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日航、ANA:ジェット燃料の輸入を検討-国内価格上昇の影響回避

日本航空やANAホールディングス が、国内の石油元売り各社からの調達価格が上昇する懸念があることか ら、成田空港向けのジェット燃料について自社で輸入することを検討し ていることが明らかになった。早ければ来年度にも取り組む。

石油各社は石油製品の国内需要の減少を背景に製油所の精製能力を 削減しており、供給過剰が緩和されつつある中で堅調な需要に支えられ たジェット燃料の国内調達価格は上昇傾向にある。燃料費を抑えるため 航空各社が輸入を視野に入れる状況となった。

日本航空広報部の城戸崎和則氏によると、同社は過去に成田空港向 けにジェット燃料を輸入していた実績がある。しかし、国内石油各社か らの調達が輸入価格を下回ったために、2007年以降は輸入を見合わせて いる。現時点でも国内調達価格は、韓国からの海上運賃などを含めた輸 入価格を下回っている。

城戸崎氏は製油所の能力削減が今後も継続する見込みであることか ら「今後国内価格が上昇することを懸念しており、常に内外価格差につ いてはアンテナを張り、輸入再開の必要性を見極めている」と電子メー ルでコメント。14年度以降の本格的な輸入再開を検討しているという。

ANAホールディングスの広報担当野村良成氏も、同社としては燃 料輸入の実績はないものの「ジェット燃料価格が高止まりしている環境 下で、選択肢のひとつとして検討している」と話した。

上昇傾向の国内価格

石油各社と航空各社との間の長期契約に基づく日本国内空港渡しの 国際線用ジェット燃料(保税ジェット燃料)はドル建てで取引されてお り、従来はシンガポールの指標価格を下回る割安な水準で販売されてい た。しかし、精製能力の削減による供給減と底堅い需要で需給バランス が引き締まり、12年ごろの長期契約更新時から価格が上昇。現在では、 シンガポールの指標価格に対して割増金を支払う水準で決まるケースが 主流となっている。

ANAは10月30日に発表した業績予想で、今期(14年3月期)の燃 料費を従来予想の3465億円から引き上げ、前期比21%増の3625億円に修 正した。これに伴い、今期の純利益予想も従来の450億円から前期 比65%減の150億円に減額した。日航は今期の燃料費を同14%増の2810 億円と予想している。

両社が検討しているのは成田空港向けの保税ジェット燃料の輸入。 現在、同空港向けには成田国際空港(NAA)傘下の成田空港給油施設 が保有する千葉港頭石油ターミナル(千葉市)が利用されている。 NAA広報担当の中村修氏によると、国内製油所などからタンカーで運 ばれたジェット燃料は同ターミナルで陸揚げされ、全長約47キロメート ルと国内最長の石油パイプラインを通じ成田空港に送られている。

未整備の輸入インフラ

同ターミナルには4つの桟橋があるものの、受け入れが可能なの は8000トン級までの内航タンカーのみ。石油製品の輸入で利用される5 万トン級の中型タンカーを着けることはできず、航空会社が燃料輸入を 考える上でインフラ面の制約が足かせとなっている。NAAの中村氏に よると、現時点ではターミナルや桟橋を拡張する計画はない。

日航の城戸崎氏によると、同社とANA、エアカナダ、デルタ航 空、キャセイパシフィック航空の5社は1994年に燃料の「海上輸送の効 率化」を目的に「成田空港航空燃料貯蔵組合」を結成。輸入のため、 NAAの千葉港頭石油ターミナルと隣接している8万5000トン級タンカ ーの受け入れが可能な丸紅エネックスの千葉ターミナル(千葉市)の貯 蔵タンクを借りている。両ターミナル間はパイプラインでつながってお り、輸入時にはこのターミナルを使うことになる。

石油各社は人口減少や自動車の燃費向上、産業界の温室効果ガス排 出削減の取り組みなどを背景に石油製品の需要減少という課題に直面 し、製油所の精製能力の削減を続けている。さらに経済産業省が国内製 油所の国際競争力強化を狙って導入した「エネルギー供給構造高度化 法」が各社の能力削減を後押しした。

ピーク時から27%減少

国内製油所の精製能力はピーク時の82年から27%減少しており、現 在の精製能力は日量434万バレル。来年3月には出光興産が徳山製油所 (日量12万バレル)、JXホールディングス傘下のJX日鉱日石エネル ギーが室蘭製油所(同18万バレル)を廃止することが決まっている。

石油連盟の統計によると、12年度の保税ジェット燃料販売量は前年 度比3.4%増の741万キロリットル。NAAは、今年度の成田空港の給油 量が2.6%増の479万キロリットルになると見込んでいる。経産省が6月 に発表した17年度までの石油製品の需要予測によると、ガソリンや軽油 など他の油種が減少傾向を示す中で、ジェット燃料だけが唯一、年平 均0.2%の増加を予測している。

--取材協力:松田潔社. Editors: 淡路毅, 浅井秀樹

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