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渡韓するアルミ缶、影に米メジャー「ノベリス」-国内価格急騰

ビールや炭酸飲料などに使われるア ルミ缶。資源に乏しい日本は世界最高水準のアルミ缶リサイクル率を誇 るが、その状況に異変が起きている。韓国向けに使用済みアルミ缶の輸 出が急増しているのだ。背景には米アルミメジャーの事業拡大がある。 国際価格と逆行して国内スクラップ価格の高騰を招いている。

輸出量が急増したのは昨秋以降。円高是正に加えて、アルミ板製品 世界2位の米ノベリスが昨年10月にアジア最大規模となるアルミ缶スク ラップの再利用設備を韓国で稼働させたことがきっかけだ。処理能力 は26万5000トンと日本のアルミ缶スクラップの年間需要に匹敵する。

財務省の貿易統計によると、アルミ缶スクラップを含めたアルミの くずの輸出実績は今年1-9月で約12万トン。前年同期と比べて24%増 加した。09年の年間輸出量14万7700トンを上回り、統計が残る1988年以 降で過去最高を更新する勢いだ。特に韓国向けは2.5倍の約4万7400ト ンと急増している。

「スクラップの品質が良いことに加え、韓国向けは航海期間が短 く、必要に応じ検査しやすい」。非鉄スクラップの輸出を手掛ける三井 物産メタルズの福嶋繁之副社長は韓国が日本の空き缶を調達するメリッ トをこう分析する。

ノベリスは世界各地でアルミのリサイクル事業を強化しており、回 収能力を12年の120万トンから20年には400万トンに引き上げる計画だ。 リサイクル原料の比率は39%から20年に80%へと拡大する。スクラップ 原料からアルミ圧延品を生産し、自動車向けなどアジア市場の需要の伸 びに対応する戦略だ。

ノベリス・アジアの広報担当者(韓国在勤)は、日本からのアルミ 缶スクラップの調達量などの詳細は公表できないと電子メールで回答し た。

統計上はどの程度のアルミ空き缶が輸出されたかは正確に把握でき ないが、アルミ缶スクラップ価格の急騰という形で影響が現れている。 横浜市が先月23日に実施した入札。同市内で集荷したアルミ缶全体の平 均落札価格は12月引き渡し分で、1キロ当たり147.7円(税抜き)と10 年5月以来の高値を付けた。昨年12月以降、毎月上昇を続け1年前と比 べ45%上昇した。ロンドン金属取引所(LME)のアルミ価格は同期間 に16%下落している。

こうしたアルミ缶スクラップの価格高騰に頭を悩ませているのが、 スクラップを主原料とするアルミ合金メーカー。大紀アルミニウム工業 所の山岡正男・取締役東京支店長は「国内での需給バランスは崩れてい る。絶対量が足りず、価格を上げて入札せざるを得ない」と話す。高騰 が続けば「顧客先に値上げを要求していかざるを得ない」状況だ。

世界最高水準のリサイクル率

アルミ缶リサイクル協会によると、日本のアルミ缶リサイクル率 は12年度で94.7%。韓国の86%(10年)や米国の58%(同)、英国 の54%(同)などと比べて世界トップレベルにある。日本アルミニウム 協会によると、自発的に分別回収を進めるなど国民の善意や地方自治体 などによる回収努力の影響が大きい。

そのため、同協会ではアルミ缶スクラップの韓国向け輸出が急増し ている事態を重視し、今夏から実態調査に乗り出した。韓国向けの輸出 量など調査結果については非公開としているが、その内容を今月経済産 業省に報告した。

アルミ協会の山内重徳会長(UACJ会長)は8日の会見で「世界 的にノベリスがスクラップを大いに活用しようとしており、日本も当然 影響を受け海外に出ていくスクラップの量が多くなっている」と指摘。 「問題意識は当然持つべきだが、残念ながら経済原則に逆らって何らか の形で輸出を止めるというのはなかなか難しいのが実情」と語った。

経産省・非鉄金属課の松本暢之課長補佐は「短期的には影響がある とは考えていない」と話す。ただ、今後輸出が加速して原料不足を招き かねないことやリサイクル・システムへの支障も懸念されるとして、 「今後の影響については業界関係者との意見交換等を通じて問題点の把 握に努めていく」としている。

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