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王道歩んでつかみ取った大富豪の座-国外追放ピンチを好機に

独立したばかりのカザフスタンのた めに欧州へ赴任して同国初の商社を設立するよう上司から指示された 時、ボラート・ウテムラトフ(56)氏の反応は極めて旧ソ連的なものだ った。「ああ、自分は国外追放になるのだ」と思い、不安に駆られたこ とを覚えている。

ソ連解体から間もない1992年のことだ-。独自に通貨ルーブルを導 入したロシアに対して、依然旧通貨を使用していたカザフなど旧ソ連諸 国はハイパーインフレに見舞われた。カザフの初代かつ、これまで唯一 の大統領であるナザルバエフ氏(73)は「ハードカレンシー(国際決済 通貨)」が必要だった。そこで考えたのが、経済学の教員から高級官僚 に転身した当時34歳のウテムラトフ氏を、カザフの金属資源を購入する 欧州企業との仲介役としてウィーンに送り込むという計画だ。ブルーム バーグ・マーケッツ誌12月号が報じている。

ウテムラトフ氏は、当時の上司で新設された直後の対外経済省のト ップだったシジク・アビシェフ氏が同氏を安心させようとして、「ボラ ート、君は分かっていない。これは君にとってチャンスなのだ」と語っ たことを思い出す。

果たして、アビシェフ氏が言った通りとなった。カザフ政府の仕事 をこなしながら、ウテムラトフ氏は自分で事業を始める。それが中央ア ジアで指折りの富豪となる第一歩だった。ブルームバーグ・ビリオネア 指数によると、同氏の資産評価額は9月30日時点で34億ドル(約3400億 円)に上る。

国家と共に

ウテムラトフ氏が成功を収めるのと同時に、国家としてのカザフも 成長。内陸国(海に面していない国)としては最も広いカザフは資源が 豊富だ。世界の埋蔵量の4%に相当する亜鉛と、同1.8%の原油が埋蔵 されていると推計される。1990年代の成長率はほぼマイナス圏に停滞し ていたが、2000年代は高い伸びを遂げている。1991年12月に国民による 初の選挙でナザルバエフ大統領が選出されてから、今年9月末現在で同 国の経済規模は12倍に拡大した。

ただウテムラトフ氏にとって、カザフはビジネスをする上で信頼性 を欠く国であるとの汚名を振り払うのは難しいと、バーニー・キャピタ ルで以前会長を務めていたティムル・イサタエフ氏は指摘する。バーニ ー・キャピタルは主としてウテムラトフ氏の資産を運用するために、同 氏の部下たちが2006年に創業したプライベートエクイティ(PE、未公 開株)投資会社。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が09年に 実施した調査では、カザフの大手上場企業22社の透明性に関するスコア は44と、ロシアの56、中国の46を下回った。同種の調査はこれ以降、実 施されていない。イサタエフ氏によると、このような認識はあまり変化 しておらず、「外国の投資家や企業は依然としてわれわれを信用してい ない。それが問題だ」と同氏は指摘した。

清廉潔白

ウテムラトフ氏はナザルバエフ大統領の側近だったころに築いた富 を守っている。同氏はブルームバーグ・マーケッツ誌のインタビューに 計3回にわたって応じたが、ジャーナリストを相手に長時間にわたって 話すのは初めてだった。アスリートのような風貌で、スペイン出身のプ ロテニス選手、ラファエル・ナダル氏は友人の一人だ。

富を得るために政府での地位やナザルバエフ大統領との親しい関係 を不適切に利用したことは決してないと、ウテムラトフ氏は断言する。 「だから、やましいことは何もない」。カザフ北部のシュチエ湖のほと りにある白樺と松に囲まれた高級ホテル、リクソス・ボロボエ・ホテル のプレジデンシャルスイートでそう語った。

昨年12月に行われたこの高級リゾートのオープン式典には、ナザル バエフ大統領が来賓として招かれた。この時、ウテムラトフ氏は英国の ポップデュオ、ペット・ショップ・ボーイズに出演を依頼、カザフのシ ンクロナイズドスイミングのナショナルチームも演技を披露した。賄賂 を受け取ろうとする者もいるかもしれないが、そのような行為は不道徳 であるだけではなくビジネスにも良くないと、同氏は主張する。「ナザ ルバエフ大統領に恥をかかせるわけにはいかない。私は資産の全てを流 通市場で個人所有者から購入した」。

切っても切れない縁

ウテムラトフ氏は長年にわたって大統領の経済顧問やカザフ安全保 障会議の書記など政府の要職を歴任。政府の要職に就いていることは富 を築く障害にはならなかったと振り返る。同氏によると、事業はカザフ の法律を完全に順守して遂行してきた。鉱業やホテル通信、メディア などの事業に投資している。

現在、重点を置いているのは銀行の事業拡張とレアアース(希土 類)とニッケルの鉱床取得のほか、自らの他の事業の拡充だ。6月には 首都アスタナで高層ビル「タラン・タワーズ」の建設に着工した。同氏 によると、総工費3億ドルのツインタワーは、カザフではこれまでにな いエネルギー効率を誇る高層ビルで、オフィスや店舗、住居が入る見通 しだ。スイスの資源大手、グレンコア・エクストラータの地域事業部や バーニー・キャピタルの本社も入居予定だという。

ウテムラトフ氏の行動は常にナザルバエフ大統領とカザフの権力の 中枢と切っても切れない縁がある。完成後のタラン・タワーズからは、 青色と金色に光り輝くドーム型の大統領府を見下ろすことができるとい う。

原題:Billionaire Utemuratov Says He’s Hiding Nothing About Wealth (1)(抜粋)

--取材協力:Alex Sazonov. Editors: Stryker McGuire, Brad Cook

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