コンテンツにスキップする

【クレジット市場】緩和ペダル踏む黒田氏、緩めるイエレン-円安進む

円が対ドルで9月以来の安値を付 け、1ドル=100円の大台に迫っている。30年物国債の利回り格差が2 年4カ月ぶりの大きさとなるなど、日米の金利差拡大が影響している。

日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和策が来春に も対照的な道をたどり始めるとの観測から、30年債利回りの日米格差 は12日終値で2.23ポイントと2011年7月以来の水準に拡大した。円は対 ドルで一時99円80銭と9月13日以来の安値を記録。市場関係者は、来年 にはリーマンショック直前に当たる08年8月以来初めて110円まで下落 すると予想する。

ブルームバーグ・ニュースの調査によると、対象となったエコノミ ストの約4分の3が、黒田東彦総裁率いる日銀は来年前半に追加緩和に 踏み切ると予想。12日の30年債入札では応札倍率が4.40倍と昨年10月以 来の高水準となり、投資家需要の強さを示した。別のブルームバーグ調 査では、FRBはバーナンキ議長が来年1月末に退任した後、イエレン 次期議長の初陣となる3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩 和策の縮小を開始するとの見方が有力だ。

BNPパリバ証券の藤木智久チーフ債券ストラテジストは、FRB は仮に失業率目標のハードルを引き上げることがあったとしても、「方 向としてはアクセルを緩めていく。日銀はペダルを踏み込んだ状態で、 市場は今後も国債買い入れを続けるとみている」と指摘。日米金利差は 拡大しやすく、円安要因になると述べた。同社は14年末までに118円 と07年8月以来の水準まで円安・ドル高が進むと予想する。

金利差が1年で3倍

円は対ドルで過去1年間に約20%下落。主要16通貨で最大の下落と なっている。通貨オプション市場では、円とドルの需要格差を映すリス ク・リバーサル(3カ月物)が12日に0.13%と終値ベースで6月5日以 来の水準に上昇。円を売ってドルを買う権利の需要が、円を買ってドル を売る権利を上回っていることを示している。

米30年債利回りは12日に一時3.88%と約2カ月ぶりの高水準を付け た。一方、同年限の日本国債は11日に一時1.60%と10月24日以来の水準 に低下。12日の入札後は1.62%で取引された。日米の利回り格差は1年 間で3倍近くに広がった。10年債の格差も2.16ポイントに拡大し、9 月10日に付けた11年4月以来となる2.22ポイントに迫った。

FRBはリーマンショック後の08年11月以降、実質ゼロ金利に加 え、資産買い入れによる量的緩和策を3回にわたり実施。総資産は 約3.9兆ドルと金融危機前の4倍超に膨らんだ。バーナンキ議長は5 月、住宅ローン担保証券(MBS)と米国債で月850億ドルの購入規模 を縮小する可能性に初めて言及。先月30日のFOMC声明は、景気回復 をさらに見極める方針を示した。8日発表の10月の米雇用者増は市場予 想を大幅に上回ったが、失業率は7.3%に上昇した。

米利上げ織り込みへ

野村証券はFRBによる量的緩和の縮小開始予想を来年3月から1 月に前倒しした。雨宮愛知エコノミスト(ニューヨーク在勤)は米労働 市場の回復ペースは予想以上に速く、政府機関の一部閉鎖や債務上限問 題の経済的な影響はさほど大きくないと分析。FRBが注視する失業率 も政府機関閉鎖がなければ10月は7.1%と、08年11月以来の水準まで下 がっていたと推計する。

ブルームバーグがエコノミスト32人を対象に8日実施した調査で は、FOMCが来年3月18、19日の会合で債券購入規模を700億ドルに 縮小するとの見方(予想中央値)が示された。10月17、18日の調査と同 様の結果だ。一方、フェデラルファンド(FF)金利先物相場による と、15年1月までに利上げがある確率は22.1%。FRBは失業率 が6.5%を上回り、今後1-2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると 予想される限り、政策金利をゼロ近辺にとどめる方針だ。

キャピタル・エコノミクスのマルセル・ティーリアン氏(シンガポ ール在勤)は「FRBはいずれかの時点で債券購入プログラムを停止 し、市場は将来の利上げを織り込み始める」と予想。投資家は日銀が掲 げる2%の物価目標について、当面は達成困難とみていると指摘した。

発行額の半分購入

日銀は2%の物価目標を2年程度で達成するため、月7兆円強の長 期国債を買い入れる「量的・質的金融緩和」を4月4日に導入。イール ドカーブ(利回り曲線)全体の低下を促すため、残存期間が最も長い40 年債も対象に加え、買い入れの平均残存期間を3年弱から国債発行残高 の平均並みの7年程度に伸ばした。購入規模は今年度の国債発行総 額170.5兆円の約半分に上る。

大胆な金融緩和と安倍晋三内閣の財政出動を背景とした円安・株高 基調の下で、国内総生産(GDP)の実質成長率は4-6月期まで2四 半期続けて前期比年率4%前後と、0.5-1%程度とされる潜在成長率 を大幅に上回った。内閣府によると、直近の需給ギャップはGDP の1.5%とリーマンショックが発生した08年7-9月期以来の水準まで 縮小。市場関係者はあす発表される7-9月期のGDP統計でも実 質1.7%と底堅い成長が続くと見込んでいる。

国内金利は低下

消費者物価(全国、生鮮食品を除く)は8月に前年比0.8%と08 年11月以来の高い伸びを記録し、9月も0.7%と4カ月連続のプラス。 食料とエネルギーを除いた指数も前年比横ばいまで浮上し、08年12月以 来となるマイナス圏脱却を果たした。

それでも、市場関係者は長期金利の指標となる新発10年物国債利回 りが来年末まで1%に届かないと予想。同利回りは8日、0.58%と5月 7日以来の低水準を付けた。20年債は先月24日に1.44%、30年債もその 前日に1.575%と、5月2日以来の水準に低下。償還までの年限が最も 長い40年債も1.67%前後と、日銀の物価目標を下回っている。

財務省が12日実施した30年物利付国債の入札結果では、最低落札価 格が市場予想を上回り、最高・平均利回りとも現行の入札方式になっ た07年4月以降では量的・質的緩和の導入直後だった4月に次ぎ、2番 目の低さとなった。

SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、日銀 の国債買い入れなどを背景に「金利上昇の期待が後退している」とみ る。超長期債の主な買い手である生命保険会社は「上半期は購入ペース をやや意識的に落としたとみられ、足元では押し目買いが出やすい」と も分析。ただ、米国の長期・超長期金利が上昇する中では、日本国債の 突出した低利回りにも影響が及ぶ可能性があると指摘した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE