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中国の習国家主席の頭にテストステロンが回った-ペセック

中国共産党の第18期中央委員会第3 回総会(3中総会)を経て異例の改革者として浮上した習近平国家主席 だが、3中総会後最初に打ち出した外交政策は日本に一発お見舞いする ことだった。

中国が領有権を主張する尖閣諸島(中国名、魚釣島)周辺に「防空 識別圏」を設定する行為は、日本を挑発するためとしか思えない。識別 圏の発表は、共産党が国家安全委員会の創設を決めた2週間後だった。 国内外を対象とする安全保障政策を調整する同委員会がアジアの冷戦深 刻化の前触れではないかとの政治評論家らの心配は、全く的外れという わけではなかった。

中国国営メディアはそのような委員会の設置に何も驚くべきところ はないと論じる。米国にもロシアにもあるし、日本でも創設検討の話が 出ている。さらに、新華社通信は22日に「中国は世界の平和と安全保障 を安定化させる源であり、新たな委員会はこの安定化の能力を保証する ものだ。それによって世界全体に恩恵をもたらすだろう」と解説した。

日本の小野寺五典防衛相は、そんなことを信じないだろう。同相 は、防空識別圏を航空機が事前連絡なく飛行すれば軍が「国防上の緊急 措置」を取る可能性があると警告する中国側の意図を読み解こうと必死 だ。あるいは韓国の金寛鎮国防相はどうか。中国の防空識別圏は韓国の 済州島沖を含んでいる。米国のヘーゲル国防長官は非武装のB-52爆撃 機2機を中国の防空識別圏に飛ばせた。日中韓の3カ国を来週訪れるバ イデン米副大統領を激しい応酬が待ち受けていることは間違いない。

中国の行動は、平和的で高潔な世界の大国と自賛する同国の自画像 と矛盾する。尖閣諸島上空でほんのわずかでも事故や計算違いが起きれ ば、あっという間に手に負えない事態に発展し得る。米国も紛争に巻き 込まれ、世界経済は大打撃を受けるだろう。安定化させるどころか中国 は挑発している。

テストステロン

習主席の頭に政治的テストステロン(男性ホルモン)が回ったとし か思えない。3中総会の後、故鄧小平氏以来で最も強力な中国指導者と の立場を固めた習主席は今、改革に反対する勢力のほか、公害や所得不 平等、権力の腐敗に不満を持つ国民の目をそれぞれそらせるために日本 との対立のリスクを冒すのを辞さないようだ。日本たたきほど、13億人 の中国の民を一致団結させるものはない。

北東アジア不安定化の元凶はもちろん、中国だけではない。日本の 安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領にも非はある。中国をひどく怒らせ たのは尖閣諸島を国有化するという2012年9月の日本の安易な決定だっ た。尖閣諸島の土地買い取りは日本政府にとって史上最悪の高コスト投 資になるかもしれない。

安倍首相は第2次世界大戦における日本の役割を認めたがらない修 正主義者であるし、平和憲法を改正したがっている。朴大統領は重要な 2国間関係を脅かしてでも日本には罪があると吹聴し、国内で点数を稼 ごうとしている。

日中韓にとどまらない

しかし何よりも危険なのは中国の行動だ。3中総会で繰り返された 改革と開放の精神にも反する。防空識別圏は日本と韓国ばかりではな く、ブルネイやインドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾をも懸念 させる。いずれも中国との間に領土問題を抱えている。中国の学者グル ープは沖縄も日本の領土ではないと論じた。

習主席がどんなに強力になろうと、今回のような行動によって中国 の「ソフト・パワー(軍事力ではなく、価値観や体制への共感などによ って他国を味方に付ける国の力)」は高まらない。中国は既に、台風で ひどい被害を受けたフィリピンへの援助額が10万ドル(約1020万円)と いうケチぶりで国際社会で面目を失っている。金額は後に160万ドルに 引き上げられたが、危険な挑発政策は、中国が米国離れを促したいアジ ア諸国に逆に中国から離れていく方向に向かわせるだろう。

バイデン副大統領はこの機会を生かし、オバマ政権のアジア重視政 策を前進させるべきだ。東京では安倍首相に、もっと見識を持ち合わせ た日本としてのアジア関与を迫り、ソウルでは朴大統領に貿易や環境、 北朝鮮問題、急速な高齢化という共通課題で安倍首相と協力するよう促 す。また、日中韓の首脳会談を定期的に開くよう米国が働き掛けること も有用だ。顔を合わせて話すことで関係強化に弾みが付く。

しかし、バイデン副大統領が最も強く迫るべき相手は中国指導者だ ろう。中国は、世界に対する野心は平和的であり、戦争は同国のDNA にないものだと主張する。素晴らしいことだ。内政に関する各国の主権 を相互に尊重し合うべきだと中国は言う。結構なことだ。「中国文化を 世界に広めたい」というのも良いことだ。どの言葉も美しく響くが、中 国の最近の行動はその言葉に信頼性を与えるものではない。(ウィリア ム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:China’s Xi Is Pumped Up on Political Testosterone: William Pesek(抜粋)

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