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パナソニク、マツダ:体質強化で円安享受、改革遅れるソニー

日本企業は7-9月期決算でリーマ ン危機以来最高となる純利益を計上している。アベノミクスを受けた円 安という追い風を受ける中で、違いを生んだのはリストラやコスト削減 の進展度合いだ。パナソニックとソニー、マツダと日産自動車は同じセ クター内でも明暗を分ける結果となった。

ブルームバーグの集計によると、金融を除くTOPIX採用銘柄企 業の7-9月期の純利益は合計5.5兆円となり、2007年10-12月期の6 兆円以来の水準となった。4384億円のトヨタ自動車を筆頭に、1000億円 以上がNTT、日本たばこ産業(JT)やホンダなど9社。一方、最も 赤字が大きかったのが193億円の純損失となったソニーだった。

決算は、歴史的な円高が輸出企業の採算の重石となっていた時期 に、各社が重ねてきた決断の違いを浮き彫りにした。パナソニックは構 造改革を断行、不採算事業を切り離し、マツダは資産売却とコスト削 減、一部生産のメキシコ移転を経て、ともに反転攻勢の真っただ中にい る。トヨタは16年まで新たな計画に基づく工場を建設しない方針だ。一 方、ソニーは人員削減に踏み切りながらも不採算のテレビ事業の黒字化 を目指し、日産自は研究開発費や設備投資が今期ピークを迎える中、と もに市場の期待を裏切る決算となった。

「本業にこだわっていたり、成功体験にこだわってばかりいる企業 がうまくいってない」と、みずほ総合研究所の杉浦哲郎チーフエコノミ ストは指摘する。円安を大きな利益として享受できているのは、円高の 時期にコスト削減や事業転換に取り組んだ企業であり「日本が今まで続 けてきた、効率的に良いものを作れば儲かる時代は終わった」という。

事業の絞込み

パナソニックは津賀一宏社長の構造改革で事業の合理化が進み、7 -9月期の純利益は615億円と、市場予想の44億円を大幅に上回った。 昨年に人員削減も含めて従業員が約4万人減ったあとも津賀社長は事業 を絞り込み、今期はヘルスケア事業の過半数株式を売却。これまで赤字 の大きな要因となっていたプラズマディスプレーの生産を12月に終了す ることを決定した。

マツダは昨年までに取り組んだ本社や工場敷地内の一部土地の売 却、子会社株などの資産の処分が功を奏した。円安や新車種投入の成功 と相まって今期純利益予想を従来比43%高い1000億円に見直している。 トヨタは2月、当時の伊地知隆彦専務が「筋肉質で柔軟な企業体質をつ くり、持続的成長を図りたい」として、16年まで新計画に基づく工場建 設を見合わせる方針を示した。今期の純利益予想は1兆6700億円と、過 去最高だったリーマン危機直前の08年3月期に迫る勢いだ。

日産は下方修正

今期の純利益予想を15%下方修正した日産自も、これまでリストラ をして来なかったわけではない。プラットホームや部品の共通化に取り 組んだ。しかし一方で中国やメキシコなどで大幅な生産能力の拡大に投 資した。2日、グループ全体の事業運営の効率化をめざし役員体制変更 を発表した場で、カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は、研究 開発費や設備投資について、今期ピークを迎え来期以降はコストが減少 していくと話した。

ソニーも平井一夫社長の下、13年3月期に1万人削減を柱とするリ ストラを行い、岐阜県の工場を閉鎖するなどした。しかし9年続けて赤 字のテレビ事業については黒字化を目指しており、パナソニックの判断 とは好対照だ。パナソニックは今期の純利益予想を従来の500億円か ら1000億円に引き上げ、ソニーは500億円から300億円に引き下げた。

「パナソニックは既存のビジネスモデルにとらわれずに道筋を明確 に示せていて、それに伴って希望の持てる数字も出せている」と高木証 券の勇崎聡投資情報部長は語る。ソニーは「従来から戦ってきた土俵か ら一歩踏み出せずにいるが、事業環境が厳しく、利益上がらないところ で苦しんでいる」と指摘する。

映画事業が重し

ソニーの7-9月期では映画事業が業績全体を圧迫した。一部作品 の興行収入が期待はずれに終わった。同社は8月、米ヘッジファンド、 サード・ポイント率いるダニエル・ローブ氏からの映画事業を含むエン ターテインメント事業の分離上場提案を拒否したばかり。ソニー広報担 当の今田真実氏は、7年ぶりの新据え置き型ゲーム機「プレイステーシ ョン(PS)4」を投入する年末が「最大の商戦期」という。

北米市場で15日に発売されたPS4は初日に100万台を突破。広報 担当の福岡智氏によると「PSコンソールの発売初日の販売台数として はPS4が最も多い」という。今月29日に欧州と中南米諸国でも発売の 予定。ただ年末商戦には、今週発売予定のマイクロソフトの新型ゲーム 機「Xbox One(エックスボックス・ワン)」も控える。

市場からはソニーに追加リストラを求める声が上がっている。米モ ルガン・スタンレーは14日、ソニーの「改革スピード加速に期待」とし て投資判断を引き上げた。モルガン・スタンレーMUFG証券のアナリ スト小野雅弘氏と田口洋氏は同日付け顧客向けリポートで、現在改革プ ランを策定中のPC事業のほかにテレビに関しても「追加施策が必要」 と指摘した。

JTは連結営業利益見通しを上方修正しながらも、国内のたばこ需 要の落ち込みを背景に04年度以来となる人員削減、4工場の閉鎖に踏み 切った。余力があるうちに、競争力強化を図った格好だ。

アベノミクス成長は一服

足元では国内成長に一服感が見られる。14日に内閣府が発表した7 -9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で1.9%増 と、4-6月期の3.8%から減速した。外需の低迷が全体の足を引っ張 り、個人消費も0.1%増と成長ペースを落としている。

安倍晋三首相は来年4月から消費税を8%に上げると表明し、増税 に伴う景気腰折れを回避するため、12月上旬をめどに5兆円規模の経済 対策をまとめる方針も示している。日本銀行は10月31日、景気について 「2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受け つつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続ける」と展望リポート で指摘した。

SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは、今後の 日本企業の業績の鍵を握るのは、回復を遂げた会社からの波及効果だと みている。「好調な企業が設備投資をすれば派生していくだろう。生産 が増えれば素材にも影響があるだろうし、景気のいいところから順に賃 金も上昇するなら消費も回復して内需にも恩恵がある」という。「下半 期から来期にかけては教科書通りの回復というものが出現するかどうか だ」と述べた。

--取材協力:黄恂恂、萩原ゆき、Dave McCombs、浅井秀樹、中川寛之、 上野英治郎、谷合謙三. Editors: 宮沢祐介, 上野英治郎

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