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【コラム】ハリポタ銃を持ったゴールドマンに挑む-ペセック

ハリウッドは昔から、日本のギャン グに魅せられていた。シドニー・ポラック監督の1974年の映画「ザ・ヤ クザ」以来、体中に入れ墨をし小指のない彼らはリドリー・スコットや クエンティン・タランティーノといった映画監督の題材になってきた。

最近また、やくざ映画やドラマの企画が盛んだ。ワーナー・ブラザ ーズは第2次世界大戦中に捕虜になった米国人が戦後やくざになるとい う「ジ・アウトサイダー」を制作中。ロバート・ホワイティング氏 の1999年の本「東京アンダーワールド」は米ケーブルテレビ用のドラマ シリーズになる。中でも最もタイムリーなのはジェイク・アデルスタイ ン氏の2010年の回顧録「トーキョー・バイス」の映画化だろう。主演は 「ハリー・ポッター」シリーズで有名なダニエル・ラドクリフ。

東京の新聞記者がやくざの日本経済への浸透ぶりを暴こうとする闘 いを描いたアデルスタイン氏の回顧録は、最近実際に起きていることと 驚くほど共通点がある。みずほフィナンシャルグループのような大銀行 が反社会勢力への融資で改善命令を受けるなど、取り締まりは厳しくな っている。アデルスタイン氏が「銃を持ったゴールドマン・サックス」 と形容するほど財界にコネを持つ日本のギャングに対する取り締まり は、遅過ぎたくらいだ。安倍晋三首相は暴力団の根絶を日本の競争力強 化に向けた重要政策の一つにすべきだろう。

アデルスタイン氏は「自分の本には犯罪組織と政界、金融界とのつ ながりを数多く盛り込んだ。それらの多くは未来を予見したものだった ことが、その後の数年で証明された」と述べた。

暴力団構成員はオフィスを構え名刺を交換し、ファン雑誌まであ る。娯楽業界の大きな部分をコントロールし、政界への影響力も強い。 みかじめ料を取って商店主らを搾取したり売春組織を運営したり、人身 売買やマネーロンダリング(資金洗浄)にいそしんでいないときは、や くざも一般人として表社会で暮らしている。株の売買や不動産の転売で もうけ、企業を買収することもある。

米国発

奇妙なことに、最近の暴力団への圧力の大きな部分は日本ではなく 米国発だ。同時多発テロ事件以後の米国は、国境を越えた組織犯罪への 日本の取り締まりの甘さと世界を駆けめぐる不透明な巨額のやくざマネ ーに不安を感じている。米財務省は、最大の暴力団である山口組だけで も年間数十億ドルの資金を生み出していると概算している。

日本の対応に不満なオバマ政権は2011年に、金融機関にやくざの資 産を凍結させる大統領命令を出し、12年に山口組をその対象ブラックリ ストに載せた。ブルームバーグ・ニュースが米情報公開法に基づき入手 した資料によると、米財務省は日本で発行されたアメリカン・エキスプ レスのカードなどを含め、約5万5000ドル(約555万円)の関係資産を これまでに凍結した。やくざはもちろんだが、日本政府に覚醒を促す平 手打ちのようなものだった。

有名人

アデルスタイン氏(44)が闇社会で有名人になったのは山口組のお かげだった。米ミズーリ州出身の同氏は1993年に読売新聞で初の外国人 の警察担当記者になった。同氏は山口組系後藤組の後藤忠政組長ら が2005年に米カリフォルニア州で生体肝移植手術を受けたと報じ、深刻 なトラブルに見舞われることになる。アデルスタイン氏は以来、警察の 保護下にある。

テンプル大学ジャパンキャンパスのアジア研究責任者ジェフ・キン グストン教授は11年の著書「コンテンポラリー・ジャパン」で、もし山 口組が上場すれば業界内でトヨタのような存在感のある銘柄になるだろ うと書いている。モルガン・スタンレーMUFG証券のチーフエコノミ スト兼債券調査本部長、ロバート・フェルドマン氏はかつて、山口組を 日本「最大のプライベートエクイティ・グループ」と呼んだ。

日本経済の足かせ

安倍首相が前回首相を務めていた07年にフェルドマン氏はやくざが 日本の足かせになっていことを指摘したリポートを書いた。「組織犯罪 の政界および財界・金融界への影響が依然として効率的な経済と金融市 場の妨げになっている。敗者は日本の競争力だ。組織犯罪の問題がこれ ほど大きいのに外国の企業や投資家が日本での活動を拡大すると期待す るのは妥当とは思われない」と指摘した。6年後の今も状況はわずかし か改善していない。

安倍首相は2回目の政権を握った機会を生かし、犯罪組織取り締ま りを加速させるべきだ。今から20年までの間に膨らむであろう五輪関連 の支出は、汚職やゆすりの機会をたっぷりつくり出すだろう。今のうち に暴力団を非合法にしておいてはどうか。

アデルスタイン氏がこのごろよく尋ねられるらしい質問を私も彼に してみた。ハリー・ポッターが自分を演じてくれるのはどんな気分です か-。同氏の答えはちょっと意外だった。「彼以上に演じてもらいたい 俳優は思いつかない。表紙に彼の顔を入れた私の本の新版が出れば、う まく私のことを忘れてもらえると思う」と語った。それがうまくいかな くても、いつかは普通の生活に戻れることを同氏は期待している。「20 年までには、やくざの息の根が止められるだろう。そんなに遠いことで はない」と同氏は言う。しかし、それほど近い将来でもない。アデルス タイン氏のみならず日本のために、やくざの「最後の審判の日」を早急 に実現してもらいたいものだ。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Harry Potter Takes on ’Goldman Sachs With Guns’: William Pesek(抜粋)

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