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【コラム】ゴールドマンだって損をすることはある-レビーン

ゴールドマン・サックス・グループ が外国為替取引で10億ドル(約1010億円)の損失を被ったという先週の 報道は、実は2つの別の話だった。米紙ウォールストリート・ジャーナ ル(WSJ)は「米ドルと円に関する複雑なオプション取引」が損失に つながったとし、ロイター通信は「問題は新興市場でのポジションから 生じた」と報じた。とはいえ、この2つに整合性がないわけではない。 1四半期に10億ドルの損をする方法はいくらでもある。

次に考えるべき点は「これが何かの先触れなのか、それとも、時に は取引で失敗することもある、というだけのことなのか」という点だ。 WSJの記事でゴールドマンのハービー・シュワルツ最高財務責任者 (CFO)は「1四半期だけのことだ」と言っている。しかし一方で、 債券・通貨・商品(FICC)トレーディング事業に大きな変化が起こ っているのではないかと考えてみることも有用だ。インベントリー減少 や電子取引の増加などを受け、銀行が高いマージンを求めて高リスク取 引に走っていることも考えられる。為替レートを「操作」して外為事業 で利益を出すわけにはいかないのだから、収入の水準を保つためにはリ スクの高いオプション取引に手を出さざるを得ないのではないか。

もう一つ考えるべきことは、ボルカー・ルールだ。これは銀行が自 己勘定でトレーディング事業を行い大損をするのを防ぐための規則だ が、ゴールドマンの取引はまさに自己勘定のトレーディングだったよう にみえる。

ただ、報道によればこれは合法的なマーケットメーク(値付け業 務)だったようだ。ゴールドマンのFICC業務は他社に比べ、複雑な 取引を求めるヘッジファンドなどを相手としたものが多い傾向があると WSJ紙は報じている。しかし、これらの複雑な取引は、顧客が求める よりゴールドマンが売り込む場合の方が多い。エキゾチックオプション のトレーダーは待ちの姿勢を取らない。デリバティブ(金融派生商品) のマーケットメークの仕事では、銀行側が顧客と自身の双方が求めるよ うな商品を設計する。顧客には顧客が望むエクスポージャーを与え、自 分は自分が求めるエクスポージャーを得られるようにする。

お望みのポジションでも

何らかのポジションを持たなければならないのだから、自分の望む ポジションを組んだ方がいい。ポジションの前提となる予想は「ドルが 円に対して上がる」かもしれないし、「ドル・円のボラティリティが高 まる」であるかもしれない。どんなものであっても、読みが外れる可能 性は常にあり、その場合は損をする。それがこの世の道理だ。

要はマーケットメークをすれば、大きな損失につながりかねないポ ジションが組まれる。ここでのリスクをなくすには、これらのポジショ ンに対して銀行が完全にヘッジすることだが、それは難しい。明瞭な解 決策というのはあまりなさそうだ。ボルカー・ルールは銀行に損をする のを回避させるためのものだが、銀行は既に、自分が損をしないように 努力している。それでもたまにはうまくいかないことがある。

ゴールドマンは否定

さて、ゴールドマンは損失報道の後に、「第3四半期に為替事業で 損失を出してはいない」とのコメントを出した。確かに、円の取引と新 興市場のポジションで出た損失を、他の通貨取引からの利益が十二分に 補ったということはあり得る。

ゴールドマンがドル上昇を見込んだポジションを取っていたことを 示唆している点で、WSJ紙とロイターの話に矛盾はない。WSJには 「円は過去1年、対ドルで下げていた。が、この夏に円安は止まった」 とのくだりがあるし、ロイターはゴールドマンの米金融緩和縮小の読み が外れた状況を報じている。そして、取引相手はゴールドマンを負かし たことを知ってもらうのが楽しくてメディアに情報を漏らしたのかもし れない。あるいは、JPモルガン・チェースの「ロンドンの鯨」の取引 と同じで、報じられることでゴールドマンにポジション解消を急がざる を得ないように仕向けたのかもしれない。(マット・レビーン)

(マット・レビーン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストで す)

原題:Sometimes Goldman Sachs Will Lose Some Money: Matt Levine (1)(抜粋)

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