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PS4成功の鍵握る「スーツを着たタコ」-ソニー開発業者支援

ソニーの新据え置き型ゲーム機「プ レイステーション(PS)4」が北米で15日に発売され、初日に100万 台余りの販売を記録、年末商戦に向けて好スタートを切った。PS4が 業績回復に貢献する上で鍵となるゲームコンテンツを強化するため、ソ ニーは世界中でゲーム開発者の発掘と育成に力を入れている。

今年6月、ロサンゼルスで開かれたゲーム見本市「E3」で、ソニ ーはスーツを着たタコのキャラクターが主人公の「オクトダッド:ダド リエスト キャッチ」というPS4ゲームを紹介した。制作したのはシ カゴの独立系ゲームメーカー、ヤング・ホーシズ社。同社は今までに2 本のゲームしか制作したことがなく、据え置き型ゲーム機に作品を出す のはこれが初めてだ。

ヤング・ホーシズ社のフィリップ・ティビトスキー社長(24)は、 いまでもあの時の興奮を忘れない。E3で紹介された翌日、電話が鳴り やまず、メールがあふれかえり「あまりにも素晴らしい出来事で、現実 とは思えなかった」と話す。ティビトスキー氏は学生時代に仲間9人と ゲーム開発を始め、その作品がソニーの目に留まって支援を受けること になり、シリーズ作をPS4で製品化することにつながった。

注目のインディーズ

いま、ゲーム業界で注目を集めているのがこうした「インディー ズ・デベロッパー」と呼ばれる零細な独立系開発業者だ。比較的参入し やすいモバイル端末向けゲームアプリの開発ばかりでなく、据え置き型 ゲーム機でも彼らの知恵を生かそうとする動きがある。ソニーはインデ ィーズ開発者を積極的に発掘してPS4用ゲームのタイトル数を増や し、多彩な内容でライバルをリードしようとしている。

先の7-9月期決算で予想外の純損失を計上して市場を驚かせたソ ニーにとって、PS4は業績回復の鍵を握る。SMBC日興証券の白石 幸毅アナリストは、前モデルのPS3ではコアゲーマー以外を引き付け られなかったのが失敗の一因だったとし、ソニーは「インディーズゲー ムでバラエティーを増やし、ターゲットユーザーを広げようとしてい る」と分析した。

PS4には現在620社以上のゲーム開発者が携わっている。ソニ ー・コンピュータエンタテインメント(SCE)社長のアンドリュー・ ハウス氏は開発者の数はいまが「記憶する中で一番多い」とし、ゲーム 業界は「ハリウッドのメジャー作品から、低予算の魅力的ないい作品ま で多様性に富む映画業界と同じようになっていく」と9月の「東京ゲー ムショウ」で述べていた。

インディーズの利点は「費用が安く、さまざまな実験ができるこ と」だとSCEで社外開発者サポートを担当しているブラッドリー・ダ グラス氏は語る。ソニーは2012年末からインディーズの取り込みに「一 層積極的になった」という。

手厚い支援

SCEの社外ゲーム開発者サポート部隊は開発者の要請に応じてさ まざまな手助けをしている。ティビトスキー氏もそうした支援を受けた 1人で、ソニーから無償でゲーム開発キットを提供してもらい、「使い たいだけ使っていい」と説明を受けたそうだ。オクトダッドのPS4向 けの発売日はまだ決定していないが、14年の3月末までの発売を予定し ているという

ロンドンに本拠を置くインディーズ系開発会社、ロール7はSCE からゲーム開発用の資金を全額援助してもらった。共同創業者のトム・ ヘガティー氏(33)はソニーの財政支援が死活的に重要だったとし、そ れで開発したゲーム「オリーオリー」は12月にプレイステーション・ビ ータ向けに発売される予定だと述べた。

ロール7がどれくらい財政支援を受けたのか、ヘガティー氏は明ら かにしなかったが、SCEはオンラインで技術支援したり、現地に技術 者を派遣したりもしてくれたという。

ダグラス氏によると、ソニーの支援策は地域ごとに異なり、米国で は一定の売り上げを想定してゲーム発売前に開発代金を前払いしたり、 欧州ではSCEがゲーム会社に直接投資するようなプロジェクトもある そうだ。今まで手薄だった日本でのインディーズ開発者支援も、夏以降 に本腰を入れ始めたという。去年までは「数十台貸し出していた」開発 キットは、今年は「百台以上」だと明らかにした。

鍵握る「独占性」

ソニーのインディーズ開発者向けの支援基金について、ダグラス氏 は総額を明らかにしなかったが、「投資資金は回収後にまた別のゲーム タイトルの投資に回されているので額は減っていない。増えているはず だ」と述べた

また、2月のPS4発表会では「ブレイド」という人気パズルを開 発したジョナサン・ブロー氏がPS4用ゲーム「ザ・ウィットネス」を 説明したが、ソニーにとって「この十数年間で一番大きなイベント」 に、多くのインディーズ開発者が登壇することなど少し前には「信じら れないこと」だったとダグラス氏は振り返った。

しかし、インディーズに注目しているのはソニーだけではない。任 天堂の広報担当、皆川恭広氏によると、同社はソフト開発ツールの「任 天堂ウェブフレームワーク」や「Wii(ウィー)U」向けのコンテン ツ開発ツール「ユニティ」を配布することで、小規模開発者に任天堂向 けのゲーム開発を促している。マイクロソフトも今年8月から「ID@ Xbox」という独立系開発者を支援するプログラムを導入した。

ソニーとともに

SMBC日興証券の白石氏は、インディーズについて「独占性を保 てるかが重要になる」と指摘する。ソニーならソニー向けだけに開発し てくれる業者を確保することが重要というわけだ。

ロール7のヘガティー氏は「わたしたちはソニーとともに成長した いし、来年にはPS4向けに独占タイトルを提供する可能性もある」と 話した。

ゲーム専門小売り米最大手のゲームストップは、同社が最初に割り 当てられたPS4が21日時点で既に完売したことを明らかにした。ま だ230万人の顧客がソニーやマイクロソフトの新型ゲーム機の入荷を待 っているという。

シティグループ証券の江沢厚太アナリストは「マイクロソフトなど との競合で、トリプルAと言われるゲームメーカーの大型タイトルを、 プレイステーションの独占タイトルにしてもらうのは難しくなってい る。インディーズの領域では、競争もそれほど厳しくはない。また、有 望な才能を発掘して支援すれば、将来は自社用に独占で採用できる可能 性もある」と述べた。

ソニー株は小動きで、前日終値比0.1%安の1893円で午前の取引を 終えた。

--取材協力:. Editors: 中川寛之, 淡路毅

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