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GPIFの国内債偏重「危険」、新リスク資産検討を-有識者会議

公的・準公的資金の運用・リスク管 理の高度化を議論する政府の有識者会議は、デフレ脱却を前提に国内債 に偏った資産構成の見直しや金利リスク管理、新たなリスク資産への投 資などを求める提言をまとめた。年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF)を合議制で高い自主性・独立性を持つ組織に改編する法改正 の必要も訴えた。

有識者会議座長の伊藤隆敏東大大学院教授は20日夕の記者会見で、 日本経済は政府・日本銀行が2%の物価目標を目指す中で、約15年にわ たるデフレから脱却しつつある「大きな転換点」を迎えていると指摘。 金利上昇に弱い現在の資産構成を変えないと「危険だ。被保険者のため にならない」と語った。

甘利明経済再生担当相に提出した最終報告書では、国内債が6割を 占めるGPIFの資産構成を見直し、REIT(不動産投資信託)、不 動産、インフラ、プライベートエクイティ(PE)、商品などリスク資 産への投資を検討するよう提言。政府が年度内にまとめる年金財政検証 を受けて、今年6月に続く基本ポートフォリオの変更に踏み切るべきだ とした。デフレ脱却を視野に、物価連動債への投資も課題に挙げた。

また、日本取引所などが開発した新指数「JPX日経インデック ス400」を例に挙げ、TOPIX以外の株価指数を早期に一部利用すべ きだと推奨したほか、GPIFから小規模な運用組織である「ベビーフ ァンド」を1年後をめどに創設するよう提言。複数の資産クラスにまた がる運用や新たな投資対象を一括して任せるなどの用途を挙げた。

人材確保は閣議決定で

伊藤座長は、検討対象となる運用資産の約6割を保有するGPIF の改革は「非常に重要だ」と指摘。「国内債の比率は高過ぎる」と述べ た。基本ポートフォリオで許される52%程度まで「直ちに下げても違反 にはならない」と強調。ベビーファンドには市場を荒らさない利点もあ るため、「ぜひ採用してほしい」と語った。資産規模は10兆円には届か ないとの私見も示した。

報告書は独立行政法人であるGPIFの組織改革の必要性にも触 れ、常勤の専門家による合議制の理事会で重要な方針を決め、説明責任 に裏付けされた高い自主性・独立性を持つ法人に変更すべきだと指摘。 まずは閣議決定による人員数や給与水準の規制緩和と予算確保によって 専門性が高い第一線の人材採用に努め、次いで複数の常勤者による合議 制の理事会設置に必要な法案を準備するよう求めた。伊藤座長は同法案 を2015年の通常国会には提出できるように「ステップを踏みながら改革 していく」べきだと語った。

日本再興戦略

有識者会議は安倍晋三内閣が6月14日に閣議決定した日本再興戦略 に基づき、7月1日に初会合を開催し、9月26日には中間論点整理を公 表。8回目となるこの日の会合での議論の末に、最終報告書を取りまと めた。甘利再生相は「今後は提言に基づいて関係各省庁、政府一体で実 現に向けて取り組む」と述べた。

公的・準公的資金は2011年度末時点で、GPIFが114兆円、国家 公務員共済が8兆円、地方公務員共済が36兆円、私学共済が3兆円、 GPIFを除くその他の独立行政法人等が55兆円など。公的・準公的資 金運用の見直しは安倍首相が進める経済政策「アベノミクス」の経済再 生戦略の一環だ。自民党の日本経済再生本部・金融調査会合同会議の塩 崎恭久本部長代行(衆議院議員)は7日の記者説明会で、GPIF改革 は「世界が最も注目しているアベノミクスの柱」だと述べた。

BNPパリバ・インベストメント・パートナーズの清川鉉徳運用本 部長は「絶対収益を稼ぐのが年金の使命だ」と指摘。デフレ下では国内 債への投資で済んでいたが、インフレ環境では「さまざまな資産に投資 して収益を上げざるを得ない」と言う。

アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之最 高投資責任者は「円安・株高の流れが続けばGPIFの体質も変わって いく」と予想。「独立性を強めるなら、責任の所在が大事になってく る」と指摘し、簡単にはいかない問題だとみている。

基本ポートフォリオ

GPIFは6月、運用資産120兆円の構成比率を規定する「基本ポ ートフォリオ」を06年度の同法人設立から初めて変更。国内債の比率を 従来の67%から60%に引き下げる一方、国内株式は11%から12%に、外 国債券も8%から11%に、外国株式は9%から12%に増やした。目標か らの%乖離(かいり)許容幅は据え置いた。

6月末の実績は国内債59.87%、国内株15.73%、外債10.03%、外 株12.90%。4-6月期の収益率は1.85%と3四半期ぶりの低水準とな った。国内株は9.7%のプラスを確保したが、金利上昇で国内債 は1.48%のマイナスだった。

伊藤座長は先月のインタビューで、GPIFなどは「非常に大きい 金利リスク」を抱えていると指摘し、日本銀行が掲げる2%の物価目標 が2年程度で実現するとの前提で対処法を考えるべきだとの見解を示し た。一方、GPIFの三谷隆博理事長は6月、市場環境の激変などがな い限り、15年3月まで現在の基本ポートフォリオを維持する方針を示し ていた。

有識者会議のメンバーは伊藤座長のほか、菅野雅明JPモルガン証 券チーフエコノミスト、熊谷亮丸大和総研チーフエコノミスト、佐久間 総一郎経団連経済法規委員会企画部会長(新日鉄住金株式会社常務取締 役)、菅家功日本労働組合総連合会副事務局長、堀江貞之野村総合研究 所上席研究員、米澤康博早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。

--取材協力:伊藤小巻. Editors: 青木 勝, 崎浜秀磨, 宮沢祐介

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