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【クレジット市場】GPIFの売りもしのぐ黒田緩和、国債市場を支配

世界最大の年金基金である年金積立 金管理運用独立行政法人(GPIF)が資産構成の変更で国債の売却に 動いたとしても、日本銀行の黒田東彦総裁が推進する巨額の国債買い入 れが難なく吸収してしまう-。市場関係者はGPIFが10兆円規模の国 債残高圧縮を徐々に進めても、国債市場は揺るがないと見込んでいる。

121兆円に上る運用資産の6割を国内債で保有するGPIFの資産 構成の変更をめぐっては、市場関係者からさまざまな見方が出ている。 メリルリンチ日本証券はGPIFが国内債を将来的に47%まで減らし、 最大18兆円の残高圧縮を図ると予想。RBS証券はGPIFが資産配分 比率を定めた「基本ポートフォリオ」を来年に大きく見直し、国内債 を45%まで徐々に削減する可能性があると読む。クレディ・アグリコル 証券は国内債の比率を2-3年で5割に引き下げるべきだと説く。

クレディ・スイス証券の宮坂知宏債券調査部長は、GPIFが国債 を売っても日銀の買い入れオペで「スムーズに買われていくので、金利 が上昇することはない」と分析。長期金利の指標となる新発10年物国債 利回りは今年度末に0.6%と低位安定を予想する。

GPIFは4-6月期に国内債の運用で1兆円近い損失を出した。 公的・準公的資金の運用などを見直す政府の有識者会議は20日、国内債 に偏った資産構成の見直しやデフレ脱却を前提とした金利リスク管理、 新たなリスク資産への投資などを提言した。

日銀は2%の物価目標を2年程度で達成するため、4月に「量的・ 質的金融緩和」を導入。長期国債買い入れオペ(公開市場操作)は月7 兆円程度に及び、購入ペースは今年度の国債発行総額170.5兆円の約半 分に上る。

日銀、ゆうちょ銀に次ぐ大きさ

GPIFは国債の保有額や運用資産に占める割合を公表していな い。日銀の統計によると、6月末の国債・財融債・国庫短期証券の発行 残高969兆円のうち、GPIFが大半を占める「公的年金」は69兆円で 全体の7.1%だった。日銀の国債保有額は20日時点で180.9兆円、ゆうち ょ銀行は6月末に137.9兆円。GPIFは民間の生命保険会社を大幅に 上回り、3番目に大きい国債保有機関とみられている。

政府の有識者会議は甘利明経済再生担当相に提出した最終報告書 で、GPIFなどがREIT(不動産投資信託)や不動産、インフラ、 プライベートエクイティ(PE)、商品などへの分散投資を検討すべき だと主張。物価連動債への資金配分も課題に挙げた。

同会議の座長を務める伊藤隆敏東大大学院教授は20日の記者会見 で、政府・日銀が2%の物価目標の達成を目指す中、金利上昇に弱い資 産構成を変えないと「危険だ。国内債の比率は高過ぎる」と指摘。 GPIFが上下8%ポイントの乖離(かいり)許容幅を活用して52%程 度まで「直ちに下げても違反にはならない」と強調した。

国内債「35%」案も

みずほ証券の三浦哲也チーフ債券ストラテジストは「リスク資産を 増やして分散投資の色彩を強めるのは方向性として正しい」と評価。安 倍晋三内閣が掲げる「成長戦略の一環に組み込まれている」との見方を 示した。岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、初期段階では 償還などを利用して国内債の割合を50%程度に下げると読む。

GPIFは6月、基本ポートフォリオを2006年度の同法人設立から 初めて変更。国内債を67%から60%に引き下げる一方、国内株式は11% から12%に、外国債券も8%から11%に、外国株式は9%から12%に増 やした。目標からの%乖離許容幅は据え置いた。6月末の実績は国内 債59.87%、国内株15.73%、外債10.03%、外株12.90%。

基本ポートフォリオの見直しは通常、政府が5年に1度行う公的年 金制度の財政検証に基づく。前回の財政検証は09年度。三谷隆博理事長 は6月、市場環境の激変などがない限り、15年3月まで基本ポートフォ リオを据え置く方針を示した。しかし、25日付の日本経済新聞による と、伊藤教授は22日のテレビ番組で、1-2年後に国内債を35%に減ら し、国内株と外債、外株を20%ずつに増やすべきだと述べた。

低い支給率、貧困リスク

RBS証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは、基本ポートフ ォリオの変更は「本来は財政検証とセットだが、来年半ば頃に具体案が 示されても驚かない」と指摘。伊藤教授が52%でも違反ではないと言う からには「45-50%程度まで下げるのではないか」と読む。

経済協力開発機構(OECD)が26日公表した各国の年金制度に関 する年次報告書によると、日本では平均賃金で退職まで働いた場合、公 的年金制度が支給する所得代替率は平均所得の35.6%。OECD諸国で 3番目に低い。65歳以上で貧困のリスクを抱える割合(相対的貧困率) は19.4%とOECD平均の12.8%を上回る。報告書は「退職後所得の水 準は将来の高齢者にとっての課題となるかもしれない」と指摘する。

ただ、厚生労働省年金局は、インフレ率に応じて年金支給額を自動 的に調整する「マクロ経済スライド」がまだ発動されていないため、現 時点の所得代替率はOECDの試算より7%ポイント程度高いと推計し ている。

公的・準公的資金は11年度末時点で、GPIFが114兆円、国家公 務員共済が8兆円、地方公務員共済が36兆円、私学共済が3兆円、 GPIFを除くその他の独立行政法人等が55兆円など。運用見直しは安 倍首相が進める経済政策「アベノミクス」の経済再生戦略の一環だ。

【10年債利回り3月末の予測値、将来のGPIF国内債比率】
メリルリンチ日本証・藤田昇悟氏             0.70%   47%
バークレイズ証・丹治倫敦氏                 0.95%   44%
クレディ・アグリコル証・尾形和彦氏        0.75%   50%
クレディ・スイス証・宮坂知宏氏             0.60%   n/a
ドイツ証・山下周氏                         0.60%   n/a
JPモルガン証・山脇貴史氏                 0.60%   52%
みずほ証・三浦哲也氏                       0.75%   n/a
岡三証・鈴木誠氏                           0.85%   50%
RBS証・福永顕人氏                       0.95%   45-50%
三井住友銀・宇野大介氏                     0.70%   n/a

平均                                      0.745%
*調査期間は11月22日-25日

--取材協力:池田祐美、近藤雅岐、Kevin Buckland. Editors: 崎 浜秀磨、 山中英典、青木勝

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