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【クレジット市場】債券弱気派が相次ぎ白旗、黒田緩和で「プラチナ化」

長期金利が来年1%を超えると見込 んでいた債券弱気派は、予測値の引き下げを余儀なくされている。物価 上昇率が2%目標の半分にも届かない中、日本銀行は巨額の国債買い入 れを来年さらに増額するとの見方が広がっていることが背景にある。

ブルームバーグの調査によると、市場関係者は来年末の10年物国債 利回りを0.94%(加重平均)と見込んでいる。7月時点での予想 は1.2%だった。新発10年物国債利回りは21日に0.625%。同年限の米国 債は2.8%前後で、量的緩和政策の縮小観測を背景に先月末から上昇傾 向にある。

日銀が物価目標を2年程度で達成するため、「量的・質的金融緩 和」を導入してから約7カ月半。日本経済はデフレを脱却しつつある が、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は9月分が前年比0.7% 上昇にとどまる。黒田東彦総裁は21日の記者会見で、リスクが顕在化す れば政策対応をためらわない姿勢を示した。

伊藤忠経済研究所の丸山義正主任研究員は、来年末の10年債利回り を7月時点では1.80%と最も高く予測していたが、その後半分以下 の0.80%に引き下げた。「米量的緩和の早期縮小観測が後退した上、日 銀による国債市場のコントロールが予想以上に効果を上げている」と説 明する。

金利見通し引き下げ

ブルームバーグ・ニュースの調査によると、丸山氏を含むエコノミ ストら37人中26人が、来年4月に消費増税が実施されてから半年以内に 日銀が追加緩和に踏み切ると予想。丸山氏は「日銀の経済・物価見通し はやや楽観的で、消費増税後の景気下押し圧力は日銀が見込んでいるよ り強い」とも分析し、物価目標の達成に向けて「消費増税後に追加緩和 に動く可能性がある」と読む。

ブルームバーグのデータによると、クレディ・アグリコル証券も10 年債利回り予想を7月時点の1.40%から0.75%に、RBS証券は1.60% から1.30%に引き下げた。

日銀は4月、金融機関への資金供給量を示すマネタリーベースや長 期国債保有額を2年で2倍に増やすことを目指し、月7兆円強の長期国 債を買い入れる量的・質的緩和を導入。イールドカーブ(利回り曲線) 全体の低下を促すため、残存期間が最長の40年債も対象に加え、買い入 れの平均残存期間を3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に伸 ばした。購入規模は今年度の国債発行総額170.5兆円の約半分に上る。

10年債利回りは日銀緩和導入の翌日の4月5日に0.315%と過去最 低を記録した後、5月23日には1年1カ月ぶりに1%まで急騰。日銀が 国債買い入れオペ(公開市場操作)を「より頻繁、より少額ずつ」に改 めたのを受け、相場変動率(ボラティリティ)とともに徐々に低下し、 今月8日には0.58%と5月7日以来の低水準を付けた。償還までの年限 が最も長い40年債も1.72%前後と、日銀の物価目標を下回っている。

国債「プラチナ化」

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「景気刺激策の 総動員で円安・株高と景気回復が進むが、長期金利はむしろ低下する」 と読む。日銀の巨額購入に対し、「大手邦銀が年間40兆円ペースで国債 残高を圧縮し続ければ、2年程度で売り物が枯渇する」と指摘。生命保 険会社や年金基金がにわかに売り越しに転じるとは考えにくく、「誰も 売らない国債は『プラチナ化』する」と予想する。

大胆な金融緩和と安倍晋三内閣の財政出動を背景とした円安・株高 基調の下で、国内総生産(GDP)の実質成長率は4-6月期まで2四 半期続けて前期比年率4%前後の高成長を記録。7-9月期も1.9% と0.5-1%程度とされる潜在成長率を上回った。内閣府によると、直 近の需給ギャップはGDPの1.3%とリーマンショック前の08年4-6 月期以来の水準まで縮小した。

消費者物価(全国、生鮮食品を除く)は8月に前年比0.8%と08 年11月以来の高い伸びを記録し、9月も0.7%と4カ月連続のプラス。 食料とエネルギーを除いた指数も前年比横ばいまで浮上し、08年12月以 来となるマイナス圏脱却を果たした。

目標修正か放棄

日銀は10月末に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポー ト)で、日本経済は消費増税を予定通り実施しても、基調としては潜在 成長力を上回る成長が続くと予想。15年度の消費者物価指数(全国、生 鮮食品を除く)上昇率は2%ポイント前後とされる増税の押し上げ効果 を除いても1.9%に高まるとの見解を維持した。「15年度までの見通し 期間の後半にかけて2%程度に達する」と主張する。

しかし、ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査によると、 日銀の物価見通しに同意しないとの回答が37人中35人。「日銀は2年で 2%の物価安定目標を修正ないし放棄する」とみる向きも22人と約6割 に達した。

木内登英審議委員は21日の金融政策決定会合で、物価目標の実現を 「中長期的に目指す」とした上で、量的・質的緩和を「2年間程度の集 中対応措置と位置付ける」と提案したが、否決された。日銀は目標達成 は2年程度を念頭に置いて「できるだけ早期に」、緩和期間は目標を安 定的に持続するために「必要な時点まで継続する」と表明している。

はなから信用せず

CIBC(カナディアン・インペリアル・バンク・オブ・コマー ス)証券金融商品部の大江一明部長は、日銀の物価目標を「はなから信 用していない」と言う。新興市場国の台頭などを背景に「世界中でより 安く製品を作れる環境になり、経済成長しても物価は上がりにくい」と 説明。「中央銀行による巨額の国債購入で長期金利は低めに抑えられる が、物価目標は掲げること自体がおかしい」と述べた。

一方、市場関係者は米国の10年債利回りについては予測値を引き上 げている。7月時点では来年末に2.76%との見通しだったが、足元で は3.39%。実現すれば、11年4月以来の高水準となる。

米連邦準備制度理事会(FRB)が20日公表した連邦公開市場委員 会(FOMC、10月29、30日開催)の議事録によれば、政策当局者らは 経済の改善に伴い、月額850億ドルで実施している債券購入の規模を 「数カ月内」に縮小する可能性があるとの認識を示した。

消費増税

安倍内閣は先月1日、消費税率を5%から来年4月に8%へ予定通 り引き上げることを決めた。景気の腰折れやデフレ再燃を防ぐため、12 月上旬をめどに5兆円規模の経済対策を策定するとも表明。設備投資や 雇用・賃上げを促す1兆円規模の減税も加える。市場関係者は実質成長 率が来年1-3月期に駆け込み需要で4.8%と2年ぶりの高水準を記録 した後、4-6月期には反動減でマイナス4.5%に落ち込むとみる。

NHKが8-10日に実施した世論調査によると、安倍内閣の支持率 は60%と5カ月ぶりの水準に上昇。産経新聞社とFNNの合同世論調査 では、来年4月の消費増税には52.2%が支持を表明したが、15年10月に 予定される税率10%への再引き上げには65.6%が反対と回答した。

東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、来年度は消 費増税の影響もあって「安倍内閣の生命線である景気が悪化し、支持率 も低下する」と読む。物価目標も達成できないと市場が確信すれば、日 銀に対する信認も損なわれ、下半期には1ドル=80円台の急速な円高に 見舞われると予想。10年債利回りは今年4月に記録した過去最低 の0.315%を「来秋に割り込み、0.25%を目指す」と語った。

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