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「深紅の潮」復活させたレジェンドの息子-資金操る司令塔

米アラバマ大学は今年2月、アメフ トの新たなトレーニングセンターを開設した。その施設の豪華さはプロ のアメフトチームもうらやむに違いないほどだ。900万ドル(約9 億1400万円)を費やしたウエートトレーニングルーム、高級リゾート施 設「クラブメッド」のように豊富な温水が流れ落ちる温水療法プール、 さらにNASA(米航空宇宙局)の訓練施設を想起させる反重力ランニ ングマシンまで備えている。ヘッドコーチのニック・セイバン氏は212 席を有するシアターでマルチプレックスサイズのスクリーンを使い選手 と試合の細部まで検討する。練習後、選手らは思い思いにプールに飛び 込んだり、レザーのソファーでのんびりとビデオゲームを楽しむ。ブル ームバーグ・マーケッツ誌1月号が報じた。

40年前、名ヘッドコーチとして「クリムゾンタイド(深紅の潮)」 と呼ばれる同大アメフトチームを栄光へと導いた故ポール・「ベア」・ ブライアント氏がこの豪華な設備を見たとしたら、訳が分からず戸惑う ばかりだろう。しかしセイバン氏が率いるチームはこの4年間で3回、 ボウル・チャンピオンシップ・シリーズ(BCS)の全米王者となり、 今年も11月23日現在、無敗のまま突っ走っている。昨年のBCS全米王 者決定戦ではアラバマ大の地元ファンが応援の掛け声である「ロール・ タイド・ロール」を絶叫する中、同大はノートルダム大を42対14で撃破 した。

リトルベア

伝説的名コーチだったポール・ベア・ブライアント氏はトレーニン グセンターの機械は分からないかもしれないが、タスカルーサにあるア ラバマ大のスタジアムの10万1821席の1つに座る白髪交じりの寡黙な男 性を見間違うはずはない。この男性こそ、ブライアント氏の息子でかつ て「リトルベア」と呼ばれたポール・ブライアント・ジュニア氏だ。ポ ール・ジュニア氏は2002年、同チームのために自ら先頭を切って1000万 ドルを寄付し、巨額の資金調達を指揮したクオーターバック(司令塔) だ。これがアラバマ大アメフトチームの復活を支えることとなった。

試合中、トレードマークの千鳥格子の帽子をかぶり、サイドライン 付近をのそのそと歩いていた同氏の父親が若きアメリカのたくましい個 人主義を体現したのと同じく、68歳となったビジネス界の実力者で、ア ラバマ大理事会の理事長を務める息子はアメフトの新世代の商業主義の 波に乗って数千万ドルを集めてきた。

巨額のテレビ放映権によってカレッジフットボールは金のなる木に なる見込みだ。アラバマ大が首位に立つサウスイースタン・カンファレ ンスはスポーツ専門ケーブルテレビ(CATV)局ESPNと提携し て14年にSECネットワークを創設する予定。スポーツビジネス・コン サルタント、ジョン・マンセル氏はSECの放送権収入は50%増加し、 年間3億ドル強になると見込む。

富築く

チームを全米王者に6回導いて名声を得た父とは対照的に、ポー ル・ジュニア氏は表立った行動はしない。同氏がどのように富を蓄えた のかはこれまでほとんど報じられていない。財を成したきっかけは1977 年のグレイハウンドを用いたドッグレースだ。1993年には同氏の保有す るトラックコースの1つであるテキサス州の競技場で同レースとしては 過去最高となる2億6800万ドルを稼いだ。その後、ナマズの養殖や銀行 業にも進出。2011年にはセメント事業をメキシコのセメックスに3 億5000万ドルで売却した。また、同氏が長く手掛ける事業の1つが再保 険だ。

ポール・ジュニア氏の頭の中は再保険事業のことでいっぱいかもし れないが、その心はフットボール競技場にある。同氏と親交があり、今 年3月に73歳で死去したアラバマ大の体育局長、マル・ムーア氏との思 い出を語りながらポール・ジュニア氏は涙を浮かべた。同氏が同大理事 会に加わった2000年、寮はみすぼらしく、建物は老朽化していた。名門 のアメフトチームもこの年の成績は3勝8敗と不振だった。そこで立ち 上がったのがポール・ジュニア氏とムーア氏だった。両氏は運動施設と スタジアムの改修に充てる費用として5000万ドルの調達キャンペーンを 開始。同大によると、最終的に7000万ドルが集まった。

ポール・ジュニア氏は自分の過去を振り返り、父と同じ道をたどれ なかったことを今も悔やんでいると語る。「コーチをしてみたかっ た」。だが、カレッジスポーツの新たな時代にアラバマ大チームが成功 できたのは同氏とセイバン氏のおかげだと誰もが認めている。ポール・ ジュニア氏はコーチにはならなかったが、資金に関する作戦指令伝達を 担うクォーターバックだったのだ。

原題:Alabama Football Dominance Powered by Bear Bryant Son’s Fortune(抜粋)

--取材協力:Michael Buteau. Editors: Anita Sharpe, Michael Serrill

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