スタンレーMUFG証の試算によると、PB 収支の対GDP比は12年のマイナス10.3%から20年には1.8%の黒字に 転じ、財政赤字は11.2%から2.4%に縮小。歳入はGDPの31.6%か ら37.9%へ上昇する一方、歳出は42.8%から40.3%に低下する。1人当 たりの社会保障支出額は約310万円から250万円程度に減る見通しだ。

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