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米中西部狙うメキシコ麻薬密売組織-シカゴの若者が犠牲に

高校時代に初めてヘロインを試した 時、ダニー・ディロンさんは砕いた鎮痛剤を吸い込んでいるような感覚 だった。程なくしてヘロインを注射するようになったのは、その効果だ けではなく、自分の懐具合で決めたのだと話す。

シカゴ郊外にある旧炭鉱町ブレードウッドでヘロイン中毒から回復 途上にあるディロンさんは、「あの価格だったからこそ簡単にできた。 何かの薬で20ドルを払わずとも、ヘロインに10ドル払えば2、3日は持 った」と振り返る。

ディロンさんの簡単な計算から浮かび上がるのは、米国における最 近のヘロイン使用状況の様変わりぶりだ。ヘロインの購入層、販売ルー ト、そして乱用で死ぬ人々の数が変化してきている。最近の使用者数 は1970年代以降で最も多く、過去5年間だけでも79%増えている。

かつてタブー視された麻薬に対して無関心さが広がっていること が、こうした急増につながっている。政府当局者や薬物中毒治療の専門 家によれば、今の使用者はかつてよりも若く、お金があり、郊外や小さ な町に住む人々である可能性が高い。彼らは以前の流行期よりも効力が 強いタイプのヘロインを吸入もしくは注射しているという。

シナロア・カルテル

中西部でのヘロイン再流行をあおっているのはこの地域で薬物の販 売を牛耳るメキシコの麻薬組織シナロア・カルテルの巧妙な計略だ。リ ーダーがかつて、シカゴを「母港」と呼んだこのカルテルは、多数のギ ャング幹部が投獄された後に生じた空白状態につけ込み、シナロアの主 な販売員として働くギャングメンバー同士の暴力を扇動した。

同時に、麻薬撲滅キャンペーンで南米でのコカイン生産が減り、米 国での処方薬乱用規制が強化されたこともシナロアにつけ込む隙を与え ている。コカインは価格が上昇し、「ヒルビリー・ヘロイン」と呼ばれ ることもある鎮痛薬「オキシコンチン」は中毒患者にとって魅力が薄れ るように改変された。そうした状況を悪用したのがシナロアと密売業者 で、彼らは最低10ドルというビール6缶ほどの値段でヘロインを提供し ている。

薬物中毒患者に支援活動を行うシカゴ・リカバリー・アライアンス のディレクター、ダン・ビッグ氏は「経済性が人々をヘロインに向かわ せているのは確かだ。1回分のコストははるかに安い」と指摘する。

ヘロインの流行はシカゴ郊外だけではなく、インディアナポリスや さらに小さなウィスコンシン州オコント郡などでも見られるが、こうし た状況になるのを予想した人はほとんどいなかった。とりわけヘロイン 使用者の親たちはそうだ。

過剰摂取

シカゴ郊外の裕福な地域ホイートンに住んでいた16歳の少年ケーラ ン・モンドラゴンさんもヘロインの過剰摂取で死亡した。父親のマルコ ス・モンドラゴンさんは「息子がヘロインのようなものを使用するとは われわれには考えられない話だった」と語った。

シカゴの真西に位置し、裕福な住宅地や一流の学校、保守的な政治 で知られるデュページ郡では、今年これまでにケーランさんを含め43人 がヘロイン過剰摂取で死亡。2011年の26人から急増している。

犠牲者が記録的水準に上ったのは、ヘロインの量と純度の高まりが 要因だ。これはいずれも主にシナロア・カルテルの影響が背景にある。 米司法省によると、メキシコのヘロイン生産は05年から09年にかけて6 倍強に増え、推定50トンに上る。米国のヘロインの約半分はメキシコ産 であることが同省の押収データで判明している。

原題:Mexico Cartel Hits Midwest With New Heroin Killing Chicago Youth(抜粋)

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