インドで貧困層狙う預金詐欺、174万人に被害-違法業者急増

ヒマラヤ山脈が見えるインド北部ソ ナマルグのリゾートホテル、スノーランド。インド警察は昨年4月23 日、逃亡中のスディプタ・セン容疑者をこのホテルで逮捕した。ホテル は同容疑者の企業拠点があるコルカタから約2700キロメートル北西に位 置する。

サラダ・レアルティ・インディアは、セン容疑者率いる「帝国」の 中心的存在だった。小口預金を引き受け顧客に土地やアパートなどの不 動産で支払うか、最高24%の利息付きで返金を約束していたが、数千件 の取引が支払い不履行に陥った。同容疑者が経営するメディア企業の従 業員はここ数カ月間給与を受け取っていない。現金は底を付き、174万 人の顧客の預金が消失した。ブルームバーグ・マーケッツ誌2月号が報 じている。

混乱はサラダだけで終わらなかった。パニックに陥った預金者は、 預金を引き出そうと同様の業者に殺到。自殺者は昨年4月以来34人以上 に上り、そのうち13人はサラダの代行業者や投資家だった。コルカタ南 部のバーウイプールに住む50歳の家政婦は3万ルピー(約5万円)を失 った後、焼身自殺した。

サラダ・レアルティの親会社であるサラダ・グループは、インドの 貧困層を顧客とし、規制の網をかいくぐる数百社に上る無免許の預金受 け入れ業者の一つだ。

顧客の中には毎月わずか100ルピーをかき集めて預金する者もい た。世界銀行のグローバル・ファイナンシャル・インクルージョン・デ ータベースによると、インドでは2011年時点で成人の35%しか銀行口座 を持っておらず、公式のルートを通して借金する人は8%に過ぎない。

ヤギ農家に偽装

インド当局はこのような金融業者に州・連邦当局への登録を義務付 けているが、多くはそれに従っていない。サラダなどの業者は自らを不 動産開発業者やヤギ農家などと偽って規制を回避していると、資本市場 の監督当局であるインド証券取引委員会(SEBI)のシンハ委員長は 指摘する。

サラダ・グループの会長兼マネジングディレクターであるセン容疑 者は、所有企業は160社に上ると話していた。だが、同容疑者の弁護 士、サミール・ダス氏によると、このうち実体があったのは15社程度だ という。

インドでは違法な預金受け入れ業者が急増している。SEBIのシ ンハ委員長によれば、サラダは暫定推計で少なくとも2億ドル(約210 億円)の預金を集めていた。実際の数字はこれより大きい可能性がある という。同委員長はサラダのような業者が合計で20億ドル以上集めたと 推計している。

「津波のような大損害」

セン容疑者は逮捕以来拘留されている。西ベンガル警察の犯罪捜査 部門幹部のシバジ・ゴーシュ氏は昨年12月半ば、サラダ関連の全訴訟を 取り扱う特別法廷が設置されるとの見通しを示した。

サラダの破綻で注目すべきなのは、銀行へのアクセスが限られるイ ンド東部6州で混乱が広がったことだ。

預金者は抗議し、群れを成して代行業者に詰め寄った。シーショ ア・グループという別の未登録の預金業者に勤務していたアビマニュ ー・ナヤックさんは昨年5月、返金を求める投資家に追いかけられ、列 車に飛び込み自殺した。

サラダ事件とその余波であまりにも多くの被害者が出たため、政府 は介入を余儀なくされたと、1992-2006年にSEBIのエグゼクティブ ディレクターを務めたプラティップ・カー氏が解説する。同氏は現在、 世銀のコンサルタントを務める。

カー氏は「サラダのようなねずみ講は津波のように広範な大損害を もたらしている。小売店主やホームヘルパーらがわずかばかりの貯金を 奪われるのは痛ましいことだ」と話した。

根絶期待できず

サラダ事件を受けSEBIの権限が見直された。SEBIは15社を 閉鎖し、経営者を資本市場から締め出した。シンハ委員長の話では、こ のほか20社を調査中だという。

だが、これはインドの詐欺的な資金集めビジネスのほんの一部にす ぎないと、調査会社プライム・データベース(ニューデリー)のプリス ビ・ハルディア会長は指摘する。「数えきれないほどの様々な規模や形 態の詐欺が現在横行している。サラダ事件を受け新法が施行されたのは 良いことだが、全ての詐欺を取り締まる方向に進むかといえば、答えは ノーだ」と述べた。

原題:India Savings Deposit Scam Collapse Leaves Thousands Penniless(抜粋)

--取材協力:Pradipta Mukherjee. Editors: Gail Roche, Jonathan Neumann

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